2014年10月16日

きみたかあーなかれ

 昔、一億総白痴化という言葉がはやった。
 大宅壮一が
「テレビばかり見ていると、人間が白痴になってしまう」
といったのだ。

 その意見に、私は半分だけ賛成する。
 だから私は、ほとんどテレビを見ない。

 ただし、私がテレビを見ないのは、大宅壮一が正しいと思って見ないのでは無い。逆である。大宅壮一と真逆の意味でテレビを見ないのだ。大宅壮一が、一億総白痴化を言い出した原因は、テレビを低俗なものと決めつけたからである。よーするに馬鹿馬鹿しい内容のバラエティ批判から始まっているのだ。あまりにも低俗であると。

 しかし、私は、低俗なバラエティを支持する。低俗と批判されるバラエティが、ストレス解消になり、人間の健康によいとされるからだ。同じ理由でドラマも支持する。感動的なドラマによって流される涙には、長寿の効果があることは医学的に証明されている。だからテレビは素晴らしいとも言える。

 では、なぜ大宅壮一の一億総白痴化に半分だけ賛成しているかというと、テレビは、ニュース番組・ワイドショーの偏向報道によって世論を操作する危険性があるからだ。松本サリン事件をみれば、よくわかると思う。テレビの先走った報道によって、一億総白痴化がおきて、無実の人をバッシングしてしまっている。こういうことは、昔からよくあった。だから私は、テレビを見ないし新聞もよまない。

 しかし、バラエティは大好きだし、ドラマもアニメもよく見る。といってもリアルタイムで見ることは無い。全て録画して後日見る。そのためにBlu-rayデッキを5台用意している。なんでも録画する。スカイパーフェクトテレビに加入しているので1日に60時間録画することもある。ドラマの場合には面白いモノは、最終回までみるし、つまらないものは、2回くらいで切っちゃう。もちろんコマーシャルは全部飛ばす。これは貴重な作品だと思ったらハードデスクに永久保存する。なのでドキュメンタリーだけで五千タイトルくらいもっている。ドラマも合わせれば、もっとすごいことになる。

 前置きは、ここまでとして本題にはいる。

 1歳6ヶ月になる息子が、最近、おかしな言葉を口走るようになってきた。意味が分からない言葉である。こういう事はかってなかった。どんな赤ちゃん語でも、ある程度は理解できたのだ。しかし、最近の息子の言葉ときたら全く理解できない。

 といってもデタラメを話しているわけではなさそうだ。意味のある言葉をしゃべっているらしい。何故ならば、同じ単語を繰り返しているからである。ただし、その単語は、すごく長い単語なのである。ある日、こんな事を言っていたことがあった。

「きみたかあーなかれ」
「きみたかあーなかれ」
「きみたかあーなかれ」

 全く意味が分からない。いつも、この調子なのであるが、その日だけは、思い当たることがあった。この「きみたかあーなかれ」を話す直前まで、テレビを見ていたのだった。「もしや」と思って、息子が見ていたテレビ番組を巻き戻して、最初からみてみた。

 前置きでも書いたが、私は全てのチャンネルの主な番組を録画している。息子の見る番組も全て録画してあるのだ。だから息子が、どんな番組のどの部分に影響されたか、番組を再生して調べることができる。で、調べてみて驚いた。息子が好んでみていた番組は、NHK教育テレビの『にほんごであそぼ』という番組で、日本語の名文句を述べながら次々と画像が変わっていく番組だった。そして、その日のテーマは、与謝野晶子の

「君死にたまふことなかれ」

だった。与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を延々と述べる番組で、意味を解説するわけでもないし、文学論を述べるわけでも無い。ただひたすらに「君死にたまふことなかれ」という日本語で、遊んでいるだけである。つまり、番組タイトルの『にほんごであそぼ』そのものであった。



それをジッと見ていた息子が、「君死にたまふことなかれ」をきちんと発音できなくて「きみたかあーなかれ」と話していたらしいことに気が付いた。

 ちなみにNHK教育テレビでは、午前中に3時間程度の幼児番組を放送している。息子は、それら全てを見るのが日課になっているのだが、どんな番組に、どんな影響を受けるか興味が湧いたので、1日中、観察してみた。幼児番組は、朝6時45分の「にほんごであそぼ」から始まって、9時半まで3時間近く14番組もある。並べてみると

にほんごであそぼ
キッチン戦隊クックルン
シャキーン!
アニメ はなかっぱ
デザインあ
ピタゴラスイッチミニ
フックブックロー
みいつけた!
おかあさんといっしょ
パッコロリン
いないいないばあっ!
えいごであそぼ
てれび絵本
銀河銭湯パンタくん
考えるカラス

となるが、NHK教育テレビは、幼児番組の宝庫であることに気づいた。で、全ての番組が素晴らしい作品の質をたもっている。特に、

にほんごであそぼ
デザインあ
ピタゴラスイッチミニ
フックブックロー
みいつけた!
てれび絵本
考えるカラス


は、大人が見ても充分に面白いし、内容もかなり高度である。そして1歳6ヶ月の息子を番組の虜にしてしまう何かがある。息子は、体操もするし歌も一緒に歌うくらいだから、NHK教育テレビが子供に与える影響ははかりしれない。現に、うちの息子は、一日中、「君死にたまふことなかれ」を叫んでいたのである。

 それにしても「君死にたまふことなかれ」は、どうにかならないか? どうせ日本語で遊ぶなら、百人一首か、論語にしてはどうだろうか? 四文字熟語で遊べないものか? 格言で遊べないものか? 挨拶で遊べないものか? 敬語で遊べないものか? NHK教育テレビも、せっかく良い番組を作っているのだから、宮沢賢治や与謝野晶子だけでなく、もっと漢文・古文・熟語で遊べないものだろうか? 少し惜しい気がする。


つづく。

↓ブログ更新を読みたい方は投票を

人気blogランキング






posted by マネージャー at 23:36| Comment(4) | TrackBack(0) | グンマーで嫁が出産と育児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする