2008年02月22日

雪国の伝説を旅する 05

雪国の伝説を旅する 05

 朱鷺の羽は淡いピンク色をしています。
 その美しさと言ったら鶴の比ではありません。

 染色家(染物家)たちは、この色に憧れた事でしょう。「もし、朱鷺の羽が織物になったら」と、考えたに違いありません。そのもしを実現したのが朱鷺女房でした。美しい『綾錦』を朱鷺女房は織ったのです。

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 しかし、これが悲劇のもとになりました。
 若者は、朱鷺女房との約束を破って機織り現場を覗いてしまったからです。

 そこには人間ではなく朱鷺がいたからです。朱鷺女房は、朱鷺の姿となって淡いピンク色をした自らの羽を一つづつ引っこ抜いては、機に織り込んでいました。まさに身を削って綾錦を織っていたのでした。そして、約束を破って覗いてしまった若者に待ち受けたものは別れでした。

 この悲劇は、朱鷺が人間に恋したことと、若者が約束を破ったことによっておこりました。欲のために大切なものを失ってしまった若者の件はともかくとして、人間に恋した朱鷺女房は、その後、何を思ったでしょうか? 約束破りは論外としても、朱鷺女房にも過失が無いとは言えません。過失とは、夫婦間に隠し事があった。タブーがあったということです。

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 それを反省してのことか、その後の朱鷺たちは、子供の頃から時間をかけて相性の合う相手を探しだすようになりました。夫婦間で隠し事のない幼なじみとしか結婚しなくなりました。

そして20世紀。朱鷺が絶滅寸前になり、多くの科学者たちが朱鷺の保護のために、種の保存のために頑張りましたが、全て失敗してしまいました。朱鷺たちは、人間たちより恋深く、いちずな愛をもめる野鳥でした。そのために種の滅びは早まるばかりでした。

朱鷺は誰とでも夫婦になれる
野鳥ではなかったのです。


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posted by マネージャー at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする