2011年12月16日

逆説の日本史 水戸黄門って、悪者?

うちの嫁さんは、歴史嫌い。
なのに水戸黄門は、見ていたらしい。

「そうそう、テレビの水戸黄門シリーズは終わるんだってね」
「本当? そりゃ残念」
「あれ、面白かったからね」
「忠臣蔵の浅野内匠頭と違って、水戸黄門は正真正銘の正義の味方だしね」

 これだから素人は困る。
 と、言って切り捨てても仕方ないので、
 歴史オタクのはしくれとして、真実を伝える気になってしまった。

「あのね、水戸黄門って、悪者なのよ」
「ええええええ? またなの?」
「いやいや、本当」
「ドラマじゃ正義の味方だよ」
「ところが実際は、江戸のホームレスを相手に、刀の試し切りをして遊んだバカ殿。いや、狂気の暗君」
「うそでしょ? 証拠あるわけ?」
「あるある、おおあり! しっかり証拠が残っているし、歴史の本にも分かりやすく書いてある。たとえば、この本を読んでみな」



「うーん、じゃ悪代官をやっつけたという話は?」
「嘘も大嘘」
「そんな。でも、火のないところに煙はたたないともいうし」
「そこが問題なんだよ。そもそも水戸黄門の時代の将軍は、誰だか知ってる?」
「さあ?」
「五代将軍綱吉。生類哀れみの令を発した犬公方」
「やっぱり、悪い将軍なんだ」
「とんでもない。五代将軍綱吉こそは、徳川家十五代将軍の中で最高の名君なんだ。ホームレスに食事をあげたり、罪人たちの人権に気をつけたり、動物虐待をやめさせたりした。能力主義で人材を活用するシステムを作ったのも綱吉。そして四百万石の直轄領を細分化して、能力ある代官を派遣したのも綱吉。つまり代官制度を作ったのは綱吉で、これ以降に直轄領の生産性は大きくはねあがることになる」
「ほう」
「ここで思い出して欲しいのが水戸黄門のドラマ。悪代官をやっつける筋書きでしょ? つまりね、あれは綱吉の子分をやっつけるということなのよ」
「ええええええええええええええええええ?」
「綱吉のせいで、ホームレスを相手に、刀の試し切りをして遊ぶことができなくなったサムライたちは、犬を相手に刀の試し切りをして遊んだりしたけれど、やがて、それもできなくなってしまった。で、腹をたてた連中がいたということ。そういう連中が、水戸黄門あたりを親分にあおいだ」
「・・・・」
「で、水戸黄門は、自国の領内で犬狩りをして虐殺し、綱吉に毛皮を届けたりした」
「将軍は怒ったでしょう?」
「いやいや、そこは、将軍の方が大人ですからね」
「結局、水戸黄門は悪者だったと?」
「うん。だけど、江戸庶民たちは、ワルの水戸黄門の方に憧れて、それが講談『水戸黄門漫遊記』になって後世に伝わったわけだ。あれは、水戸黄門を称えると言うより、綱吉を陰でバッシングする物語なんだよ。講談に出てくる悪代官は、綱吉をかさねてるんだな。だって代官制度を造ったのが綱吉なんだから。かわいそうに綱吉は、正真正銘の名君だったのに、なぜか庶民から嫌われていた。で、ワルだった水戸黄門の方が庶民から人気があったのよ」


つづく。

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ラベル:逆説の日本史
posted by マネージャー at 21:30| Comment(17) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする