私は団三郎を祭ってある二つ岩神社で、御供物泥棒を見つけたのでした。御供物泥棒は精悍な大男だったような気がします。
「おじさん、御供物をとっちゃだめだよ! それは団三郎の物なんだから。団三郎にたたられても知らないよ!」
すると、大男はジロリと私を睨んでいいました。
「わしは団三郎という者だが、団三郎が団三郎の者を取ってはいかんのかの?」
「団三郎?」
大男は、どう見ても人間にしか見えませんでした。だから私は言いました。
「団三郎ならしっぽがあるはずだ。もしオジサンが団三郎ならしっぽを見せてごらん!」
すると大男は豪快に笑いました。
「わしは人間だ。しっぽなんかはえとりゃせんわい」
「え? オジサン、ムジナじゃないのかえ?」
「馬鹿な事を言うな。お前、俺がムジナに見えるのか? 人間にしかみえんだろう。このとうり、わしは人間の団三郎だ」
私は笑ってしまいました。
なるほど人間です。
私は、この大男が悪い人ではないような気がしてきました。
「でもオジサン、この御供物はムジナの団三郎のものなんだ。オジサンは人間の団三郎なんだろう? 人間の団三郎がムジナの団三郎の物を取ったらいけないと思うよ。それって泥棒と同じ事だと思うよ」
「ほーっ、これ(御供物)はムジナの団三郎の物だったのか。わしはてっきり自分の物と思っていた。それが本当ならムジナの団三郎に悪い事をしたなあ・・・。なにしろ長い間、わしは、これが自分のものだと思っておったから・・・」
大男はそう言ってどこかに消えてしまいました。
そして二十年後。
1990年頃のことです。
私は風(=仕事をやめて旅すること)になっていました。
そして旅人として全国を放浪していました。
そこで見つけたのは、こんな秋田につたわる伝説でした。
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