2017年12月15日

四歳児を連れて槍ヶ岳に登ってきた その2

 日没後、私は外に出ました。風は相変わらずでしたが満天の星空。このぶんなら明日の早朝は、すばらしい御来光がおがめそうでした。しかし、山小屋に戻ったら外国人の団体と一緒の部屋にされてしまって、その外国人たちがうるさいうるさい。

 マナーを守らないことで定評のある国の若い団体さんたちと一緒にされるということは、「どうせ子連れ客の幼児(四歳)もマナーを守れんだろう」という偏見が、山小屋側あったのかなと疑いました。というのも他の日本人客の部屋は、ガラガラに空いていたからです。

 そもそも私たちは最初から隔離されるように、部屋を個室のように使っていました。後から次々とチェックインしてくる人たちは、他の部屋に行く。隔離感がはんぱなかった。

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 うちの息子は、どの山小屋に行っても、誰からも絶賛されるほどマナーがよい。絶対に騒がないので驚かれる。これは息子自慢ではなく、そういうお子さんは多いのではないかと思います。自力で三千メートル級の山に登る幼児ならば、そういう躾はできてると思う。

 ところが、うるさかった外国人の団体たちは、九時前には就寝。で、私たちが寝ている部屋はどの部屋よりも静かになってしまった。

「あれ? この部屋、あたりかも!」

 外国人の若い団体たちは、いびきをかかなかった。
 彼らの年齢は若かった。

 しかし、日本人の登山客は高齢者が多くて、いびきでうるさい。
 宿屋である私たちが山小屋利用するのは必ず平日なので、若い人たちなんかいやしない。
 九割が高齢者で酒飲み。
 だから必ずいびきの大合唱になる。

 山小屋は、二十人くらいの相部屋が多いので、その中には、五人くらいの睡眠時無呼吸症候群の人がいる。ましてや空気の薄い三千メートル級の山なら確実に症状が出る。おまけに彼らは山小屋で酒を飲んで寝る習慣があるので、よけいにいびきがうるさい。

 しかし、若い人にはそれがないのです。
 若者でいびきをかく人は少ない。

 私が、十七年前にユースホステルを開業した頃は、若い人たちばかりでした。なので相部屋スタイルのユースホステルでも何の問題もなかった。しかし、団塊の世代が定年退職しだした2006年以降は、急に中高年のユースホステル利用が増え出して、いびきの苦情が若い人たちから出始めてきた。そこで2006年以降は、耳栓を格安で販売するなどの対応をしたり、予約のアンケートでいびきをかくかどうかを教えてもらい、いびきをかく人の部屋を一般人と区別隔離したりした。それでも中々いびき問題は解決しないでいた。

 そのうち若い人たちが個室予約するようになり、いびき問題はユースホステルから自然消滅したわけですが、個室のない山小屋には、いびき問題がいまだに残っていた。そして、これだけは仕方が無いと私も諦めていたのです。

 ところが外国の団体さんは、多少マナーが悪いといえど、二十歳前後の人たちばかりですから、いびきはかきません。夜九時の消灯時間を過ぎたら、爆睡して無音の状態になる。私たちの相部屋は、どの部屋より静かで寝やすくなっている。ああ、この部屋割りは山小屋側の親切だったんだなと思うことにしました。

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 翌朝、さわやかな目覚め。

 そして朝食。またもや山小屋スタッフさんから御菓子をもらう息子は、とても嬉しそうでハイテンションでした。朝食を食べ終わると見事な御来光が登りました。私たち親子は、しばし朝日を眺めながら、うっとりです。

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「頂上だけれど、どうする?」
「風が強いなあ、四歳が登れる状態かどうか偵察に行ってくる。それまでパッキング(かたづけ)の準備していてくれる?」
「わかった」

 で、10分ばかりかけて、大急ぎで偵察に山頂まで登ってみたけれど、やはり強風。風速二十メートル近くもあります。この強風さえなければ、時間さえかければ四歳児でも登れるんですが、風が強すぎて息がしにくい。おまけに、低気圧が近づいており、明日は雨。もし、ここで無理して息子と登ってしまったら今日は確実に下山中に山小屋泊まり。そして明日は雨の中を何時間も歩かなければならない。


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 駄目だ、撤退しよう。

 撤退して今日中に上高地まで行って自宅に帰ってしまおう。今日中に帰ってしまえば、明日の幼稚園行事『芋掘り』に間に合う。息子が楽しみにしていたけれど、欠席させる予定だった行事に間に合う。ただし、そのためには、十二時間のコースタイムを歩かなければならない。しかも、終バスは十七時で時間制限がある。少なくとも十二時間で上高地に到着していなければならない。

 どうするべきか?

