そして横尾到着が、朝9時30分。私は、ここで、一つの決断をしました。槍ヶ岳の殺生ヒュッテに行くのを断念。今日の目標を、北穂高小屋にしました。
コースタイムは、どちらも9時間ですが、北穂高小屋の方が急登なので、コースタイムを縮められると判断したからです。しかし、これはとんでもない誤算であることを後で思い知らされます。北穂高小屋に行くと言うことは、涸沢を通過することになりますが、この涸沢の景色があまりにも美しすぎるため、写真撮影で立ち止まってばかりになり、なかなか前へ進めないからです。
こう書くと「写真なんか撮らなければいいのに」と、思われるかもしれませんが、こんな景色を見させられたら、例え親が危篤でも立ち止まってしまうのではないでしょうか? 景色に見とれてしまい、少しも前進できず、グズグズしながら12時20分に涸沢小屋に到着。ここで食事とトイレにしました。
で、やっぱり、いました。
山ガールたちと、アミューズなどの団体さんが。
しかし、私が会いたかったのは、休暇中の山小屋関係者。しかし、それらしき人はいません。彼らは、みんな涸沢ヒュッテの方に泊まるからです。だから涸沢小屋には、アミューズの人たちしか見えなかった。だからちょっと残念でしたが、私たちは、あこがれの北穂高小屋に泊まる予定なので、問題なし。
北穂高小屋は、山屋のあこがれ。
なぜならば、北アルプスで一番標高の高い山小屋であり、
北穂高の山頂イコール北穂高小屋だからです。
つまり、北穂高小屋に寝るということは、
北穂高の山頂に寝るようなもの。
そして、ここでみる槍ヶ岳と奥穂高は、日本で一番美しいのです。
おまけに眼下に美しい涸沢&横尾本谷が見える。
なのに、今まで私は泊まれなかった。というか、泊まることが不可能だった。山岳会でも、『風のたより』という旅グループでも、この北穂高小屋だけは宿泊対象から外さざるをえなかった。それは、定員が少ないからです。混雑期に二十人ものの団体さんを連れて泊まることなど絶対に無理な山小屋でした。しかし、今回は夫婦2人なので遠慮無く泊まれます。
涸沢小屋で昼食とトイレを終えて13時。
私たちは、北穂高に向けて出発しました。
涸沢から北穂高までの一般的なコースタイムは、3時間。
16時までには北穂高小屋にチェックインできる計算になります。
ちなみに13時という時間は、山小屋ではチェックインタイムになります。この時期の日没は17時頃であり、夕食は17事30分頃になりますから、15時頃までにチェックインするのが山小屋の常識ですし、遅くとも16時半頃までにチェックインしなければ、小屋の人に嫌な顔をされます。場合によってはチェックインを待たされる可能性もあります。
私は、荷物を背負ってなければ、一般的なコースタイムの半分くらいで登れる人間です。今回は、13s装備なので、さすがにそれは無理ですが、それでも一般的なコースタイムより、3割くらい早く登れます。しかし、それは岩場がなければの話しであって、五十肩だと、そうはいきません。
上高地から涸沢までは、岩場はゼロでした。
だから一般的なコースタイムより、3割くらい早く到着していました。
ところが涸沢から北穂高のコースには岩場があった。
その岩場を登ろうとすると五十肩によって
「痛っ!」
何度うずくまったことだろうか?
五十肩になると、手が肩より上にあがりません。
五十肩になると、手に体重をかけられません。
五十肩になると、重い物をひっぱることができません。
もし、無理に手をつかうと
肩に激痛がはしり
5分くらいうずくまってしまう。
これは岩場では、非常な危険な行為です。
それは分かっているのですが、つい手を使ってしまう。
そして「痛っ!」とうずくまる。
こんな痛い目に何度かあうことによって、
なんとか片手だけで岩登りできるようになってきました。
すると
「なんで、こんな簡単なことができないんだ」
という思いをし愕然とするのです。
たかだか片手が使えないだけなのに、
山の岩場では、致命的なハンデとなる。
とっても簡単な作業が、いっさい出来ない。
悔しい。
とても悔しい。
こんなことで恐怖の大キレットを通過できるのだろうか?
