仕入れの話3
『仕入れの話』を連載したら、今度は御客さまから野菜をいただきました。これじゃ、皆さんに申し訳なさ過ぎるので、この連載は、今回で打ち止めにします。それはともかく仕入れの話です。前回は、上物師(じょうものし)について説明しました。今回は、
2.ゲソ屋
3.あかにし
について解説してみます。まず「ゲソ屋」について。
2.ゲソ屋
ゲソとは、イカの足のことです。イカの足は、安いですから、高級品を追い求める上物師と違って、いくらか安い野菜を取り扱う八百屋を「ゲソ屋」と言います。といっても、2級品を取り扱うというのではありません。1個1000円のレタスを取り扱わないというだけのことです。ゲソ屋と言っても、悪くなりかかった野菜を安く売る店ではなく、高級野菜を取り扱うことが多いです。ただし、高騰した野菜には手を出さないのですね。嬬恋村でいうと、嬬恋村Aコープが、ゲソ屋にあたります。嬬恋村Aコープには、比較的良い野菜が揃えてあります。ただし、ここには、高級品が置いてません。「ゲソ屋」だけに、家庭の主婦が買えない価格設定の品物は置いてないのです。
これが上物師の店なら、8月上旬の真夏でも、イチゴ、リンゴ、みかん、モミジの葉といったものが置いてあるわけですが、ゲソ屋にはありません。ゲソ屋の顧客は、家庭の主婦であって、レストランといった業者相手ではありませんから無くて当然です。
3.あかにし
残念ながら「あかにし」の語源が何であるのか知りません。しかし、この「あかにし」と呼ばれる八百屋さんは、腐る寸前の野菜を安く買いたたいて、消費者に格安で放出する八百屋さんです。
どうして腐る寸前の野菜が放出されるかと言いますと、八百屋の仲買人たちの賭博的な性格のためです。野菜は、肉や魚と違って、値段が乱高下します。豊作不作に関係なく、天気次第で暴騰・暴落するのです。台風が来ると農家は働きに出ません。そうなると野菜が不足します。おまけに道路の通行規制がおき、流通がストップすると、それだけで野菜が暴騰します。それを狙って先物買いをする仲買人がいるのですが、ちょっと台風の進路が、外れると、先物買いは大失敗となります。在庫をかかえて次の台風を待つのですが、台風がこなければ、野菜はどんどんダメになってきます。
そういった野菜を安くねぎって買いたたくのが「あかにし」で、あかにしの店には、安い野菜ばかり並んでますが、品数が少ないのが特徴となってます。そして、大根の葉は、黄色くなってるせいか、大半がむしり取られており、アスパラも水を吸わせてしまっています。(アスパラを水につけると堅くなるので、上物師は絶対にしないのが普通なのです)
野菜の乱高下で思い出したのが、交通事故です。市場の正面道路で交通事故がおきたことがありました。すると大勢の八百屋が、野次馬に集まり、野菜が大暴落したことがありました。やがて救急車がやってきて、野次馬も解散してしまうと、今度は野菜が暴騰し、それで仲買が大もうけしたものです。その時、つくづく思ったものです。野菜市場は、賭博場だと。
つづく
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