 槍ヶ岳の山頂で一分間迷ったあげく、少々無謀だけれど上高地までの下山を決意しました。息子の体力はわかっている。奴は想像以上にパワフルだ。登山中も槍ヶ岳山頂小屋付近では走って登っていた。私や嫁さんよりも元気だった。十二時間くらいの山道なら歩けるはずだ。

 それに万が一、終バスに乗り遅れたらタクシーがある。そのタクシーも十九時に釜トンネルが封鎖されるので、それ以降は使えないけれど、その時は一時間よぶんに歩いて釜トンネル前まで行ってからタクシーを呼べば良い。それなら勝機はある。そう判断しました。

 そして下山を決意したのです。

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 案の定、息子はハイテンションで下山。
 しかも下山ルートの紅葉は、逆光気味で美しい。

 ここを十二時間で降りるのはもったいなすぎるけれど、明日の天候を考えると仕方が無い。十月中旬ということを考えると下手したら雪の可能性もあるから、のんびりもしてられない。

 こういう親の気持ちは、子供にも感染するらしく、息子の足も速くなります。そして調子にのった息子は、途中、崖から滑落しかかかりました。私は、危ない! と絶叫しましたが、その時、奇跡がおきました。息子は自ら側転して身を守り怪我一つしなかったのです。

 私は息子に、前転、バク転、側転、逆上がり、逆立ち、受け身も教えていることはいるんですが、息子は一度も成功したことがありません。だから私は、息子の運動神経の無さに時々、絶望していたんですが、イザという時に側転を成功させて自分の身を守りました。この時ばかりは、教えておいてよかったと思いました。

 芸は身を助けると言いますが、身のこなしに関することは、たとえできなくても根気強く教え続ければ、それが役に立つ時がくるんですね。だから今後も教え続けることにします。

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 四時間かけて十一時に槍沢ロッジに到着。
 コースタイムどおりです。
 上高地まであと、五時間弱の距離。

 休憩一時間を含めても終バスまで六時間あります。なので昼御飯をとりました。息子は嬉しそうに、ビスケット・ソーセージ・サラミなどをほおばります。そして、あと五時間ほど歩いて上高地に十六時三十分に到着。これほどのハードスケジュールは、二十代の若者がメインの山岳会でも『風のたより』でもやったことがありません。それにもかかわらず、楽しそうに登山していた息子は大したものです。

 これは、うちの息子が凄いと言うより、幼児にはそれだけの潜在能力があるということでしょう。きちんと訓練し、疲れないように工夫し、装備と準備を万全にし、楽しいと思わせながら科学的に登山させれば、決して無謀なことではないと思います。

 また登山を行うと、NK細胞が増加して免疫力をあげてると言われています。厚生労働省のホームページに書いてあります。また登山によって足の筋肉を発達させると病気に対する抵抗力も増やします。筋肉は免疫力を上げて『がん』まで撃退してくれます。

 最新の研究で筋肉の健康効果が次々と明らかになっています。 筋肉から生まれる「グルタミン」という物質は、人間の免疫力の源である「リンパ球」を増やす事が分っています。これによって人間の免疫力が高まり、がん細胞をやっつけたり様々な病気になりにくくなります。

 なので息子は病気をしません。インフルエンザをうつされても一晩寝るだけで治ってしまいます。親は一週間も寝込むのにです。


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 話を戻します。

 槍沢ロッジから、横尾まで二時間。そして、横尾・徳沢園・明神と、徒歩一時間おきに山小屋があります。つまり一時間おきに山小屋で休みながら飲み食いするわけですから息子も大喜び。先を急ぎたいのは山々でしたが、息子を喜ばせることも忘れてはいけないので、山小屋で、ふだんできない贅沢もさせなければなりません。

 十六時三十分。上高地バスターミナルに到着。なんとか終バスに間に合いました。けれど、疲れたので私が
「タクシーで帰らない?」
と提案するも嫁さんは却下です。お金がもったいないと言います。もったいないも糞も三人分の差額は、たったの八百円なんですが、うちの嫁さんは、節約家なので露骨に嫌な顔をします。仕方が無いのでバスに乗ることにしました。

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 上高地からバスで沢渡の駐車場に到着。あとは北軽井沢に帰るだけでしたが、せっかくなので松本の日帰り温泉に立ち寄りました。息子は疲れ知らずで、温泉で大喜び。非日常を大いに楽しんでいました。そして回転寿司で久しぶりの魚を食べて帰宅。翌日は、幼稚園の芋掘りイベントに参加して、息子は大量のサツマイモを収穫してきました。

 子供園(幼稚園)を三日間もお休みしていたので、園の先生が、「どこに行ってきたの?」と聞いたらしいのですが、息子は「温泉に行ってきた」と答えたらしく、園の先生方は
「温泉に行ってきたんですねえ」
と私に言ってきました。私自身も「はあ」と曖昧に返事をしてしまいました。今さら槍ヶ岳といっても山を知らない人には「?」ということでしょうし、いちいち説明するのもかったるいので温泉に行ってきたということにしておこうかと。

 ようするに息子にとっては、槍ヶ岳よりも、温泉の方が印象深かったし楽しかったんでしょう。そして、よくよく考え見たら私も、そうたったかもしれないと思い返しました。登山後の温泉と寿司とビール。これが一番最高だったかもしれません。


つづく。

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posted by マネージャー at 03:41| Comment(0) | グンマーで嫁が出産と育児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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