2009年07月27日

トムラウシ山遭難事故に思う10

トムラウシ山遭難事故に思う10

 今回は、別の視点から。
 山で遭難事故がおきるたびに、

「参加者の自己責任だろう!」

というガイド擁護ともとれる声があがります。それが正しいかどうかは、別にして、「なぜ、そういう声が出るか?」という背景を御存じない方のために、ちょっと説明がいるなと感じましたので、今回は、この点から話を進めてみましょう。

 実は、山には、平地と違うルールがある。
 いや、昔はあったと言っておきましょう。

 どういう事かと言いますと、危険な山登りにおいては、全員が助かるために、一人を犠牲にすることもありえる。具体的にいうとザイルを切り落とすこともありうる。これは平地では、殺人罪にあたることですが、山では、必ずしもそうではなかった。お互いに暗黙の了解として、生存のためには、しかたないと思って山に登っていた。

 そういう時代もあったんですね。

 だから昔は、遭難事故で(刑事裁判はともかくとして)民事裁判は、おこりにくかったし、新聞報道でも遭難事故をおこした遭難者を叩く記事は、大昔は少なかった。けれど、ある時期を境に、マスコミが遭難者を叩くようになった。

 軽量なトレッキングシューズ、ゴアテックスの雨具とシェラフカバー、チタン製品、新型ザック、ダウンシェラフなどの革新的なアイテムの登場によって、登山が驚くほど簡単になって、誰でも山に行けるようになってしまった。

 それだけでなく、ガイド会社までできた。
 ガイド会社は、金を持っている中高年をターゲットに
「荷物は、うちのポーターが持ってあげますよ」
「軽装で身軽な登山ができますよ」
という商売まではじめました。

 ネパールのトレッキングツアー会社みたいなことをはじめた。

 こうなると、昔みたいに覚悟して山に登る人は、少なくなってしまいますね。かって、山には、平地と違うルールがあったことを知っている人は、いったいどれだけ存在しているのだろうか?  いや、そういう覚悟のあった人でさえ、20万円以上の高額ツアーの広告をみたら、そんな記憶は、消えてしまうかもしれない。

 ところで、この手の遭難事故で裁判になると、ツアーリーダーが大抵負けるようです。つまり、ガイドだろうが、何だろうが、ツアーリーダーが責任をとらされる。

 責任をとらされるということは、
 決定権があることになる。
 決定権が無ければ、法的には責任は存在しない。

 
 私が何を言いたいかわかりますね

「このガイド、おかしいなあ」

と思っても、逆らいにくいのですよ。


つづく。

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posted by マネージャー at 11:14| Comment(7) | TrackBack(0) | 登山関係の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

温道(万座温泉編)1

祝 万座温泉完全制覇!

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10カ所、全部入ってしまった。
湯船だと40カ所くらいか?

つづく。

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posted by マネージャー at 05:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 万座・白根山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トムラウシ山遭難事故に思う9

トムラウシ山遭難事故に思う9
続きです。

 登山になじみのない人は、トムラウシ山遭難事故で、ガイド会社って怖いと思っていると思いますが、今日は、山に行くのにガイドは、必要なのか?という点から考えてみたいと思います。ベテラン登山家にとっては、退屈な内容になりますが、ご容赦ください。

 実は、登山で一番リスクが高いのが、単独登山です。

 これは、初心者であろうが、超ベテラン登山家であろうが、
 基本的に関係ありません。
 具体的に説明してみましょう。

 実は、トムラウシ山遭難事故が起きたときに、別の山で、私の友人が、怪我をしてしまい、山岳警察の救急ヘリコプターの御世話になるほどの大けがをしてしまった。彼は、ベテラン登山家でした。山も別にたいして難しい山ではありません。たまたま運悪く、足を踏み外しただけです。しかし、倒れ方が悪かったために骨折してしまい、動けなくなってしまった。

 と言っても、重傷というわけでもなく、これがもし、下界の出来事ならタクシーで病院に行って治療を受けるか、119番に電話するだけの、何でもないことだったのです。しかし、山の中ですから、タクシーも救急車も無い。もちろん携帯の電波も届かなかった。おまけに骨折箇所が祟って声も出ない。

 こういう時、団体登山なら、誰かが救援を呼べるし、携帯の電波が届く位置に移動することも可能です。しかし、一人だと、どうにもならない。動けないで、そのまま放置され、最悪のこと命を失う。

 だから単独登山には、リスクがある

 たまたま足を踏み外すことくらい、何百回も登っていたら1回くらいあるかもしれない。運悪く蛇に噛まれたりするかもしれない。15年前、山小屋の裏で倒れて、小屋の人に発見されるまで5時間も雨に打たれ続けた人もいた。肋骨を折ったために声が出なかったし、自力で動けなかった。その人も、単独登山だった。

 単独登山は怖いのです。

 では、単独登山するには、どういう準備がいるのか? 救急ヘリコプターの御世話になってしまった私の友人は、どうして助かることができたか? 彼を救ったものは何なのか? それは....

 いつも胸につけていた、ホイッスルでした

 これを吹き続けることによって、通りかかった3人の女性のパーティーに発見してもらい
「滑落して、ケガをしているので助けて下さい!」
と叫んだためです。

 それに彼には、ザックにビバークのための用意と、非常食があった。サバイバルシートもあったし、何でもあった。2日や3日、人が通らなくてもやっていけたから落ち着いた対処ができた。で、ヘリで病院に運ばれたわけです。

 もっとも、彼は救急病煉で治療を受けている間、自分が情けなくて泣き続けていたらしい。救急ヘリコプターの御世話になるなんて、山屋にとっては、屈辱ですからね。しかし、人間、運・不運というものがあります。どんなバリバリの登山家でも、不運には勝てない。その不運が起きたとき、単独登山をしていたら、絶体絶命のピンチになる可能性がある。

 でも、それを避ける方法もあります。
 友人や家族と登る。
 山岳会に入る。
 ツアーに参加する。

 あと、山で友人をつくってしまう。
 (旅は道連れ世は情け)


つづく。

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posted by マネージャー at 04:32| Comment(3) | TrackBack(0) | 登山関係の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする