耳が悪いので、無愛想に見えてしまうからだ。
そして、実際、無愛想なことも確かである。
実は、昔、人間関係に苦労していた。
友人は多かったのだが、長続きしないのである。
耳が悪くて無愛想だというのも理由の一つであるが、
最も苦しんだことは記憶の一部を失うことだった。
5分前のことを全く覚えてないことが、時々あったのである。
この症状がでるとタイムスリップした感じというか、
時間と空間をワープしたような感じになる。
つまり5分間、自分が何をやったのかの記憶が無いのだ。
これには苦しめられた。
本当に苦労した。
時々、友人を怒らすことをしても、自分にその記憶が無いのである。
しかも、その症状に気が付いたのが、15歳を過ぎてからであった。
それまでは何が何だか分からなかった。
ただ、何がどうなったのか人を怒らせてしまうことが多かった。
そして原因が分からずにオロオロすることが多かった。
しかしその症状に気がついてからは、問題は無くなった。
他の人と距離を置くようになったからである。
すごく仲の良かった友達とも、できるだけ距離を置くようにした。
そうしないと、その友人に被害が及ぶからである。
良いこともあった。
友人を避けるようになると、自分の時間が出来上がる。
その時間は、読者に使った。
図書館が自分の行く居場所になった。
おかげで高校時代には信じられないくらいの大量の本を読むことができた。
高校卒業後は、旅に出た。もちろん一人旅である。誰かと旅行するなんて考えられなかった。歴史好きだった私は、全国の史跡を1人で歩き回った。楽しかった。博物館や郷土資料館は、 1人で回った方が圧倒的に面白い。どんなに仲の良い友人も実は邪魔だったりするのだ。ひとりで自分のペースで見て回りたいのである。
宿泊場所は、主に駅のホームとか、公園のベンチであったりしたが、
たまにユースホステルを利用した。
最初は寝泊まりだけに使ったが、そのうち食事をとるようになった。
おかわりが自由だったからである 。
私はご飯を何杯もおかわりをして、そしてお昼ご飯を抜いた。ユースホステルの朝食と夕食で、5杯飯を食べて満腹にしたものである。
最初は、相部屋の人とは会話も交わさなかったが、当時のホステラーさん達は、そんな私にもよく話しかけてくれたので、いつの間にか私もいろんな人とお話をするようになった。それまで私は他の人と距離を置いて生活をしていたのだが、ユースホステルでは、距離を縮めるようになっていた。信じがたいことにユースホステルでは、私の記憶障害が、何の問題も起こさなかった。
もともとユースホステルでのお付き合いは、一期一会のお付き合いである。
それも淡いお付き合いである。
だから、記憶がなくなっても何の問題もないのである。
そもそも当時のユースホステルでは、歌って踊ったり、ドンチャン騒ぎをしたり、トランプをして遊んだりしていたので、宿泊している人たち全員が、記憶を失っているようなものであったからである。つまりである、ユースホステルに泊まると言う事は、記憶失うということでもあるのだ。
もちろん、みんなは記憶を失ってないのかもしれない。
しかし、そこには、異空間が存在している。
別世界があるのである。
これは 、記憶を失っているのに等しいことなのだ。
そして、非日常の中で記憶を一時的に失うことによって、ストレスを解消し、
日常に戻ったときに活力が回復するのである。
私は、このような、非日常を愛した。
気が付いたらユースホステルが好きになっていた。
つづく。
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