実々奇談とは、軽井沢の近隣である佐久市にあった岩村田藩の祐筆を務めた阿部重之進重保が自ら体験したり、人から伝え間いた奇談63話を、嘉永七(1854)年に15巻3冊にまとめたものです。
この本は、小諸市に住む安部輝男さんが、文書を解読して自費出版したものがでています。それを買って読んだのですが、嘉永七(1854)年の原本だけに、現代語訳なしでスラスラ読めるようになっています。今回は、本書を紹介したいと思います。
ちなみに安部輝男さんは、この本を出した時は、90歳でした。
まだ生きていれば、100歳ですが、
はたして、お元気でおられますでしょうか?
どうして本書を紹介する気になったかと言いますと、学生時代に学んだ歴史が自虐史観すぎからです。しかし、そういう嘘は、いずれバレるものです。というのも、江戸時代には大量の古文書が残されていて、その発掘が進むにつれて、江戸時代の庶民は世界一豊かであったことが証明されてしまうからです。
大江戸実々奇談も、そういうたぐいの文書なのですが、実は、この本は、ものすごく面白い。面白すぎて、ぐいぐい引き込まれてしまいます。江戸時代に興味ある方は、ぜひ読んで欲しい本です。
と言うわけで、今回は、大江戸実々奇談 21話を紹介します。
江戸時代の庶民と武士の娯楽が生き生きと書かれてあります。
武士と庶民。
その関係は、どういうものであったでしょうか?
秋葉原でハルヒダンスを踊っていた若者と比較してみてください。
実は、江戸時代も、平成時代も大差ないことが分かります。
では、21話を読んでみましょう。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
大江戸実々奇談 21話
第二十一話 王子道にて諸人を化かせし者の事
東京の王子に飛鳥山という桜の名所があります。ここは、今も昔も花見のスポットで、江戸時代でも、大勢の人々が、花見をしながらドンチャンさわぎをしていました。もちろん酒に酔って、悪ふざけをしたり、はめを外すのも、今も昔もかわりありません。
ある日のことです。
どこかの侍が、田んぼで九裸となっていました。
衣類で大小の日本刀を巻いて肩にかけ、
丸裸のサムライは、田んぼを歩きながら、
大きな川を渡っているような身振りをしながら
「これは深い、深い」
と、独りで叫んでいました。それをみつけた庶民たち、大勢集まってきてワイワイガヤガヤと野次馬の列をつくり、見物をはじめました。
「さては、あの侍、狐に化かされたな? いまに馬の糞を食うぞ」
「いやいや、たんなる花見の酔っぱらいだろう」
「いーや、気が狂ったのさ、かわいそうになあ」
と、笑う者がいたり、気の毒思う者がいたり、みんな腰を下ろして見て居たのでした。やがて、この侍は、田んぼにて着物を着て、帯を締め直して真面目な顔で
「まず、今日は、是まで」
と見物に向って言いました。
見物人は大笑い。
あれは侍のパフォーマンスだったのでした。
「やれやれ、キツネじゃなくて、侍に化かされたわ」
とつぶやき、見物人たちはザワザワと解散していきました。
(大江戸実々奇談 21話 文章は現代語に、私流に意訳してあります)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
なんとも微笑ましいではないですか。そして、この文には、当時の武士と町人の姿が生き生きと書かれてあります。私たちは、この本から、もう一度江戸時代を見直してみたほうが良いと思います。次は、江戸時代の乞食と非人についての日常を紹介してみたいと思います。
つづく。
↓ブログ更新を読みたい方は投票を
人気blogランキング