2008年01月11日

白い雪原1

白い雪原



1月の北軽井沢は、白い雪原に覆われます。
あちこちで、かまくらや、雪だるまを作る子供たちを目にするようになります。
私も子どもの頃に、庭先で、よく雪だるまを作りました。
すると通りがかりのお爺さんが、
「元気いいなあ、雪だるまを作っているのかい?」
と声をかけてきました。
そして、御菓子やミカンなどをもらっていました。

ある日のことです。
あれは私が小学校5年生だった1月のことでした。
もうすぐ中学生にならんとしている私は、雪だるま造りの遊びにも飽きて
もっと写実的な雪の彫刻を作り始めました。

すると通りがかりのお爺さんが、
「雪人形を作ってはいかん」
と声をかけてきました。

「雪人形?」
「作るなら雪だるまにしなさい」
「はあ?」
「雪人形を作ると、雪ん子がでるぞ」
「雪ん子?」
「そうだ、雪ん子がでる。だから雪人形を作ってはいかん」
「・・・・」
「だから雪だるまにしなさい」
「・・・・」

おじいさんに逆らうほど根性の無かった私は、
雪の彫刻造りをやめて、平凡な雪だるま造りに変更してしまいました。
けれど、何か気になってしまっていました。

「雪人形ってなんだろう? 雪ん子ってなんだろう?」

でも、当時(昭和47年)には、インターネットというものはなく、雪人形も雪ん子についても調べるすべはありませんでした。そこで両親や学校の先生などの身近な大人に聞いてみたのですが、誰も知らないと言います。で、ますます雪人形や雪ん子にたいする興味がわいてきました。そして、雪だるまではなく、雪人形を密かに作ろうと決心したのです。

 別に、雪人形を造ったからと言って、何かがおきるとも思わなかったし、そもそも雪人形とは何かさえも知らないままでしたから、密かに人里離れた山の中に、こっそりと雪だるまを造る要領で雪人形を作ろうと思いました。

つづく


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2008年01月13日

白い雪原2

白い雪原2

「雪人形。人形というからには、女の子なんだろうな」

とは思いましたが、姉妹のいなく、小学校5年生であった私には、どうやって女の子の雪人形を造って良いか分からず、まずは男の子の雪人形を造り始めました。

 とはいうものの、どうやって造ってよいか分からなかった私は、まず雪だるまを造り、そこから雪を削るようにして造形を行いましたが、さっぱりうまくいきません。その方法で雪人形を造るのは、とても難しく、とても人形の形にはなってくれません。

 手作業では無理と悟った私は、塩や水を用意し、ショベルや出刃包丁やゴム手袋などの本格的な道具を用意して、苦心惨憺のうえ、3日がかりで、やっと等身大の雪人形を作り上げた時は、思わず
「やった!」
の歓声をあげたものです。そして、その後も雪人形造りは続け、雪人形は全部で3つ作り上げました。等身大のものを1つと、それよりも小さいものを2つです。そして、おじいさんの
「雪人形を作ると、雪ん子がでる。だから雪人形を作ってはいかん」
という言葉を思い出しつつ、
「これで雪ん子が出てきたらどうしようかなあ〜」
とワクワクしていました。

 もちろん、そんな言い伝えは迷信だと分かっていましたが、私は、そんな迷信に反抗することで何か快感を覚えていたのかもしれません。

「雪人形を造ってしまったのか・・・・」

 ふりかえると白菜を山のようにかかえていた通りがかりの御婦人でした。
 50歳くらいの方でしょうか?
 御婦人は、白菜の束を降ろして雪人形のそばにやってきて、
 手と手を合わせて拝礼し、

「この雪人形は、坊が造ったのか?」
「うん」
「ならば大切にせねばな。時々、見に来るんだぞ」
「どうして?」
「人形は大事にせんと」
「?」

つづく


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2008年01月15日

白い雪原3

ウソハチじいさん

 その翌日のことです。風邪をひいた私は、祖母つれられて病院に行き、両親がトイレに行っている時に待合室で、あのお爺さんと出会ったのです。「雪人形を作ると、雪ん子がでるぞ」と、忠告してきた、あのお爺さんです。私は、その老人にかけよりました。

「おじいちゃん」
「うん?」
「おじいちゃんは、雪人形を作ると、雪ん子がでると言ってたよね?」
「ああ」
「造っちゃった」
「・・・・」
「雪人形を作っちゃったんだ」
「・・・・」
「雪ん子がでる?」
「ああ」
「雪ん子って何なの?」
「小さな女の子さ。そうさな坊主と同じくらいの年頃の女の子さ」
「僕が造ったのは、男の子を3人だよ」
「じゃ、3人の雪ん子がでてくる。ただし、みんな女の子だ」

 その時、トイレから戻ってきた祖母は、私と老人が会話している姿をみて驚いた様子でした。そして私の腕をひっぱり、老人から私を引き離しました。

「ウソハチじいさんと話をしてはダメだよ」
「どうして?」
「あのじいさんは、ウソばっかり言うので有名なんだよ。だから臼八という名前じゃ呼ばれなくて、ウソハチじいさんと陰口をたたかれるのさ」
「へえ・・・・」
「だから絶対に関わってはダメ」
「・・・・」

つづく

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2008年01月16日

白い雪原4

ウソハチじいさん

 祖母の言ったことは本当でした。待てど暮らせど雪ん子は現れませんでした。「やっぱりウソハチだったのか」とガッカリした私は、病院でウソハチじいさんをさがしだし、
「ウソハチ! ウソハチ!」
と囃し立てました。それも毎日です。時には、友人まで連れてウソハチじいさんをなじりに病院に通い「ウソハチ! ウソハチ!」と口撃して囃し立てました。思えば、ずいぶん酷いことをしたものですが、回りの大人たちも笑ってみているだけでした。そして、ウソハチじいさんは、ひたすら私たちを無視しつつ、病院の待合室で黙想していました。

 そして、数日後、いつものように病院の待合室でウソハチじいさんをからかっていると、私を叱りつける50歳くらいの御婦人が現れました。私が造った雪人形に手をあわせ「人形は大事にせんとな」と言ってくれた人でした。その人は、恐ろしい怪力で私の首根っこを掴んで病院の外につれだしたのです。

「だって、ウソハチじいさん、ウソをついたんだもの」
「どんなウソだ?」
「雪人形を造ると雪ん子がでると言ったけれど、雪ん子なんかでやしない」
「・・・・」
「それにみんな言っているよ、ウソハチじいさんは、ウソをつくから関わるなって」
「バカなことを。お前は、みんなが泥棒をしたら、おまえも泥棒するのか?」
「・・・・」
「みんなが人を殺したらをしたら、おまえも人を殺すのか?」
「・・・・」
「みんながお前のお母さんをイジメたら、おまえもお母さんをイジメるのか? みんながお前のお父さんに石を投げたら、おまえもお父さん石を投げるのか? みんなのせいににしてはいかん。悪いことは、悪いこと。第一、あのジイサンは、ウソをついてはおらん。雪人形を造ると雪ん子がでるというのは本当のことだ」
「出てないもの」
「お前は、まだ雪人形を完成してないじゃないか」
「え?」
「人形というものは、目を入れてはじめて完成するものだ。お前のこさえたものには、目が入ってないだろうが。もちろん、目を入れても雪ん子は出てこないこともありえる。しかしな、出ないほうがいいんだよ」
「どうして?」
「春になれば雪はいずれ溶ける。その時に雪ん子は、消えてしまう。かわいそうだと思わんか? ひと月やふた月で消えてしまわなければならない雪ん子を造ってしまっては、その子が哀れだとおもわんか?」
「おばさんもウソハチか?」
「これは、ウソとか本当とかの問題ではないよ。そういう気持ちが大切だと、あのジイサンは、言っていたの。わからんのか?」
「わからん!」

 私は、走り出しました。
 そして家に駆け込むなり、墨汁を手にして外に飛び出しました。
 そして数日前に造った三体の雪人形のところに向かい、
 雪人形に目を入れたのです。


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2008年01月17日

白い雪原5

転校生

 雪人形に目を入れた翌日、私のいたクラスに転校生がやってきました。
 女の子でした。
 私の育った村には自衛隊の基地がありました。
 当然のことながら自衛隊員の多い村でしたから、転校生は少しも珍しくありませんでした。毎年、二〜三人の人間が転校してきては、去っていく。私は、そういう村で育ったのです。

 ところで子どもの頃の私には、特技がありました。
 転校生と仲良くなる特技です。

 ふだんから私には、これといった仲の良い友達がいませんでした。そして、これといった仲の良い友だちがいないというのは、転校してきたばかりの転校生も同じでした。そういう転校生と仲良くなるという、実に情けない特技が私にはありました。

 転校生が珍しい地域であったなら、クラス中の人間が転校生を取り巻いて質問攻めにしたでしょう。しかし、自衛隊の基地がある村では転校生は珍しくもなんともなく、おまけに、その転校生たちは、いずれは別の地域に転校して去っていくヨソ者でした。

 転校してくる者も、転校していく者も、幹部自衛官です。幹部自衛官たちは、定住せずに二〜三年で村を去っていきます。下っ端自衛官ならそう言うことはありません。同じ自衛官の子弟でも、遊び相手を選ぶ時は、幹部の子弟を遊び相手にはしません。第一、いつかは去っていく人たちなのですから。

 せっかく仲良くなっても、いずれは消えていく。それも無茶苦茶遠い僻地に消えていく。北海道の果てとか、沖縄とか・・・・。そういう転校生と、すすんで仲良くなろうという人は少なかったものでした。

 しかし、例外もいました。
 私でした。

 これといった仲の良い友だちが、いなかった私は、ポツンと淋しそうにしている転校生をみつけると私から声をかけていきました。そして大の仲良しになるのですが、その転校生が学校になれてきて、みんなの人気者になってきますと、どういうわけか私は、その転校生と喧嘩して別れ別れになりました。そして、また私は、ひとりぼっちになってしまうのです。

 しかし、転校生と仲良くなるといっても、それも男の子の場合に限った話です。女の子の転校生とは、一度も仲良くなったことがありませんでした。

 ところが、こんど転校してきたのは女の子でした。
 おまけに、その転校生は、私の隣の席になりました。
 私は、その隣の席の転校生をしげしげと眺めました。
 色の白い女の子でした。
 とっさに「雪ん子だろうか?」とドキドキしました。

 いつもの私なら、誰よりも早く転校生に声をかける私なのですが、相手が女の子であることに躊躇がありました。自慢ではないが、私は誰よりも女の子に嫌われていましたし、自分も、それを勲章に思っているくらいに野蛮な、典型的な友だちいないキャラでしたから、いくら転校生であっても自分から女の子に声をかけることはできませんでした。

 しかし、そんなことはお構いなしに、相手から声をかけてきました。
 私の机が汚れていると、私にチリ紙を差し出してきたのです。
 その時、私は全身が凍り付いてしまいました。
 心臓の鼓動が止まりませんでした。



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2008年01月18日

白い雪原6

 あの子は、雪ん子なのだろうか?
 そんなことありえん。
 ただの転校生に違いない・・・・。

 そんなことを考えている私のことなどお構いなしに転校生は、さかんに私に話しかけてきました。当時は、女の子から男の子に話しかけてくるという光景が珍しかったために、クラスの男子たちは、そんな光景を「ヒューヒュー」と囃し立てました。赤面して逃げ出しましたが、転校生はお構いなしに私のそばにやってきました。そんな彼女は目が大きかった。そして、じーっと人の顔をのぞき込む癖があった。それがまた、やりきれなくて私は何度か逃げ出してしまった。

 幸いなことに彼女は、すぐに女友だちができました。私は「ホッ」として胸をなでおろしました。しかし、それにもかかわらず、その子は、私のところに寄ってこようとしました。他の女の子が
「佐藤なんかと口をきいちゃダメだよ」
と注意するにもかかわらず、それを振り切ってやってきました。そして彼女は必死になって私と何か会話をしようとするのですが、私は、ウンともスンとも言わなかったので、はずんだ会話は成立しませんでした。私が口を開いたのは1回きり。

「兄弟はいるか?」
「妹が二人いるけど」
「じゃ、3人兄弟なのか?」
「そうだけれど、どうして?」
「・・・・」

 放課後、私は、学校を逃げ出すように、あの雪人形のところに行きました。そして、3体の雪人形をしげしげと眺めてみると、やはり目が大きかった。思わず小枝で目を小さく作りかえて病院に向かいました。病院の待合室で、ウソハチじいさんを待ち伏せしました。ウソハチじいさんは、すぐに現れましたが、私は声をかけることができなかった。
「雪ん子がでたかもしれない」
とは言えなかった。だからウソハチじいさんの後を尾行しました。しかし、下手くそな尾行のためか、すぐに相手に気づかれてしまい、ウソハチじいさんににらまれる結果になりました。

「出たのか」
「・・・・」
「そうか」
「・・・・」

 ウソハチじいさんは、そのままサッサと歩き出し、私は、その後を尾行しつづけました。そして、ついにウソハチじいさんの家にたどり着いたのでした。そこは、茅葺きの農家の家で、庭先で白菜の漬け物をつけている御婦人がいました。病院で私を叱ってくれた御婦人でした。どうやらウソハチじいさんの親戚のひとのようでした。御婦人も一言、言いました。

「出たのかね」
「・・・・」
「そうか」
「・・・・」
「せっかくだ、お上がりなさい。いいよね、じいさん」
「ああ」

 私はウソハチじいさんの家にあげてもらいました。
 そして神妙にウソハチじいさんに尋ねました。

「どうして雪だるまなら良くて、雪人形はダメだったの?」
「だるまさんは、ずっと座禅を組みなさる。そして天地と一体となる。だから姿形を超越なさっている。雪が溶けたところで、天地と一体になった達磨大師さまにとっては、大したことではないのだよ。でも雪人形は、そうではない」
「雪人形なんか造らなければよかった」
「・・・・」
「今日、転校生がやってきたんだ。雪ん子かもしれない」
「アハハハハ、雪ん子は、転校なんかしない。安心しろ」
「だって」
「いずれ雪ん子は、消えていく。雪のある間に、ちょっとばかり悪戯をして消えてしまう。それが雪ん子の正体さ。これからお前は、雪ん子に悪戯されるかもしれないが、腹をたててはいかんぞ。優しく見守ってやることが大切だ」
「うん」
「それから、このことは、誰にも話してはならんぞ」
「どうして?」
「みんなからウソハチと呼ばれるからさ」

 その時、私は酷く赤面しました。



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2008年01月21日

白い雪原7

 その日から私は、毎日ウソハチじいさんの家に出入りするようになりました。どんな嘘がでるのか、ちょっぴり期待していたのですが、世間の評判と違って、ウソハチじいさんは一度も嘘をつきませんでした。この人が、どうしてウソハチじいさんと陰口をたたかれるのか理解できなくなった私は、いろいろな人に尋ねてみました。すると大人たちは、こんな答をくれました。

「僕はウソハチじいさんが嘘を話しているのを一度も聞いたことがないよ。あの人は嘘をつくような人ではないと思うけれど」
「だから始末におえないのさ」
「え?」
「あきらかな嘘つきは罪がないものなんだよ」
「どういうこと?」
「それは冗談みたいなものだからさ。大げさな表現や、大ボラというものは、聞く者が割り引いて聞くし、それは毎日嘘ばかりついている人にも言える。また大げさなことを言ってやがると割り引いて聞ける。怪しい呪い師の予言や、怪しい占い師の占いだって、外れても誰も嘘つきよばわりしないだろう?」
「うん」
「でもね、ウソハチじいさんは違う。真面目で滅多なことでは嘘をつかない。だから人はウソハチじいさんを信用してしまう。しかし、完全に信用しきってしまうと、とても大切な場面で裏切られてしまうんだよ。絶対に嘘をつかないと思った人に嘘をつかれてね」
「・・・・」
「だから、みんなは怒ってしまう。その結果、村八分になってしまう」
「・・・・」
「100回の嘘には罪はないけれど、大事な時の1回の嘘は大きな罪。嘘はつきどころが肝心ということかな」
「?」

 小学校5年生であった当時の私には、この答えは理解の範囲を超えていました。ウソハチじいさんは嘘をつかない。これが私の感じた印象でした。それよりウソハチじいさんは、「何かを知っている」と思いました。他の大人たちの知らない何かを知っていると。それが何なのか分からないけれど、何か得体の知れない何かを知っていると。

 じいさんは、よく山に登りました。ゴム長靴で雪山に、どんどん入っていきました。私は、その後を追いかけました。しかし頭の後ろに目があるのか、一度も後ろを振り向かないまま、私が尾行していることに気がつきました。そして声をかけてきました。私はじいさんと一緒にアケビ蔓を集め、それを背中に背負って帰りました。ウソハチじいさんは、思い出したように尋ねました。

「雪ん子は元気にしておるか?」
「うん」
「よかったな」
「でも、意地悪なんだ。いつも悪戯をしかけてくる」
「どんな?」
「机の中や長靴の中にゴミを入れられたり」
「どんな?」
「ドングリとか、枯葉とか」
「ハハハハ」
「笑い事じゃないよ」
「合図だよ」
「合図?」
「私にかまってくれという合図さ」
「?」

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2008年01月23日

白い雪原8

「おじいさん、雪ん子って、いったい何者なの?」
「・・・・」
「どうして雪人形をつくると雪ん子がでるの?」
「さあな」
「春になって、雪が溶けると雪ん子は消えてしまうの?」
「さあな」
「あの転校生は消えてしまうのかな?」
「・・・・」
「消えてしまったら、どうしよう」
「どうして、そう思う?」
「だって、あの転校生は雪ん子なんでしょ?」
「雪ん子は、転校生なんかじゃない」
「でも」
「生身の人間が消えることはない。心配するな」
「だって」
「消えるのは雪ん子だ。人間は消えたりしない」
「あの転校生は、雪ん子じゃないってこと?」
「そうだ」

 ウソハチじいさんは何か隠している。
 そう思いました。
 どういうわけか嘘をついている気がしました。

 というのも私の隣の席に座っている転校生は、本当に不思議な女の子だったからです。何が不思議かというと、消えたと思うと、すぐ目の前に現れたりしたからです。隣の席なので教科書を見せ合ったりもしましたが、その時に、あの大きな目玉でジーッと見つめられたかと思うと、催眠術にかかったように睡魔が襲ってきて、気がついたら、あの雪人形の前で目が覚めていたりしたからです。

「あれ? なんで俺、ここにいるんだろう?」

 雪人形は、溶けかかっていました。
 気味が悪くなった私は、大急ぎで逃げて帰りました。

 そして翌日。私は重い気分で学校に行くと、私より早く、あの転校生が席についていました。教室に入ると、彼女は、あの大きな目玉でじっと、私を見つめられました。私は、目線をそらしながら自分の席につきましたが、気がつくと、転校生は消えていなくなっていました。それにホッとして、鞄から教科書をとりだとうとすると
「どうして逃げたの?」
と転校生の声がしました。

「うわっ!」

と驚いた私は、椅子から転げ落ちましたが、転校生の姿はどこにもありませんでした。

「どうした佐藤?」
「転校生は?」
「転校生? そういや今日は来てないな」
「なにいってるんだよ、さっきまで、ここに居ただろうが」
「はあ?」
「机に座っていたよな」
「いや、誰も机に座ってなかったと思うぞ」
「・・・・」

 結局、その日に転校生を見た人間は、私一人でした。
 彼女は、風邪をひいて欠席したとのことでした。
 その日は、まっすぐに家に帰りました。
 外には春の陽気がおとずれていました。
 道端で色々な人たちに造られた、雪だるまたちが次々と溶けていました。

 翌日も良い天気でした。
 春の陽気で、道端の雪だるまは、ますます溶けてしまっていました。
 まだ転校生は、学校を休んでいました。

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2008年01月24日

白い雪原9

 放課後、私は雪人形の山に向かいました。大きなミズナラ林の中の先に雪人形の山はありました。そのミズナラ林を歩いていると声がしました。

「どこに行くの?」

 学校を休んでいるはずの転校生の声でした。
 気がつくと、大きな目玉の転校生が木陰に座っていました。

「おまえ病気じゃないのか?」
「だから休んでる」
「休んでるって、ここでか?」
「うん」
「寒いだろう」
「暑い」
「熱があるんじゃないか?」
「うん」
「じゃあ、早く家に帰って寝ないと」

 その瞬間、転校生は消えてしまっていました。

「まただ、どこに消えたんだ?」
「ここよ」

 転校生は、まだ微かに残る白い雪原に倒れていました。

「やっぱり、お前は、雪ん子か?」
「・・・・」
「そえなんだな」
「何言ってるの、自分で造っておいて」

 転校生の目から涙が出ていました。
 それも黒い涙が。
 おもわず転校生にかけよった私でしたが、
 またもや転校生は消えていなくなってしまいました。

「まさか!」

 私は、大急ぎで雪人形のところに走りました。太陽の光で、雪人形は、溶けつつあり泥だらけになっていました。墨汁で書いた目も溶けていて、それが流れ落ち、涙のようになっていました。黒い涙でした。それからの私は、怖くなって自宅に逃げ帰りました。夕食は喉を通りませんでした。黒い涙ばかりが、思い出されてなりませんでした。

 深夜。

 どうしても眠れなかった私は、スコップと懐中電灯を持って、あの雪人形のある山に向かいました。星の綺麗な夜でした。そして、何時間もかけて溶けかかった雪人形の修繕を行いました。墨汁の涙を削り取り目も入れ直しました。そして、家に戻ってみると、あの転校生が玄関前に立っていました。もう黒い涙は、流れていませんでした。それどころか転校生は、前より美しくなっていたような気がしました。

「ありがとう」
「いや」
「これで少しだけ時間が出来たよ」
「時間?」
「うん」
「本当は、出てきちゃいけなかったんだけれど、山から出てきちゃったんだ。でも、もう春だし帰らなきゃ」
「帰るって?」
「佐藤君は春が好き?」
「雪国の人間で雪が好きな奴なんているもんか。あ〜あ、早く春がこないかな」
「そうだよね」
「・・・・」
「でも、私は冬が好き。それも雪に埋まった銀世界が」
「・・・・」
「今夜は、星がきれいだね。きっと明日は青空だよ。だからちょっとだけ早起きして雪の銀世界を散歩してごらんよ。きっと1年で一番美しい風景が見られるはずだよ。春よりも、夏よりも、秋よりも美しい風景がみられるよ。本当だよ。雪が景色を十倍美しく見せてくれるんだ。草木の緑や、燃える紅葉よりも、もっと美しい景色を雪が見せてくれるんだ。どうしてか分かる?」
「どうして?」
「白い雪が、青い空をつくるから」
「?」
「白い雪が、青い空をつくり、その青い空が、お日様の光を大空いっぱいに覆い、そして、すべての景色をお日様の光でキラキラと輝かすから」
「・・・・」

DSCN2226.JPG

「みんな気がつかないでいるけれど、冬は、雪のおかげで、お日様の光が一年で一番キラキラと輝くときなんだよ。だから何でも一番きれいにみえる時なんだ」
「へえ〜」

IMG_5909.JPG

「ところで、やっと話ができたね」
「・・・・」
「佐藤君は、学校ではあまり口をきいてくれなかったね」
「それは、お前が、大きな目玉で俺の顔をのぞきこんたりするから。クラスの連中も冷やかしてくるし」
「でも、その大きな目玉を造ったのは、佐藤君だよ」
「と言うことは、やっぱりお前は雪ん子?」
「うん」
「じゃ、春になると消えてしまうのか?」
「そういうことに・・・・なるのかな」
「大変だ、今のうちに冷凍庫で氷をたくさん造っておかなきゃ」
「アハハハハ、そんなことしなくても大丈夫よ」
「どうして? あの雪人形が溶けたら、お前は死んでしまうんだろう?」
「そんな心配はいらない。もう帰るんだから」
「え? だって・・・・」
「じゃ、明日、雪の野原で」
「おい待てよ!」

 転校生は闇の中に消えてしまいました。

つづく

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2008年01月26日

白い雪原10

 翌朝はやく起きてみると、あたり一面の雪景色でした。外に出てみると、ほんの数ミリばかりの雪が台地を覆っていました。朝日はまぶしく、空は見渡すかぎり青い色が続いていました。私は、山の方に向かって散歩にでかけました。そして、なるほどと思いました。そして昨夜の会話を思い出していました。

ddfgh-038.jpg

「きっと明日は青空だよ。だからちょっとだけ早起きして雪の銀世界を散歩してごらんよ。きっと1年で一番美しい風景が見られるはずだよ。春よりも、夏よりも、秋よりも美しい風景がみられるよ。本当だよ。雪が景色を十倍美しく見せてくれるんだ。草木の緑や、燃える紅葉よりも、もっと美しい景色を雪が見せてくれるんだ。どうしてか分かる?」
「どうして?」
「白い雪が、青い空をつくるから」
「?」
「白い雪が、青い空をつくり、その青い空が、お日様の光を大空いっぱいに覆い、そして、すべての景色をお日様の光でキラキラと輝かすから」

 白い雪が青い空をつくる。その言葉に嘘はありませんでした。本当に白い雪が青い空をつくるのです。そして、白い雪と青い空が、台地の全てのものを美しく映し出すのです。その美しさは、春の新緑よりも、夏の山野よりも、秋の紅葉よりも輝いて見えました。冬の世界には、基本的に空の青と雪の白しか無いはずなのに、たくさんの色をもつ春・夏・秋の景色より美しく見えました。

「おはよう!」

 転校生でした。

「お前は、いつも突然に現れるなあ」
「ごめんごめん、もう、そういう事はしないから。それより、どう? 朝早く起きて散歩したかいがあったでしょ?」
「うん」
「きれいでしょう?」
「うん」
「冬もまんざら捨てたものでないでしょう?」
「そうだなあ」
「冬は、色が少ないでしょう? だから今まで気がつかなかったものが見えてくるの。色が少ない分、雪の白とか、空の青とか、お日様の光の加減とか、たとえばキラキラ輝く小さな雪の結晶とか」

ddfgh-039.jpg

「でも、今まで、どうして気がつかなかったんだろう」
「見ようという気持ちがないと見ることはできないからね」
「見ようという気持ちねえ」
「そう。その気になれば、この世で一番美しいものかもしれないのに、あまりにも身近すぎて気がつかない人が多いのは悲しい事ね」
「・・・・」
「でもこの美しい景色は、一瞬で無くなってしまう。というより、一瞬で無くなってしまうから美しいのかな。今日は陽気も良いし、数時間後には雪も溶けてなくなっちゃう。残念だよね」
「ああ」
「じゃあ、ここでサヨナラ。短い期間だったけれど、おわかれです」
「え?」
「私、また転校します、遠くに行っちゃいます」
「ええ! 転校してきたばかりなのに?」
「うん、だからもう会えないけれど、元気でね」
「そんな、でも、今日だけは学校で会えるんだよな」
「それがダメなんだ、もう会えないの、サヨナラ」

 そういって転校生は山の方に走り去っていきました。
 私は「せっかく仲良くなったのに」と無性に切ない気分になりました。
 そして学校に登校したわけでしたが、学校には、さっきサヨナラしたばかりの転校生が、何食わぬ顔で教室にいました。

「あれ? お前、また遠くに転校するっていったじゃないか?」

 しかし、転校生は怪訝な顔をするばかり。

「今朝、お前と俺は、雪の中を一緒に散歩したよな、昨日の夜にも会ってるよな、昨日の夕方も・・・・」
「会ってないわ」
「そんな・・・・」

 放課後、私は雪人形の山に走りました。
 春の陽気に、雪は、どんどん溶けていました。
 雪人形も溶けて無くなっていました。


つづく

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2008年01月31日

白い雪原 11

白い雪原 11

 このお話も明日で最終回です。本当は、今日までの間に17回連載する予定でしたが、忙しくて12回で連載を終わるのは心残りですが、とにかく、あと2回で、エンドマークを書くこととします。

 放課後、私は雪人形の山に走りました。春の陽気に、雪は、どんどん溶けていました。雪人形も溶けて無くなっていました。私は、ウソハチじいさんの家に走りました。しかし留守でした。ウソハチじいさんは入院したとのこと。私は、病院に走りました。走りながら、すべてを振り返ってみると、ウソハチじいさんは、一度も嘘をついてないことに気がつきました。

「雪人形を作ってはいかん」
「雪人形を作ると、雪ん子がでるぞ」
「小さな女の子さ。そうさな坊主と同じくらいの年頃の女の子さ」
「アハハハハ、雪ん子は、転校なんかしない。安心しろ」
「いずれ雪ん子は、消えていく。雪のある間に、ちょっとばかり悪戯をして消えてしまう。それが雪ん子の正体さ」
「雪ん子は、転校生なんかじゃない」
「生身の人間が消えることはない。心配するな」
「消えるのは雪ん子だ。人間は消えたりしない」

 ウソハチじいさんの言葉は、全部、真実でした。だけど、その真実をそのままに人に話すからウソハチと呼ばれる。全て本当のことを話すからウソハチと呼ばれる。しかし、私は知っている。ウソハチじいさんは、一度だって嘘をついたことがない。裏表がない。感じたことを全部話してしまう。黙っていた方が良いことも話してしまう。しかも、大人も子供も区別せずに話してしまう。だからウソハチじいさんと呼ばれてしまう。
 けれど、本当に嘘をついているのは、ウソハチじいさんではなく、まわりの大人たちだ。大人たちは自分に嘘をついている。自分に嘘をついて、見えているはずの雪ん子に対して見えないふりをしているだけ。そんなことを考えながら私は、ウソハチじいさんが入院している病院に飛び込みました。じいさんは、病室に元気に寝ていました。

「しいさん、だいじょうぶ?」
「ああ」

 ウソハチじいさんは窓の外をみていました。
 太陽の日差しがまぶしかった。

「雪ん子が消えた」
「・・・・」
「雪人形と一緒に、雪と一緒に消えちゃった」
「そうか」
「どうすればいいんだろう? 雪ん子は、もう戻らないの?」
「溶けてしまった雪は元には戻らん」
「・・・・」
「でも、来年の冬になったら、また雪は降ってくるさ」
「じゃ、雪ん子は?」
「しそれまでのお別れ」
「雪ん子は、どこにいったの?」
「さあな。よくは分からんが山かもしれん」
「山?」

 日本では太古の昔から、人が亡くなると山に帰ると信じられてきました。ナウマン象の化石を発見したネリー・ナウマンは『万葉集』の死者を詠んだ歌の分析を通して、他界観について次のような見解を示しています。
 死者は「黄泉の国」、遥かな、再びそこから戻り来ることのない国。もともとは山にある死者の国に赴くと考えられていました。また、死者の墓は訪れられることはほとんどなく、墓のある場所は荒野や荒山であることが多く、墓そのものが他界でした。
 これに対し、掘一郎は『万葉集』の分析をもとに次のように述べます。
「当時の一般的観念として、人の死するにあたって死者の霊魂が高きにつくとした着想が著しい。万葉集を唯一の資料とする限りにおいて多くの霊魂が山岳に登り、鎮まり、しかして天上の世界に行き棲むとしたことは明らかである」

 『万葉集』の歌の分析をもとにした当時の人びとの他界観に関する解釈には、研究者による相違が認められます。しかし、山を一般的な意味での他界とする考えかたが存在したのです。そして、その考えかたをもとに修験道が発展したり、日本独特な仏教思想が生まれたりしました。たとえば、お盆になると仏壇に御先祖様が帰ってくるとか、コケシを造ることによって、間引かれた子供の霊を供養したりです。

 雪国の人間は、雪人形を造ることによって、山の精霊を呼んだりもしました。逆に、雪人形には山の精霊が宿ると忌み嫌い、ただひたすらに雪だるまを造るだけの地方も多かったことも確かです。人形には魂が宿るものですが、雪人形は、春になると消えて無くなります。それが悲しくて雪人形に宿った精霊たちが、雪ん子となって、創造主に色々な悪戯をしかけてくるからです。

 しかし、多くの創造主は、そんな雪ん子の伝説を迷信ときめつけ、雪ん子たちの悪戯を気のせいにしたり、何かの勘違いと納得してしまい、気がつかないままにしておきます。たとえ気がついたとしても、見ぬふりをしてしまう。

 ところが、ごくまれに、雪ん子の存在に気がついてしまう人もいる。ウソハチじいさんもその一人です。そういう人の多くは、友人が少なかったり、村八分にされていたりして、淋しさの中にいる人だったりします。そういう人は、すすんで雪人形を造り、雪ん子の到来を待つのです。

 雪ん子は、そんな孤独な人間たちの前に、小さな少女の姿になって現れます。そして、いろいろな悪戯をしかけてくるのです。井戸の中に大量の枯葉を入れてみたり、水道管を破裂させたり、屋根の雪を突然落としてみたりです。でも、どんな悪戯でも、何も起こらないことより楽しいものです。とくに淋しい雪国の冬ならなおさらです。

つづく

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2008年02月01日

白い雪原 最終回

白い雪原 最終回

「おや、いつかの男の子かい?」

 病室に御婦人があらわれました。いつだったか病院でウソハチじいさんをからかったとき、私をきつく怒ってくれた御婦人でした。

「雪ん子が消えたらしい」
「へえ」
「・・・・」
「雪ん子は、どんな姿をしていたの?」
「転校生」
「転校生ねえ」

 御婦人は笑い出しました。

「じいさんが、雪ん子に会った時は、雪ん子は私の姿をしていたんだっけ?」
「え? じいさんも雪ん子に会ったの?」
「(ウソハチ)・・・・」
「おばさんの姿ででてきたの?」
「そうよ、四十年も前の話だけれどね。このじいさんは、あまり愛想が良くないから、村では少し浮いてるのよ。親戚も含めて誰も相手にせん。家族もおらんしなあ。昔から一人暮らしだし。だから雪人形を造ったらしいのよ。そしたらね、私の姿した雪ん子が現れたんだと。それからじいさんの家が賑やかになってなあ」
「・・・・」
「それを不思議がった近所のものは、じいさんのところに、こっそり見に行ったんだと。そしたらじいさんは、一人で雪遊びをして笑っておるだけで、他に誰もおらんかった。誰もおらんのに誰かに話しかけておった。その誰かというのが雪ん子だったらしいんだが、不思議なことに、その雪ん子は、私が現れると消えてしまうらしい。雪ん子は、私そっくりで、私がいないときに現れ、私がいる時には消えてしまう」
「・・・・」
「近所の人は、誰もおらんのに誰かに話しかけて雪遊びするじいさんが、気がふれたと思っていたから、私をよく遊びに行かせたのさ。そうすれば、じいさんは大人しくなるから。それから40年間、じいさんとは腐れ縁」

と御婦人は笑い出しました。そしてウソハチじいさんは口をひらきました。

「転校生とは仲良くするんだぞ」
「どうして?」
「雪ん子は、自分が一番仲良くしたい人の姿になって現れるからさ」
「!」

 私は、病院を駆け出しました。
 もう一度、雪人形を造った山に向かって走り出しました。

 あれから40年近くたっています。
 しかし一度も私は、雪人形を造っていません。

 話はかわりますが、私の住む北軽井沢というか浅間高原で、たくさんの雪人形が造られています。北軽井沢や浅間高原で営業しているペンションオーナーたちみんなが集まって、たくさんの雪人形が造られつつあります。そして、その雪人形は、二月一日の今日の16時頃、完成する予定です。浅間高原ウインターフェスティバルのイベントの一つとして。

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 冬の北軽井沢&浅間高原は、淋しいところです。夏は賑わうスーパー避暑地も、冬は人が訪れることもなく淋しいかぎりです。淋しいということは辛いことです。
 淋しさの中で耐えるくらいなら雪ん子に色々な悪戯されたいと願った北軽井沢&浅間高原の人々は、たくさんの雪人形を造る決心をしました。そして、こんな雪人形を造りました。

 はたして雪ん子は現れるのでしょうか?

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 ところで私は、雪人形造りには参加していません。
 私の担当はホームページ造りです(http://wf.yoyoyoi.net/)。
 もうよいのです。
 私の雪ん子は、一人だけでいい。
 その訳は、機会があったらお話ししましょう。

 でも、みなさんはどうですか?
 雪ん子に会ってみる気分になっていませんか?
 誰かに悪戯されてみたい気分になっていませんか?

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2008年02月15日

雪国伝説を旅する 01

雪国伝説を旅する 01

 「鶴の恩返し」と「夕鶴」が、全く違う物語だとしたら、貴方は驚きますか? 「鶴の恩返し」は、恩返しする鶴の話し。「夕鶴」は、木下順二が佐渡島の民話、「鶴女房」を元にした戯曲です。そして、この二つは、話しのストーリーが、とても似ています。

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『昔々、ある所に、おじいさんが住んでいました。ある日、おじいさんは、罠にはまって傷ついた鶴を助けてあげました。それから数日後、吹雪の晩に、おじいさんの所に、若い女の人が助けを求めてきました。若い女の人は、吹雪が止むまで、おじいさんの所に泊めてもらう事になりました。

 吹雪は何日も続きました。手持ち無沙汰に暮す若い女の人は、「機(はた)を織らして下さい」と、おじいさんに言いました。そういうわけで、若い女の人は機織りを始めました。そのさい、「機織りをしている間、絶対に中を覗かないで下さいね」という約束をしたのでした。

 けれど、この約束を、おじいさんは破ってしまいました。機織りをしている姿を覗いてしまったのです。すると、そこには若い女の人ではなく、鶴が機を織っていたのでした。驚いて腰を抜かしているおじいさんの所に、若い女の人は、できあがった反物を持ってやって来ました。そして「おじいさんさようなら」と、言った若い女の人は鶴になって、遠い空に飛んでいきました。』

 皆さんも御存知の「鶴の恩返し」です。子供の頃、絵本か何かで読んだ事があるかと思います。私も子供の頃、「鶴の恩返し」の絵本を読みました。でも、私は「おや?」と、子供心に首を傾げたものでした。

 私は、幼小の頃、佐渡島は北片辺という部落で過した事があります。北片辺と言えば、佐渡島でも有数の民話の宝庫で、『安寿と厨子王』『鶴女房』をはじめ、多くの民話が語られてきた所です。私も多くの民話を、土地の老婆に聞いたものです。当然、「夕鶴」のモデルになった「鶴女房」も何度も聞かされました。

 「鶴の恩返し」の物語の主役はおじいさんです。
 そして、物語のテーマは、恩返しという事になります。
 では、「夕鶴」の元となった「鶴女房」は、
 どんな御話しでしょう?

つづく


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2008年02月17日

雪国の伝説を旅する 02

雪国の伝説を旅する 02


 「鶴の恩返し」の物語の主役はおじいさんです。
 そして、物語のテーマは、恩返しという事になります。
 では、「夕鶴」の元となった「鶴女房」は、どんな御話しでしょう?

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『昔々、ある所に、独身の若者が住んでいました。ある日、若者は、罠にはまって傷ついた鶴を助けてあげました。
 それから数日後、吹雪の晩に、若者の所に、若い女の人が助けを求めてきました。吹雪が止むまで、若者の所に泊めてもらう事になりました。若い女の人は、「つう」と言いました。それがきっかけで、若者とつうは結婚したのでした。

 二人はとても幸せに暮しました。若者とても優しかったし、つうは若者をとても、好いていましたから・・・。しかし、結婚後の生活は、楽ではありませんでした。あまりに貧乏な生活に、つうは機織りを始めました。そのさい、
「機織りをしている間、絶対に中を覗かないで下さいね」
と若者に約束をさせました。

 そして、完成した織物は、とても素晴らしい出来具合でした。それを若者が町に持って行きますと、その織物は『綾錦』と名付けられ、とても高い値段で売れました。

 驚いた若者は、慾に目がくらみ、つうに、もう一度、機織りをするように頼みました。つうは嫌がっていましたが、若者が、あんまりせがむので、「もう一度だけ」「機織りをしている間、絶対に中を覗かない」という約束で、渋々、機織りを始める事にしました。

 若者は、喜びました。しかし、「もう一度だけ」という約束が、どうしても不満でした。素晴らしい機織り技術があるのに、『綾錦』を何度も織れば、もっと儲かるのに、どうして「もう一度だけ」なのだろうと思ったのです。そこで若者は考えました。「こっそり覗いて『綾錦』を織る機織りの技術を盗み見てしまえ」と考えました。そして若者は、約束を破ってしまいました。

 すると、驚いた事に、機を織っていたのは、つうではなく、鶴でした。鶴は、自分の羽を一羽一羽と抜き、織物の中に織込み、美しい織物を作っていたのでした。そして、全身、羽が無くなり赤い肌をあらわにした鶴が機織りの前に座っていました。

 やがて、つうは、出来上がった『綾錦』を持って若者の前に現われました。痩せ細ったその姿は、別人のようでした。そして、つうは悲しそうに言いました。

「どうして、約束を守ってくれなかったの」

つうは、家を飛出しました。
若者が後を追いかけると、そこには誰もいませんでした。
ただ、鶴が一羽、若者の家の上を、何度も何度も飛び回っていました。
そして、その鶴は、遠い空に飛んでいきました。
若者が見守る中を、遠い空の向うに飛んでいきました。
悲しい声をあげながら飛んでいました・・・』


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 以上「鶴女房」です。

 ストーリーが「鶴の恩返し」と似ていないことはないですが、やはり「鶴女房」と「鶴の恩返し」は別の物語でしょう。

 つうは、自分が鶴であるという十字架を背負い、恋した若者に嫁ぎました。その恋心も、お金に目がくらんだ夫によって、踏みにじられてしまったのでした。若者は、『綾錦』を手に入れた代りに、とても大切なものを失ったのでした。

 愛を語った物語。それが「鶴女房」です。だから「鶴女房」は、「鶴の恩返し」とは根本的に違う物語と言えます。しかし、「鶴の恩返し」と「鶴女房」は、何かとストーリーが似ている事は確かです。テーマが違うのにストーリーが似ている。これはどう言う事なのでしょう。

 実は、この疑問は、私にとっては子供の頃からの謎でした。

つづく


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2008年02月18日

雪国の伝説を旅する 03

雪国の伝説を旅する 03

 ストーリーが「鶴の恩返し」と似ていないことはないですが、やはり「鶴女房」と「鶴の恩返し」は別の物語でしょう。

 つうは、自分が鶴であるという十字架を背負い、恋した若者に嫁ぎました。その恋心も、お金に目がくらんだ夫によって、踏みにじられてしまったのでした。若者は、『綾錦』を手に入れた代りに、とても大切なものを失ったのでした。

 愛を語った物語。それが「鶴女房」です。だから「鶴女房」は、「鶴の恩返し」とは根本的に違う物語と言えます。しかし、「鶴の恩返し」と「鶴女房」は、何かとストーリーが似ている事は確かです。テーマが違うのにストーリーが似ている。これはどう言う事なのでしょう。

 実は、この疑問は、私にとっては子供の頃からの謎でした。

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 疑問を解く鍵は『綾錦』にありました。御存知のとおり、鶴の羽は真白です。真白な羽を使って機を織っても、その織物はただの白い織物ができるだけです。しかし、もし、鶴の羽が淡いピンク色だったらどうでしょうか? 白の織物は、淡いピンク色の模様がつき、高価な『綾錦』ができる可能性があるかもしれません。

 そして、もう一つ疑問を解く鍵があります。それは鶴という鳥にあります。佐渡島には鶴はいません。とくに「鶴女房」の語られた北片辺では、鶴の住める環境が全くないのです。それなのにどうして「鶴女房」が語られたのでしょう? そして、それは佐渡島の方言です。当然の事ながら「鶴女房」は佐渡島の方言で語られてましたが、「鶴」のところだけ、佐渡島の方言で語られていません。これはどういう事なのでしょう?

 佐渡島には「鶴」はいません。
 でも、「朱鷺」はいます。
 絶滅寸前ですが、「朱鷺」なら、今でも存在しています。
 その昔、朱鷺は、スズメやサギとならんで憎い鳥として
 鳥追い歌に歌われるほどいました。
 全国の何処にでも、たくさんたくさんいました。
 そして朱鷺は、すずめ、さぎと共に、朱鷺は百姓たちの敵でした。
 朱鷺は蛙や虫たちを求め田畑を荒らしたからです。
 百姓たちは、そんな憎い朱鷺に罠をしかけたものです。

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 「鶴女房」では、罠にはまった鶴を若者が助けた事になっていますが、
 それは考えにくい事です。
 しかし、朱鷺なら考えられます。

 これは、あくまでも私の仮説なのですが、「鶴女房」は、本当は「朱鷺女房」だったのではないでしょうか?

 佐渡島の方言では、朱鷺の事を「ドウ」「トウ」「ツウ」と言います。民話採集者が、佐渡島の方言を知らず、朱鷺を意味する「ツウ」と言う言葉を「つる」と聞き間違った事は大いにありえます。だから、「鶴女房」が本当は「朱鷺女房」であった可能性は大です。そして、それが本当だとすれば、「鶴女房」いや「朱鷺女房」に於ける全ての謎が解明されてきます。


つづく


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2008年02月19日

雪国の伝説を旅する 04

雪国の伝説を旅する 04

 これは、あくまでも私の仮説なのですが、「鶴女房」は、本当は「朱鷺女房」だったのではないでしょうか?

 佐渡島の方言では、朱鷺の事を「ドウ」「トウ」「ツウ」と言います。民話採集者が、佐渡島の方言を知らず、朱鷺を意味する「ツウ」と言う言葉を「つる」と聞き間違った事は大いにありえます。だから、「鶴女房」が本当は「朱鷺女房」であった可能性は大です。そして、それが本当だとすれば、「鶴女房」いや「朱鷺女房」に於ける全ての謎が解明されてきます。

 木下順二の「夕鶴」の主人公は、「つう」と言いました。
 つうとは、雪国の方言で朱鷺のことをさします。
 そして田畑を荒らす憎い鳥、つまり(朱鷺)を
 助けてあげた若者がいた。

 本来、敵対関係にある若者が、敵である朱鷺を助けた。
 朱鷺は、そんな若者に恋をした。

 ちなみに朱鷺は、一夫一妻。そして生涯を連れ添います。朱鷺の夫婦仲が良いことは有名で、子供の頃から時間をかけて相性の合う相手を探し、一生別れることはありません。そんな朱鷺が人に恋をし、人間の姿に変えて若者のところにやってきたのですから、鶴女房が朱鷺女房だったとしたら、この物語には深い意味があると言わざるをえません。

 それはともかくとして、人間と朱鷺は、結婚します。そして幸せに暮らそうとするわけですが、もともと一人がやっと食っていける貧乏家に、嫁がやってきたために家はますます貧しくなります。そもそも、田畑を荒らす憎い鳥朱鷺を逃がしてやるくらいの若者ですから豊かな生活をおくるのは難しかったでしょう。若者は、妻に貧乏で苦労させることを謝ります。しかし、朱鷺女房は平気です。米がとれなくとも田畑の蛙などを食べれば生きていけるからです。しかし、そんな朱鷺女房も、冬ともなれば餌もなくなりますから大変です。食べるにも苦しむことになります。ですから機を織ることを決意します。

「これから私は、機をおりますが、決して中を覗かないでください」
「ああ」

 冬に機を織る。
 これは雪国では珍しい風景ではありません。
 昔は、どこにでも見られる風景でした。

 話は変りますが、朱鷺の羽は淡いピンク色をしています。
 その美しさと言ったら鶴の比ではありません。

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 染色家(染物家)たちは、この色に憧れた事でしょう。「もし、朱鷺の羽が織物になったら」と、考えたに違いありません。そのもしを実現したのが朱鷺女房でした。美しい『綾錦』を朱鷺女房は織ったのです。

つづく

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2008年02月22日

雪国の伝説を旅する 05

雪国の伝説を旅する 05

 朱鷺の羽は淡いピンク色をしています。
 その美しさと言ったら鶴の比ではありません。

 染色家(染物家)たちは、この色に憧れた事でしょう。「もし、朱鷺の羽が織物になったら」と、考えたに違いありません。そのもしを実現したのが朱鷺女房でした。美しい『綾錦』を朱鷺女房は織ったのです。

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 しかし、これが悲劇のもとになりました。
 若者は、朱鷺女房との約束を破って機織り現場を覗いてしまったからです。

 そこには人間ではなく朱鷺がいたからです。朱鷺女房は、朱鷺の姿となって淡いピンク色をした自らの羽を一つづつ引っこ抜いては、機に織り込んでいました。まさに身を削って綾錦を織っていたのでした。そして、約束を破って覗いてしまった若者に待ち受けたものは別れでした。

 この悲劇は、朱鷺が人間に恋したことと、若者が約束を破ったことによっておこりました。欲のために大切なものを失ってしまった若者の件はともかくとして、人間に恋した朱鷺女房は、その後、何を思ったでしょうか? 約束破りは論外としても、朱鷺女房にも過失が無いとは言えません。過失とは、夫婦間に隠し事があった。タブーがあったということです。

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 それを反省してのことか、その後の朱鷺たちは、子供の頃から時間をかけて相性の合う相手を探しだすようになりました。夫婦間で隠し事のない幼なじみとしか結婚しなくなりました。

そして20世紀。朱鷺が絶滅寸前になり、多くの科学者たちが朱鷺の保護のために、種の保存のために頑張りましたが、全て失敗してしまいました。朱鷺たちは、人間たちより恋深く、いちずな愛をもめる野鳥でした。そのために種の滅びは早まるばかりでした。

朱鷺は誰とでも夫婦になれる
野鳥ではなかったのです。


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2008年02月24日

雪国の伝説を旅する 06

雪国の伝説を旅する 06

 北海道と言えばキタキツネですが、佐渡島にはキツネはいません。そのかわり狸ならいます。佐渡島では狸の事をムジナと言います。そうです、ラフカディオ・ハーンで有名なムジナです。

 ところで、キツネが、狸が、ムジナが、人を化かす(騙す)話は全国いたる所にありますが、佐渡島のムジナ伝説には、他の地方にみられない特徴があります。と言うのは、佐渡のムジナたちには名前があるのです。

 たとえば二つ岩の団三郎。

 このムジナは佐渡ムジナ界の帝王です。団三郎だけではありません。この団三郎の下には佐渡ムジナ界の四天王と呼ばれるムジナたちがいます。

 重屋の源助
 湖鏡庵の才鬼坊
 関の寒人
 東光寺の禅達

 これらが佐渡ムジナ界の四天王です。その他にも佐渡ムジナ界には無数のムジナがいます。その無数のムジナたちには皆、それぞれ名前があり様々なエピソードがあるのです。そして、そのエピソードは、とても愉快でユニークなのです。

 例えば重屋の源助は重屋という家にとり憑き、その家に住もうとする人をおどかし追出すムジナでした。

 湖鏡庵の才鬼坊は人を驚かすのに命をかけたムジナでした。

 関の寒人はめったに人前に現われない仙人のようなムジナでした。

 東光寺の禅達は東光寺に来る新住職に禅問答を挑み新住職を困らせ追払う事に生きがいをもったムジナでした。

 みんな佐渡ムジナ界の四天王だけに、皆とてもユニークなエピソードを持ったムジナです。

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 でも、佐渡島で一番人気の高いムジナは帝王、団三郎です。この団三郎には本州のキツネたちを相手にキツネとムジナの戦争を挑み勝利した話とか、多くの遊女を囲い多くの手下を従え凄じい御殿で豪勢な暮しをしていたというエピソードは、半端な話ではありません。侮れないなって感じがします。

