今年の連休は、カレンダーが良かったためか? 天気が良かったためなのか? 4月末から、ほぼ満室記録が続いた。こういう状態だと私たちは死にそうになるのだが、そうでもなかった。原因ははっきりしている。夕食の摂取率が半分以下におちていたからである。夕食をつくるのが重労働であるために、宿屋としては楽なので非常にありがたい展開なのだが、夕食をとらない御客様は、リピートもしないので、痛し痒しというところだ。
前置きは、このくらいにして本題に入る。
ゴールデンウィークの中盤のことである。5月1日の夕方17時頃に飛び込みの御客様がやってきた。その日は、ほぼ満室であったが、奇跡的に1ベットだけ空いていた。大急ぎでベットメイクして受け入れた。夕食も希望されたが、それも間に合った。この日は、6人しか夕食を食べる人がいなかったので、余裕があったので、なんとかなったのだ。
で、飛び込みの御客様であるが、驚くことに荷物を持っていなかった。財布と携帯ぐらいしか持っていなかった。チャリダーであった。身体にピッタリひっつくような自転車用のウエアで来ていた。その御客様は、チェックインしたあとに自転車でコンビニに生活のために必要な物を買い物に行った。言っておくが、うちの宿は、自慢じゃないがアメニティは完備している。空荷できても泊まれる宿なのだ。にもかかわらずコンビニ行ってしまわけた。本当に何も持っていなかったのだ。
もちろん食事の後の星空温泉ツアーにも参加した。その時に、おそるおそる聞いてみた。
「どんな旅をしてるんですか?」
「自転車です」
「東京からですか?」
「長野原草津口まで電車を使ってやってきました。それから自転車で草津に行き、志賀高原の渋峠に行ってきました」
「渋峠?!」
私は、若い頃に自転車で全国を回ったことがあるし、大型台風の中、ママチャリで東海道五十三次を3日で走ったこともある。だから大抵のことには驚かない。その私が渋峠と聞いて驚いた。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええ? 渋峠? まだ雪でしょう?」
「雪の壁を見たくて、ふらりと旅に出たんです」
「壁はありましたか?」
「ありました」
「・・・・」
「で、日帰りで帰えろうかと思ったのですが、天気が良かったので、パノラマライン北ルートを回って、鳥井峠から、パノラマライン南ルートを回ったんです」
「はあああああああああああああああああああああああああああ?」
「で、力尽きたときに、北軽井沢ブルーベリーYGHの看板を見つけました」
「・・・・」
どうりで何も宿泊セットを持ってなかったわけである。彼は、日帰りのつもりで、渋峠まで登って、パノラマライン全ルートを走って、軽井沢駅に向かうつもりだったのだ。しかし力尽きたらしい。たまたま北軽井沢ブルーベリーYGHが空いていたけれど、もし満室だったらどうしたのだろうか? 恐ろしい。
こんな事を、インターネットに書いていて申し訳ないのだが、もし私が、ネットで以上の書き込みを見ても信じないかもしれない。ありえない苦行だからだ。2ちゃんねるならネタ扱いされるだろう。けれど、事実は小説より奇なり。事実は2ちゃんねるより奇なり。世の中には科学で割り切れない事がたくさんある。いかも彼は、かなり無口で私が聞き出さなければ、何も語らなかった可能性が高いのだ。
私は久々にサムライを見た気がした。
彼を自転車サムライと呼びたい。
で、思ったのだが、今後、こういうサムライが現れたら、記念品を差し上げようかと考えている。金は高いので、純銀のバッチとか、鉄人湯飲みとか、超人手形とか、何か良いアイデアはないだろうか?
つづく。
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