2010年11月20日

漢字は日本語である (新潮新書/小駒勝美/著)

漢字は日本語である (新潮新書/小駒勝美/著)2




 この本の面白いところは、「中国語には文法が無い?」かもしれないという説を紹介しているところです。

「えええええええええ? そんなバカな?」

と思って先を読むと、このように書いてあります。英語には格のの変化があります。過去形と未来形では文字が変わります。単数形と複数形でも文字が変わります。しかし、中国語には、そういう変化はない。時制を示す語形変化がない。

 日本語は、おくりがなによって、格のの変化や単数形と複数形を表せます。しかし、中国語には、それがない。そこで中国語に文法が無いという説をとなえる学者たちが出てくるのですね。単に漢字を並べただけなのではないのかと。

 逆に言うと、そうであるからこそ、漢字は中国人にしか発明することは出来なかったともいえます。日本人やヨーロッパ人は、ひらがなやアルファベットは発明できても漢字を発明することは絶対にできない。文法が、それを許さないからです。しかし、中国人なら漢字を発明できる土壌をもっていたわけです。中国語の構造は、漢字を使うには便利な言葉なんですね。

 ところが日本語は漢字を使うのに不便な言葉だった。しかし、アジアには漢字が先にあったので、やむにやまれず使わざるえなかったのです。ここで逆説的になりますが、日本語は漢字を使うのに不便な言葉だったために仮名が生まれることになり、訓読みが生まれ、日本語が豊かになったわけです。そして、日本人が日本人のための漢字を作っていくことになりました。日本独自の漢字です。

 あと、この本は、面白い指摘がなされています。日本語にスペースがないことです。英語にもドイツ語にも単語ごとにスペースがある。だからパソコンには、スペースキーが大きくつくられています。これは中国語でも韓国語でも一緒でスペース無しには文章を作れません。しかし、日本語には、スペースが皆無です。これは、漢字と平仮名の組み合わせによって、スペース無しに文章を構成できるからです。逆に言えば、もし、日本語に漢字がなかったとしたら、平仮名だけだったとすれば、やはりスペースが無いと読みにくくて仕方なかったと思います。

 それから面白いことに、著者は、世界で最も難しい文字は、平仮名だと言います。「あ」「ふ」「む」といった平仮名は、はじめて覚える人にとって、とても難解な文字なのだそうです。だから平仮名をレタリングするのは、プロにしかできない。逆にアルファベットや漢字やカタカナは、素人にもレタリングが出来る。

 それから面白かったのが、
「戦前の横書きは、右から左に書いた」
というのは嘘という話し。

 たしかに戦前に写した古い写真をみると、本屋の看板に「山本書店」ではなく、「店書本山」と書いてあります。確かに右から左に文字が書いてあります。だから戦前の人たちは、「店書本山」のように右から左に文字を書いたと思いがちなのですが、これが大きな間違いであることを知って驚きました。

 戦前も戦後も、大学ノートに文字を書くときには、左から右に書いていた。
 つまり今と変わらなかったらしい。

 では、「店書本山」と書かれた看板は何であったか?
 なんと、これは縦書きなのだそうです。
 「店書本山」は横書きでなくて縦書き。
 一文字だけで改行した看板なのだそうです。

 なーるほど! 



つづく

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posted by マネージャー at 14:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする