前回、日本一子育てがしやすい嬬恋村という記事を書いたら反響が大きかったので、勘違いをされても困るので続編を書くことにしました。
実は嬬恋村は、もともとは裕福な村ではありません。今から10年前は、超赤字の自治体で、夕張市とどっこいどっこいの村でした。かなり、ヤバい自治体だったんですよ。
嬬恋村は、幼稚園保育所小学校中学校の給食が無料だし、小中学校で教材等して使われる購入費も大半が無料に成っています。また、中学生の英検受験料が、年5,000円まで補助が出ますし、幼稚園保育園の保育料も無料です。また、嬬恋村では子供が生まれると、第一子・第二子に5万円のプレゼント。第三子に10万円。第四子からは15万円も支給されます。こういう地方自治体は、日本中探しても、嬬恋村しかないかもしれません。
でも、最初から、こういう村だったわけではないんですね。 10年以上前は、すごい赤字を抱えていて、村長以下、役場の役職ある立場の人たちも、給料を返上するような事態まで陥っていたんです。昔は、子育てに優しくするどころではなかったんです。どうしてそういうことになったかというと、当時は、 12年も続く革新系の村長だったために、やたらとばらまきをやっていて、村の財政が極端に悪化していたんです。
その象徴ともいえるのが、幼稚園の統合問題で、新しい箱物(新しい幼稚園)を作って、財政をかなり悪化させた事件がありました。これがきっかけで、リコール運動というか、財政改革を訴えている新しい村長(保守系)を支援する動きがあって、新しい村長が誕生したのです。
面白いのは、12年も続いた革新系村長をやめさせるために先頭きって動いたのが、村の中学校の校長先生も務めたこともある、思想的に左側だった人でした。左側の人が、左側の村長を追い詰めたのです。ようするに、こういうことに、右も左も関係ないんですよね。
ちなみに私はこの人から、嬬恋村の歴史や、地質学を学んでいますから、かなりお世話になっています。それだけにこの先生のことをよく知っていますが、自腹を切って、新聞の折り込みチラシに、村長のばらまき財政を止めさせる訴えの自腹の広告を何度も出していました。もちろん私も、お手伝いしています。
まