日本ユースホステル史の源流3
つづきです。
開国以来、日本人は驚くべき能力で西洋文明を吸収していきました。黒船来航からわずか三年後に宇和島藩は日本人だけで蒸気船を造っています。他にも、製鉄、鉄鋼、加工技術、大砲、蒸気機関、医術などの研究開発を行い、アッという間にヨーロッパ並みのものを作り上げることに成功したのですが、どうしても真似ができない部分がありました。
量産技術です。
職人技でもって、大砲や鉄砲は造れました。しかし、それを低コストで供給できなかったのです。造る能力があってもコストが高ければ、輸入するしか在りません。しかし、コストを下げるには、幅拾い産業技術の蓄積がないとダメなのです。つまり産業革命によって、あるていど社会が成熟してないとダメなんですよ。
例えば製鉄。
ペリー来航以来、日本の諸藩は、次々と反射炉、つまり製鉄所を建設し、製鉄を行いました。文献を手に入れ、ヨーロッパから技術者を招けば、同じような反射炉は完成しました。
しかし、数年ほど鉄を生産していくうちに、反射炉はボロボロに溶けてしまい使い物にならなくなってしまう。反射炉を構成している耐火煉瓦が、鉄を溶かす熱に負けてボロボロになっていくのです。そのために、アッという間に、生産設備を償却してしまって、コストの高い鉄になってしまう。薩摩でも長州でも幕府でも、反射炉を造ることは造ったのですが、その反射炉は、すぐに使えなくなってしまう代物だったのです。
図面をもらって、見よう見まねで文明の利器を造るということと、それを低コストで量産するということは、全く別のことなんですね。例えば、ロケットで月面に人間を輸送することは、今の日本の技術力なら不可能ではありません。しかし、それで利益を上げられるかどうかは、別の問題になります。幕末の開国で、製鉄、鉄鋼、加工技術、大砲、蒸気機関を造るのは、わりと簡単に達成したのですが、それをコストにみあうレベルで量産するのは、非常に難しかった。
しかし、例外があった。
佐賀藩でした。
どういうわけか佐賀藩には、ヨーロッパなみの幅拾い産業技術の蓄積がありました。理由は伊万里焼。伊万里焼は、有田焼と違って商売を目的に焼かれたものではありません。

皇室・将軍・他藩へのプレゼントとして、世界最高級の焼き物を生産する佐賀藩の秘密結社なのです。人間国宝クラスの職人を山奥に閉じ込め、外部の人間を一切遮断して、究極の磁器を造らせた。それが伊万里焼なのです。そして、この磁器は、きわめて高温で焼くために、耐火煉瓦の技術にすぐれたものがあり、その技術によって、完璧な反射炉を製造することができたのです。

そうなると、銃砲火器から造船土木に至るまで、波及効果がでてきます。産業の米たる製鉄のレベルがあがり、それを安価に量産できるとなると、日本もヨーロッパ並みの工業国になれるということになります。そして、この伊万里焼は、もう一つの効果を生み出します。赤字財政で潰れる寸前だった佐賀藩に大金をもたらします。
いわゆる密貿易です。
歴史文献に、佐賀藩のことが詳しく出てこないのは、この密貿易の存在のためです。伊万里焼の密貿易で、大金をかせぎ、その費用をもって西洋文明を輸入する。そして近代国家を作りつつあった。それが佐賀藩の正体でした。これは最近まで明らかにされてなかったことです。これを発表したのは、平成10年頃に、冥土の土産に書き残した郷土史家(医師)がいたから分かったことです。しかし、それを今まで公表できなかった。佐賀の郷土史家たちは、不名誉なことは全て口をつぐんできたからです。

また佐賀藩は、もっと恐ろしいことをやってのけています。佐野常民の登用です。佐野常民の登用のどこが恐ろしいかと言いますと、この男は、とんでもない人間だったからです。ネットで調べると、佐野常民は、日本赤十字を造った男として、かなり美化されて書かれてありますが、この男の正体は、そんなものではなかった。もっと凄みのある人間だった。この人間が、全く恐ろしいことをやってしまった。しかし、それを歴史の表に出す人は少ないのです。みんな黙っている。だから歴史書やネットで調べても、なかなか出てこない。
つづく。
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posted by マネージャー at 03:21|
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