2020年09月05日

七歳の息子に勉強を教えてみた感想 その5

 もう時効だと思うので、9月入学が話題になっていた時のことを書いてみます。

 新型コロナウイルスが猛威をふるい、非常事態宣言がだされ、学校の休校が続いていたとき、衝撃的なニュースが飛び込んできました。とある知事が、学校の9月入学を推奨し、内閣も乗り気になり、文部省が検討をはじめたというのです。私は瞬間に
「やばい!」
と思い、あちこちの自民党議員にmailと手紙をおくり、文部科学大臣のFacebookにも反対論を述べ、多くの識者に反対の文を送りました。宿屋をやってる関係から、知り合いが多かったので、あちこちに声をかけました。

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 私の反対は、9月入学に反対してるのではなく、早急に9月入学に変更することに反対であり、9月入学そのものに絶対反対というわけではありません。混乱期に「思いつき」で、安易に変更するなと言ってるだけです。

 話はかわりますが、私の友人に東京大学付属高校出身の人がいます。東大の附属高校です。厳密に言うと、東京大学教育学部附属中等教育学校と言うらしいのですが、昔は、東大附属高校と言ってました。

 東大の附属高校なので、超エリートの学生さんがいるというわけではなく、バカもいなければ、天才もいないという、偏差値50から55くらいの普通の学生ばかりがいる学校です。もちろん勉強ができない子供は入れませんが、とびきり頭の良い子も落とされます。そして、一次試験に合格し、二次試験にも受かると、最終試験ですが、その最終試験が、クジ引きなのです。福引きスタイルのクジ引き。合否も、そこで直ぐにわかってしまう本物の福引き。クジ引きだから、受かるように入試問題の得点を小細工しても、クジ引きで落とされてしまったりする。

 また、生徒にやたらと双子が多かったりする。今でこそ双子は珍しくないのですが、私が学生の頃は、本当に珍しくて、全校生徒に一組あるかないかというくらいに珍しかった。それが東大の附属高校には、ゴロゴロいた。ゴロゴロいたけれど、みんな別々のクラスに分けられていた。で、双子が自宅に帰って宿題なんかやっていると、全く違う勉強をやらされていることに気がついたりする。それで

「俺たちは、東大の教育学部の教授たちの『実験材料』なのではないか?」

と言うことに気がつくわけです。で、一般の公立高校とちょっと違う教育を受けさせられていることに気がつくわけです。昔なら、気がつかなかったのですが、パソコン通信やメーリングリストなんかで情報交換しているうちに、そういう大学の付属学校は、東大の附属高校だけでなく、全国にいっぱいあって、それらの高校の連中と情報交換するようになると、
「どうやら俺たちは、ちょっと違う教育を受けているらしい」
と気がついてしまうらしい。

 結局、その友人は、教育関係の世界に足を突っ込んで、真実を知るわけですが、やはり教育の実験校だったわけです。で、その実験で一番有名なのが『ゆとり教育』だったらしい。『ゆとり教育』は、皆さんも御存知のとおり大失敗だったわけですが、誰かの単なる思いつきで始めたわけではありません。著名な教育研究者が、いろいろな学校で、いろいろな角度で、膨大なデーター収集を行い、慎重に検証に検証を重ねて『ゆとり教育』の素晴らしさを発見していった結果、はじめて『ゆとり教育』を政策としてゴーサインになっている。

 それほど慎重に検証して政策にうつしても大失敗する。教育というのは、試行錯誤の連続です。非常に難しい。だから単なる思いつきで9月入学にされたら、たまったものではない。あの戦争中だって、そんな無茶はしてない。空襲で焼け野原になり、教科書もろくにない時代でも、今まで通り4月入学だったし、その時代の子供たちは立派に大人になって日本経済を牽引している。だから新型コロナウイルスを理由に教育改革されたらたまったもんじゃない。

