昔、子連れ狼という時代劇があった。
乳母車に三歳児の息子を連れて、幕府の刺客(殺し屋)から逃げつつ放浪する浪人侍の話である。
話しのストーリーは、毎回、ワンパターンなものが多かった。
1.父親が3日間分の食事を3歳の息子に用意する。
2.そして、3日間、無人の神社の境内で待てと命令する
3.父親は、幕府の刺客と3日間戦うつもりであったが、ピンチとなって5日間も捕らわれてしまう。
4.父の帰りを待っていた3歳の息子の食事は無くなり、飢えでフラフラになって、町に出る
5.すると村の小さな女の子に出会い、その子の親に食事をめぐんでもらう。その親切な人達に、いろいろお世話になって、なんとか生き延びる。
6.そこに父親(子連れ狼)が、牢屋から脱出して戻ってくるが、3歳の息子はいない。で、さがしてみたら親切な人達に、保護されていた。しかし、保護していた人達は、父親(子連れ狼)の敵のボスだった。
7.父親(子連れ狼)は、敵のボスを倒してしまう。そして3歳の息子を助けてくれた女の子が孤児になってしまう。
まあ、こんなストーリーが毎回つづいていました。
この時代劇の歌詞(橋幸夫)も、こんな曲です。
小高い丘の城跡の崩れかけた東屋で、
その子は父を待っていた。
この日の朝には帰るはずの父であった。
それが三つ目の朝となり、
四つ目の夜が来て、
五つ目の朝が雨だった。
長い前置きは、このくらいとして
息子が生後16ヶ月になった。
で、ますます巨大化している。
ちょっと肥満気味なのである。
あきらかに食べさせすぎなのであるが、嫁さん曰く、きちっと計量してマニアルどうりに規定量を食べさせているらしい。しかし、私は、そのマニアルとやらを疑っている。本に書いてあることには、嘘が多いからだ。まあ、そんなことはどうでもいい。
今年の夏は、9割りが新規の御客様である。
(例年なら新規は3割くらいで、大半がリピーター)
そのせいか、いつもの年と勝手が違っている。道が分からなかったり、軽井沢の混雑などで、予定より大幅に遅れて到着する御客様が多い。チェックインが、遅れ気味なのである。当然のことながら、夜8時・夜9時といった時間帯に夕食を用意するケースが増えてきた。というか、それが当たり前になってきた。
そうなると生後16ヶ月の息子も夕食をとれなくなってきた。子連れ狼の大五郎みたいになってきたのである。せいぜいミルクの入ったほ乳瓶を与えて放置するしかない。最初は、嫁さんは、この状況に発狂しそうになっていたが、
「これで、いいんだよ。うちのは太りすぎだから、1食抜くくらいでちょうどいいの」
と強引に押し切った。もちろん子連れ狼の話しもした。
現に息子からは文句は出ない。むしろ調子が良いくらいである。やはり栄養過多だったのだ。今までは、寝ているのを無理矢理起こして、きっちり定時に、それもマニアルどうり定量を食べさせていたのだ。眠いのに起こされた息子は愚図るし、寝起きで胸焼けしているのに無理矢理食べさせられて、ぶくぶく太るはで、息子の機嫌が悪かった。しかし、御客様の対応に追われて、それが不可能になると、逆に息子はぐっすりと眠れるようになって調子が良くなった。
そもそも人間の体は、飢えに対応している。だから、たまに飢えることによって健康を維持できる。その逆に全く飢えないと不健康になるのだ。生後16ヶ月の赤ちゃんを飢えさすわけにはいかないが、食べさせすぎはどうかと思う。
ところで、今年は、子連れの御客様も多くなった。先日も息子と同じ生後16ヶ月のお子さんが泊まっていた。そのたびに、お母さんが、不思議そうに質問してきた。
「生後16ヶ月のお子さんがいて、どうして宿の仕事が出来るんですか? 赤ちゃんは泣かないんですか?」
「うちの子は、空気を読むので」
「え?」
「仕事が忙しいと、空気を読んで、一人遊びをしてくれるんです。または寝てくれます」
「普通は逆ですよね。忙しいと、駄々をこねるのが赤ちゃんですよね」
「え? そうなんですか?」
「そうですよ。暇なときは良い子でも、忙しくなると愚図るのが一般的だと思いますが」
「うちは逆ですね。忙しい時は、空気を読んで、静かにしてくれます。こっちが休憩タイムになったり、御客様が全員チェックアウトすると、かまってくれと言ってきますね。そういう時間も知っていて、親が対応できる時間と、そうでない時間を理解できているようです」
御客様は、驚いていたようだが、なんのことはない。赤ちゃんは、大人が思っているより頭が良いのである。うちは、どんなに泣いても忙しい時には、無視するしかない。それを息子は学習しただけなのだ。昔は、こういう対応を「抱き癖をつけない」と言っていたのだ。
現に、こういう赤ちゃんは、うちだけでない。ペンション・貸別荘といった宿屋仲間の御両親に聞いても、うちの息子と同じであったようである。どんなに泣いても忙しい時には、無視するしかないと、赤ちゃんは、それを学習するのである。といっても生後16ヶ月だと、もはや、赤ちゃんとは言えないか。立派な幼児ですね。
つづく。
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