私は岩場を這いつくばって、ソロリソロリと登りながら、
片手を使えない恐怖を何度も味わっていました。
耳にこんな言葉が聞こえてきそうだ。
「そんなんで、よくハンデのある人を山に連れて行ったな」
だから断念するわけにはいかなかった。
絶対に登りきって、五十肩でも
北穂高から槍ヶ岳までいけることを証明しないと。
(眼下に見える涸沢ヒュッテ)
(前穂高の勇姿)
美しい紅葉は、涸沢の岸壁を艶やかにかざり、
その赤い屏風図が、五十肩の私に何かささやいてきます。
『その先には、もっと美しいものが待ってるよ』
涸沢の紅葉たちが、私を励ましてくれているような気がしました。
そして3時間後。
16時に北穂高到着。
ちょうどコースタイムどうりの時刻に北穂高登頂成功。
(今回は35リットルのザック。超最低限の荷物しか入ってない。徹底した軽量化を行った)
そして、北穂高小屋にチェックイン。
うわさどうり北穂高小屋は、小さかった。
でも、人数が少ないために個室をもらいました。
これは有りがたかった。
あと、小さいために登山者どうしが、フレンドリーになりやすい。
ユースホステルのように見知らぬ同志が仲良く語りあう。
その光景が、また良かった。
そして、日没。
素晴らしい夕焼けでした。
赤く染まる槍ヶ岳。
明日、あそこに行こうと、固く決意しました。
ただし、そのためには五十肩で、大キレットを通過しなければならない。
(五十肩には、ちょっと怖い大キレット)
そして、17時40分。
小屋の夕飯。
うわさどうり美味しかった。
豚のしょうが焼きが2枚も。これはありがたい。
味噌汁は甘かった。
醤油も甘かった。
きっと塩分が不足しているからだと思い、味噌汁は2杯おかわりしました。
お茶もガブガブ3杯飲み、御飯も大盛りで二杯おかわりしました。
この後、寒さに震えながら、すぐに仮眠したのですが、
2時間後に目覚めて、念のためにトイレにいってみたら、
小便がでない。
味噌汁は2杯おかわりし、お茶も御飯茶碗で3杯飲んだのに小便がでない。
「食事の水分は、全て体内に吸収されてしまったのか?」
私は、上高地から北穂高小屋までの9時間の間に、
5本のアミノバイタルウォーターと3本のアミノバイタルゼリーを飲んでいます。
3リットルの水分を補給し、
そのうえ汗も全くかいてないのに、
水分が足りなかったとは.....
意外も意外。超意外!

そして、もう一つ意外だったのは、食事前に寒気が襲ってきていたのに、食後に2時間の仮眠をとった後には、暑さで目が覚めてしまったということです。
(嫁さんも同様でした)
これは、エネルギーが足りなかったか、アミノ酸が足りなくて免疫機能が落ちたかのどっちかです。これも、また今回の実験で証明されていまったわけですが、私の食事計算だと今日一日で2500カロリーをとっている。これでもカロリーが足りなかったわけです。もしくはアミノ酸が足りなくて免疫機能が落ちてる可能性もある。念のためにさらにアミノバイタルゼリーを補給し、チーカマを食べました。

さて、万歩計をみてみたら、その日9時間の歩行数は、3万4086歩。移動距離は、20キロメートル。消費カロリーを計算したら、6500キロカロリーでした。やはり、4000キロカロリー不足していました。
ちなみに、小浅間山の山頂までで、私の足で3000歩。湯の丸山で、5000歩です。上高地から北穂高まてが34000歩ということは、小浅間山を11回登った勘定になります。湯の丸山なら7回ですね。とすれば短期間にダイエットするには、北アルプスくらい適したところはないかもしれません。もし、その気になれば、10日間くらい山にこもれば、アッという間に痩せることが可能になりますね。
つづく
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