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 9月入学にしたいなら、まず、そういう学校を東大あたりが作って、しばらく研究するべきなんです。各国立大学が、9月入学の学校と、4月入学の学校の両方を作って生徒を募集し、両者を比較研究すべきであり、9月入学の問題点を洗いだすべきでしょう。そして、その問題点を一ずつ解消していってはじめて、全国一斉に9月入学にしてもいいし、4月と9月の両方を認可してもいい。でないと現場が大混乱する。現にGotoキャンペーンも、持続化給付金も、現場は大混乱になっている。

 でも、Gotoキャンペーンの混乱くらいなら、宿屋が、文句の一つ二つを言うだけですみますよ。しかし教育の混乱は、それじゃあすまされない。子供たちの人生がかかっている。Gotoキャンペーンという、たかだか旅行ごときの小さな問題でさえ、これだけ混乱して批判を浴びているのに、もし9月入学を強行したら、どうなっていたか? 確実に政権は倒れていたと思います。

 何度も言いますが、一部の学校で9月入学を試験的に始めて見るのは良いと思っています。そういうシステムがあったら便利だとも思うし、浪人生にとっても朗報だし、多様性の観点からも好ましいと思う。しかし、何の検証も無く安易に、全国強制で9月入学にしたら恐ろしいことになる。そのように当時の私は思った。Gotoキャンペーン以上に、強烈なほころびが出ると考えた。

 だから、このブログでも、Facebookでも、検証に検証を重ねた『ゆとり教育』でさえ失敗してるのに、安易に9月入学にすべきではないと訴え続けました。もちろん、いろんな政治家・教育評論家のFacebookに書き込みまくりました。

 で、ある日、下村元文部大臣のFacebookで、秘書が「明日、テレビで9月入学を国民に訴える」と書いた。私は、文部大臣のFacebookの「友だち」にあたるので、厳重に抗議した。「はやまるな」と諫めたけれど、下村文部大臣のフォロワーたちは、脳天気に擁護論ばかり言う。「改革は今しか無い」とか、脳天気な発言ばかり言う。私は、憤慨したけれど、その3日後に政府は「9月入学は見送り」の宣言した。

 いったい何がおきたんだろう?驚いた私は、ネットで調べたらいくつかのサイトが検索に引っかかりました。


◆9月入学案はなぜ消えたのか?
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00599/

◆9月入学、なぜ見送り?
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/39141.html

 これらのサイトに、どうして「9月入学」が見送りになったのか書いてあります。やはり、私のような人間が、必死になって地元議員に反対メールを送り続けていたのが大きかったらしい。その民意を酌んだ自民党の若手議員たちが、一斉に反対しだしたとのこと。


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 そして市区町村長の8割以上が「9月入学」に反対意見を表明。地方自治体では、感染対策でそれどころではなく、9月入学の議論をしている状況ではないとのこと。まあ、当たり前ですね。

 保護者からは、9月になった場合、小学校に入学するまでの間、保育園が預かってくれるのか?という疑問もあったらしい。なるほど保育園が3月で終わって、小学校が9月というわけにはいかない。

 そもそも移行期には1学年の児童・生徒の数が1.4倍になる。その年度だけ受験戦争が激化し、就職にも不利になる可能性がある。保護者が不安に思うのも無理はない。自民党議員に大量の反対のメールが届くわけです。それが作業部会で、若手議員による反対の大合唱になって、9月入学を引っ込めたらしい。

 文部科学省の官僚たちは、ホッとしたことでしょう。9月入学にすれば、家庭の追加負担の総額は2.5兆円にも上るとの試算がでている。保育所や幼稚園に通う期間も長くなり、待機児童がいっそう増えるし、予算の増額も必要になるし、保育士・幼稚園教諭の雇用も問題となる。増税の話もでてくるだろうけれど、その前に日本経済が沈没しかかってるのに、どうして9月入学うんぬん言えるのか。脳科学の視点から言っても、入学時期が遅れるのは、あまり良いことでは無い。むしろ入学を早めた方が良いくらいです。そういう意味では、最初から慎重姿勢だった萩生田文科相は、堅実な人だったと思いました。



つづく。

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posted by マネージャー at 22:57| Comment(0) | 教育問題を考えてみる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする