5分前のことを全く覚えてないことが、時々あったのである。
子供の頃に親から自転車を買ってもらった。私は自転車に乗って遠くに遊びにいくのだが、その時に5分間の記憶を失ったとする。すると、なぜ自分がそこにいるのかがわからなくなるのだ。つまり、自宅にいたはずの私が、なぜか神社の境内で座っているのである。まるで瞬間移動しような錯覚に陥るが、そんな事は無い。私はそこまで自転車で向かっていることは確かなのだから。要するに自転車に乗って神社に行ったことが記憶にないだけなのである。
これはとても不便なことであった。
何しろ、自分がいつの間にか知らない土地にいるのである。
下手したら迷子になることもあったのだ。
ところがである。この不便な体質によって、妙な土地勘が生まれたみたいなのだ。知らない街にある日突然放り出されても、自力で家まで帰る能力が、いつの間にか私に備わっていたみたいなのだ。だから私は、迷子になったことがない。けれど弟は、迷子になっている。
ちなみに私はいちど歩いた土地は何十年たっても覚えている。車も運転をしていても、いちど走った路は忘れる事は無い。これはうちの家内には絶対真似のできない特技である。うちの家内は、100回通っても道を覚えない。北軽井沢に引っ越してきてから、もう11年になるが、未だに周辺の道を覚えていないのが現状だ。でも私は、北軽井沢に来てから、 1週間もたたないうちに草津町から佐久の町までほとんどの道を覚えてしまった。これは登山をしてても同じだった。不思議なことに山で道に迷っても直感で正しい登山道をさぐり当てる能力が私にあった。だからどんな過酷な探検をしていても、不思議と遭難をしたことがない。必ず帰り辿りつけるのである。それも直感で、簡単にさぐり当てられるのである。
話は変わるが、私は耳も悪い。いわゆる難聴と言うやつである。しかもこれで、損をしたということもなかった。プラスマイナスで言えば、圧倒的にプラスのことが多かった。まあそれについては、ここでは詳しく述べないが、人間という生き物は、何かが不足すると何か別の能力が生まれるのである。そして、そうやって備わった別の能力は、その後の人生において大いなる威力を発揮するのである。
さて、長い前置きになってしまったが、ここからが本題である。嫁さんが妊娠して、臨月を迎え、実家に里帰りしてしまった。というわけで、北軽井沢ブルーベリーユースホステルには、私一人しかいない。もちろん、 10年前には私一人で宿を回していたので、何の問題もないのだが、 1つだけ困ったことがあった。私はものをよくなくすのである。もちろん、いろんな対抗策は取ってある。家や車の鍵などは、たくさんコピーをとってあるし、いろんな道具も複数ある。しかし、唯一コピーできないものがある。財布である。もちろん現金などは、財布を3つ4つに分けて、分割して持っているのだが、問題はカードである。こればかりはコピーできない。
10年前、 1人で宿を始めたときは、すべて現金で物を買っていた。だから何の問題もなかったのだが、今はすべてカードで買っている。だから絶対に財布は無くせないのだ。で、いろいろ考えたあげく、最高のアイデアを思いついた。海外旅行で使う秘密のパスポート入れを常に首からぶら下げて、腹巻きの中に入れてしまうのだ(もちろん腹巻きはしてないが)。これなら絶対にカードはなくさない。ちょっと田舎のおっさんぽいが、そもそも私自身、田舎のおっさんで間違いない。もう正真正銘の田舎者になっているのだから、堂々と田舎のおっさんぽく生きようと思っている。
つづく。
↓ブログ更新を読みたい方は投票を
人気blogランキング