 しかし、そんな団三郎にも最後の時があったらしく、
 彼は村人に殺されてしまったそうです。

つづく


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2008年02月25日

雪国の伝説を旅する 07

雪国の伝説を旅する 07

「昔むかし、佐渡の二つ岩という所に団三郎という、とても悪いムジナがいました。

 団三郎は島に訪れる人間たちを次々と化かしては金をまきあげ、その金でたくさんの女を囲い豪勢な暮しをしてました。村人はそんな団三郎に腹をたて、村中で二つ岩でムジナ狩りをしたのでした。

 これにはさしもの団三郎もかなわず、団三郎は村人に捕まり殺されてしまったそうです。そして団三郎の住んでた二つ岩には今までに村人からまきあげた金が宝が、山のように出てきたのです。村人はそれらを戦利品として当然の如く持ち帰りました。

 しかしです。それからというもの毎晩、嵐が村を襲ったのです。土砂崩れ、洪水、雷。次々と訪れる災害に
『これは団三郎のたたりに違いない!』
と思った村人は、二つ岩に団三郎を祭る神社を建てたのでした。
すると、村を襲っていた災害が嘘のようにぴたっと止んだのです」


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 あれは40年前の事でした。
 私がまだ小学校に入る前の事でした。
 私は団三郎を祭ってある二つ岩神社で、
 御供物泥棒を見つけたのです。
 御供物泥棒は精悍な大男だったような気がします。

「おじさん、御供物をとっちゃだめだよ! それは団三郎の物なんだから。団三郎にたたられても知らないよ!」

 すると、大男はジロリと私を睨んでいいました。

つづく

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2008年02月26日

雪国の伝説を旅する 08

雪国の伝説を旅する 08

 私は団三郎を祭ってある二つ岩神社で、御供物泥棒を見つけたのでした。御供物泥棒は精悍な大男だったような気がします。

「おじさん、御供物をとっちゃだめだよ! それは団三郎の物なんだから。団三郎にたたられても知らないよ!」

 すると、大男はジロリと私を睨んでいいました。

「わしは団三郎という者だが、団三郎が団三郎の者を取ってはいかんのかの?」
「団三郎?」

 大男は、どう見ても人間にしか見えませんでした。だから私は言いました。

「団三郎ならしっぽがあるはずだ。もしオジサンが団三郎ならしっぽを見せてごらん!」

 すると大男は豪快に笑いました。

「わしは人間だ。しっぽなんかはえとりゃせんわい」
「え? オジサン、ムジナじゃないのかえ?」
「馬鹿な事を言うな。お前、俺がムジナに見えるのか? 人間にしかみえんだろう。このとうり、わしは人間の団三郎だ」

 私は笑ってしまいました。
 なるほど人間です。
 私は、この大男が悪い人ではないような気がしてきました。

「でもオジサン、この御供物はムジナの団三郎のものなんだ。オジサンは人間の団三郎なんだろう? 人間の団三郎がムジナの団三郎の物を取ったらいけないと思うよ。それって泥棒と同じ事だと思うよ」
「ほーっ、これ(御供物)はムジナの団三郎の物だったのか。わしはてっきり自分の物と思っていた。それが本当ならムジナの団三郎に悪い事をしたなあ・・・。なにしろ長い間、わしは、これが自分のものだと思っておったから・・・」

 大男はそう言ってどこかに消えてしまいました。

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 そして二十年後。
 1990年頃のことです。
 私は風(=仕事をやめて旅すること)になっていました。
 そして旅人として全国を放浪していました。
 そこで見つけたのは、こんな秋田につたわる伝説でした。

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2008年02月27日

雪国の伝説を旅する 09

雪国の伝説を旅する 09

 そして二十年後。
 1990年頃のことです。
 私は風(=仕事をやめて旅すること)になっていました。
 そして旅人として全国を放浪していました。
 そこで見つけたのは、こんな秋田につたわる伝説でした。

「昔むかし、団三郎という大男の鉄砲猟師がいました。団三郎は村の人気者でした。正直者で人が良く、それで男前だった団三郎は村中の娘たちに慕われていました。
 しかし、それを快く思っていない村の若い男もいたようでした。ある時、村に徳の高い坊さんが流れてきました。村には寺がなかったので団三郎は坊さんに寺を建ててやりました。
 坊さんは村人に『殺生をするな』と、説きました。団三郎は鉄砲猟師でしたから、日ごろから団三郎の事をよく思ってない人たちは、ここぞとばかりに殺生をする団三郎を責めました。そして、団三郎は村を追出されてしまいました」

 では、村を追出された団三郎は
 いったい何処にいったのでしょうか?

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 旅の楽しみを観光だけに限定してしまうのは、あまり上手な旅とは言えません。土地土地の人に出会う事、人の心に触れる事、それが旅の醍醐味と言えます。また、民話伝説といったものも調べてみる事も旅には欠かせない余興です。なぜならば民話伝説には、それを伝える土地の人たちの魂が込められているからです。

 私は秋田、山形、新潟と旅をしたことがありました。そして、気がついた事は、団三郎という名前の主人公の伝説があちこちに存在する事です。そして、その団三郎は、流れ者で鉄砲猟師だったりするのです。

 私は目を閉じて自分の幼い頃を思い浮かべました。なぜか二つ岩神社に御供物を泥棒していた大男の事が思い出されました。そして、あの大男の姿が私の頭の中に焼きついて離れなくなったのでした。

 私は、いてもたってもいられなくなってしまいました。何故かは未だに解りません。とにかく私は何かに憑かれたように、佐渡の二つ岩神社と、二つ岩の団三郎について調べました。


つづく

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2008年02月28日

雪国の伝説を旅する 10

雪国の伝説を旅する 10

 二つ岩神社は佐渡金山のすぐそばにあります。金山には、金鉱石から金を精練する工場がたくさんありました。それら精練工場では、炭に多量の酸素を送り、燃焼効率をあげるフイゴと呼ばれるポンプが大量に使われていました。そして、そのフイゴには動物の皮、つまりムジナの皮が使われていたのです。

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 私は佐渡の記録を調べていくうちに恐ろしい事を発見してしまいました。それは二つ岩に団三郎という鉄砲猟師が住んでいて、ムジナの皮を大量に金山に売って、大儲けしていたという記録です。これはどういう事なのでしょう?

 さらにこんな記録もありました。

「団三郎は村人に金貸しをしていたが、村人は借りた金を返さなくなったため団三郎は金を貸すのをやめた」

という記録です。また、団三郎は村人から殺生で金を稼ぐ男として、あまりよく思われてなかったようでした。

どうやら、ムジナの団三郎の伝説と、この団三郎という鉄砲猟師の記録には何か関連があるようです。ムジナの団三郎の伝説は、鉄砲猟師の団三郎から生れたのかもしれません。そうすると、ムジナの団三郎の最後というのはいったい何を意味するのでしょうか?

 いつしか私は、幼かった頃に会った、
 御供物泥棒を思いだしていました。

「あの人は鉄砲猟師の団三郎かもしれないな・・・」

そう思うと、私はあの大男にすまないなと言う気持ちで一杯になります。なにしろ、私は鉄砲猟師の団三郎を、御供物泥棒と間違えてしまったのですから・・・。

「ほーっ、これ(御供物)はムジナの団三郎の物だったのか。わしはてっきり自分の物と思っていた。それが本当ならムジナの団三郎に悪い事をしたなあ・・・。なにしろ長い間、わしは、これが自分のものだと思っておったから・・・」

あの時の大男の言った言葉を思いだした私は、こう思いました。鉄砲猟師の団三郎は、とても気のいい奴だったに違いない・・・。

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