子供が産まれて1年6ヶ月になった。
1歳6ヶ月にもなると、かなり歩けるようになった。しかし先日、軽井沢の公園でママ友とばったり会ったら、娘さん(1歳6ヶ月)は、靴をはいて公園を颯爽と歩いていた。いつ幼稚園にいってもおかしくないような凛々しい姿をしていた。
その娘さんは、うちの息子とほぼ同じ頃に産まれている。つまり同じ1歳6ヶ月なのである。うちの息子は、そこまでは歩けない。夏の忙しい時期にベビーサークルに入れっぱなしなので、そこまで体ができてない。おまけにブクブク肥っている。そのうえストローも使えないし、スプーンも使えない。
「これではまずい」
と思った私は、嫁さんが1日出かけているときを狙って、息子と軽井沢の湯川公園で遊ぶことにした。湯川公園には、広い面積の芝生がある。転んでも怪我しないところなのだ。おまけに犬猫の立ち入り禁止なので衛生面でも安心できる。
私は息子に生まれて初めて靴を履かせ、湯川公園の芝生に立たせた。最初の10分は、ベンチから離れなかった。ベンチに手をついたまま怖がって離れなかった。無理も無い、生まれて初めて公園の芝生に立っているのだ。完全にフリーズしてしまっている。仕方が無いので、私がベンチからどんどん離れていった。すると息子は私を追いかけてきた。ようやく歩き始めた。
しかし、歩き始めると倒れそうになる。本人も倒れては拙いと思ってるようで、必死になって前に足を出す。しかし、また倒れそうになる。そのために必死になって足を前に出す。この繰り返しで、息子は走り出してしまった。走り続けないと倒れてしまうのだ。そして、ものすごい勢いで走るのである。
倒れそうで倒れない。
猛牛のように一直線に走り出す。
親の私は、ハラハラしながらみていたが、
一挙に30メートル走って倒れた。
わが息子は、倒れたくらいでは泣かない。
たんこぶができても血まみれになっても泣かない。
飯が足りないと泣く。
そういう性格なので、倒れた後は、自分ですくっと立ち上がって、また突進しだした。
「うむ、よくやるわい!」
と感心していると、どこぞの御家族が親子で弁当を広げているところに息子は突進していた。ものすごい速度で突進していた。あきらかに他所様のサンドイッチを狙っている。息子はサンドイッチが大好物なのだ。
「これはまずい!」
と突進する息子を抱きかかえ、方向を変えさせた。しかし、3メートルも歩いたかと思うと、また、どこぞの御家族のサンドイッチを狙って猛ダッシュをかけた。慌てて息子を押さえたが、あと2メートルというぎりぎりセーフだった。天気が良かったせいか、湯川公園の芝生には、あちこちに親子が弁当をたべていた。
どこに息子を連れて行っても、息子は他所様のサンドイッチをめがけて猛ダッシュしていた。あきらかにレジャーシートの他所様の弁当にタッチダウンしようとしていた。それをすんでの所で私がタックルしてブロックしているのである。まるで親子ラクビーである。
仕方が無いので、公園の隅っこに息子をつれていった。ここなら親子がレジャーシートを広げてない。大丈夫だろうと思ったが、甘かった。息子は猛ダッシュしていった。はて?と思いつつ、息子の後を追いかけたら息子の進行方向にカップルが居た。カップルが、なにやらモゾモゾやっている。そこに息子はロックオンした。そして猛ダッシュしている。
「やばい!」
すんでのところで、私は息子にタックルした。
カップルは驚いて私たちを睨んだ。
バッタのように私は謝った。
そして後ろをふりかえったときカップルの小声が聞こえてしまった。
「ジジイが、こんなところに孫連れてくるなよなあ」
「しーっ、聞こえるよ」
この時、ジジイに見られて心底よかったと思った。不審者に見られなくてよかったと思った。それほど変な光景を皆さんに見せていることは、自分でも理解できていた。公園での私たち親子のラクビーもどきは、はてしなく怪しかったと思う。なんせ息子は、猛ダッシュで他人が座っているレジャーシートに突進し、カップルに突進するのだ。それを1時間くらいくりかえしたのだ。
「そうだ! 飯を食わせればいいのかもしれない」
と思った私は、スーパーに行ってジュースを買って飲ませた。
ちなみに息子はストローが使えない。
生まれてこの方、何度やっても飲まなかった。
しかし、この時は、よほど喉が渇いていたらしく、
生まれて初めてストローを使ってジュースを飲んだ。
ゲホゲホ言いながら飲んだ。
そしてサンドイッチを私の分までペロリと食べてしまった。
その顔をよくみてみると、傷だらけになっていた。何度も倒れているので、とうぜんといえば当然かもしれない。夜、嫁さんが息子と対面したら驚いていた。息子は、見違えるように逞しくなっていたのだ。もちろん、その日は、死んだように眠っていた。
この日から息子は、外に出ることを楽しみにするようになった。靴や靴下をはかせようとすると、外に出ることがわかるらしく、とても協力的になる。よい子になって何でも言うことをきく。今では、愛犬コロと一緒に散歩までしている。
愛犬コロも息子を気遣って、5メートルごとに後ろをチラチラと見ながら、まるで盲導犬のように、ゆっくりと歩いてくれる。車が通ると、私と一緒に息子をブロックしてくれる。しかし、この愛犬コロだって、まだ2歳になってない。まだ大人ではないのだ。それなのに、非常にきくばりしてくれる。さすが牧羊犬である。雌のシエルティーを選んで本当に良かったと思った。
いまでは、息子と愛犬コロは、大の仲良しである。散歩でないときは、ガラス越しにテラスで息子と愛犬コロは会話をかわしている。私は、息子の世話を愛犬コロにまかせて、その他の業務をコツコツと行っているのである。
つづく。
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