2015年04月26日

バイクでやってくるお客さん 2

 その昔、モンキーバイクで日本一周をしたという友人がいた。モンキーバイクでなんだろう?と思ってインターネット検索してみたたら、小さい小さい。子供用の3輪車のように小さい。こんな小さなバイクで、よく日本1周をしたものだ。どうりで、うちの宿にモンキーバイクでやってきたお客さんがいないわけである。これで北軽井沢の山に登ってくるのは、至難の業であろう。

 ちなみに彼はその後、何を思ったのかヘリコプターのパイロットになりたくなって、数年間佐川急便で働いて、 1,000万くらい貯金をして、アメリカで免許を取った。そして、うちの宿で何年か働いて、最終的にはプロの自然ガイドになったはいいが、東北大震災の時に救援に行っているうちに、何故か嫁さんをもらっていまはトヨタ系列のところでガイドをやっている。で、ついこの間、南極に行くための相談をしに来た。モンキーバイクから、ヘリコプター、自然ガイド、南極越冬隊とは、かなり目まぐるしい人生だが、バイクに乗る人たちは、ちょっと常識を超えた人生を送っている人たちが少なからずいる。ライダーという人種は、エスカレーター的な生き方が苦手なのかもしれない。

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 あと、これはうちのお客さんに限ったことかもしれないが、いろいろ話を交わしてみると、ライダーさんの何割かは、バイクレースに熱中した過去があるみたいなのだ。レースといっても、鈴鹿サーキットみたいな本格的なレースではなく、話の内容からしてかなりアマチュアっぽいレースである。彼らは「草レース」と呼んでいたが、破損や改造のために、かなりの金額をバイクにつぎ込んでいたらしい。かと思うと、バイクを何台か持っている人もいる。うちの宿に来るたびにバイクが変わっているために、買い換えているのかなぁと思っていたら、複数のバイクを持っていて日替わりで違うバイクを運転するのだそうだ。これではいくら金があっても金はたまらないだろう。

 そうかと思うと、バイクを単なる移動の手段と割り切って使う人もいる。そういう人は、原付バイクや、小型のスクーターに乗ってやってくる。特徴としては、長い距離を走らない傾向にある。 100キロぐらい走って宿に泊まるのだ。私は若い頃に、ママチャリで200キロぐらい走って公園に野宿したものだが、その半分の距離で宿に泊まるわけだから、もともと動きたくない人たちなのかもしれない。

 また、キャンプ場を転々と移動しているライダーもいる。これは、ライダーなのか?キャンパーなのか?どっちが本業なのか?よくわからない人たちだ。さらによくわからないのは、石垣島とか西表島なんかにいるライダーたちである。キャンプ場にテントを張って何週間もそこで生活をするのだが、彼らがバイクを走らせている話を聞いたことがない。そもそも小さな離島にバイクが必要なのだろうかと思ってしまう。信じがたいのは、そのキャンプ場のテントに郵便物が届くことである。しかも彼らのテントに、時たま差し入れが入ることがある。よく聞いてみると、テント生活の先輩からの差し入れということらしい。といっても誰とも面識はないらしい。はっきり言って赤の他人からの差し入れである。それはともかく、その先輩は、地元の農家の娘と結婚して、農業をやっているらしいのだが、要するに農業のアルバイトしないか?という探りみたいなものだったのかもしれない。あるいは、新手のお婿さん探しだったのかもしれない。

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 あと、やたらと温泉好きなライダーというのもいる。無料天然露天風呂なんかに行くと、なぜかバイクがあって、ライダーたちが温泉につかっているということがよくある。宿屋の業界では、温泉ライダーと呼んでいる。温泉に命をかけているライダーなのだが、当然のことながらオフロードバイクに乗っている。そして天然温泉のありかを嗅ぎつけると、どんな山奥でも入っていく人たちだ。彼らは、バイク好きというより、温泉好きなのだろう。林道によっては、車が入っていけないところもあるので、故にオフロードバイクなのだ。嬬恋村にも、そういう秘湯がいくつかあって、立ち入り禁止もなんのそので入っていくのである。もちろん危険なので、どんなに頼まれても絶対教えないのだが、どこからか情報を得て入りに行くのである。彼らはどんな情報網を持っているのだろうか?

 レトロバイクマニアというのもいる。例えば1980年代のホンダのバイクしか乗らないと言う人である。しかもそのバイクで草レースに出たりする。当然のことながら勝てない。私はよくわからないのだが、バイクは性能の進化が激しいらしく、 1980年代のバイクだと蝶々と燕ほどのスピードの差が出るらしい。だからレースには勝てないのだが、 1980年頃のバイクで走るのに意味を見つけているらしい。もちろん宿にも、そのバイクでやってくるが、古いバイクなので、燃費も悪い上に、よく故障するらしい。しかしそれがいいのだそうだ。私にはよくわからない趣味である。

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 わからない趣味といえば、ライダーたちが、エンジンを動かしてエンジン音に感激している姿である。私には、すべて同じエンジン音に聞こえるのだが、実はそうではないらしい。ライダーさんたちにとっては、エンジンの音というものが非常に重要なポイントなのだそうだ。

 話は変わるが、定年退職してからバイクに乗り出したと言うお父さんもいる。 60の手習いである。若いうちは、奥さんに反対されてバイクに乗れなかったらしい。しかし定年退職したら奥さんの許可がおりたらしい。奥さん的には、息子さん娘さんが社会に出たので、もういつ旦那が死んでも良いと思ったのか? 女性の一般的な目からすると、バイクに乗るという行為は、かなり危険だと思われているらしい。まぁ車よりは危険なのだろうが、はっきり言って運転する人の心がけの方が大きい。安全運転ならば、バイクだろうがスポーツカーだろうが危険はないと思うがどうだろう?どんなに安全な乗り物でも、運転する側の心がけが悪ければ、そっちの方がよほど危険だと思うのだが。暴走族はともかくとして、一般的にライダーの人たちは、メカに詳しく、バイクの整備もマニアックに行うので、むしろ彼らはその辺のドライバーよりも、よほど安全に運転しているような気がする。

 ちなみに嬬恋村は、日本で最初にバイクレースを行っている。その時は、地元民もヤマハ派とホンダ派で別れて、すごく殺気だっていったらしい。結果として、ヤマハがホンダを打ち任した。勝利したヤマハの社長は、すっかりいい気分になって、嬬恋村を気に入った。そして、静岡県に「つまごい」という名を持ってきて、ヤマハリゾートつま恋を作った。そして、つま恋コンサートを開いている。敗れたホンダは、臥薪嘗胆でマン島レースに出て優勝し、世界のホンダとなった。勝利したヤマハが、バイク業界で今ひとつなのは皮肉といえば皮肉である。そういう意味で、ホンダは勝負に負けて大きなものをつかんでいる。最近は、 2足歩行のロボットから、ジェット機まで生産しているのだからすごいと思う。

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つづく。

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posted by マネージャー at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 業界裏話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする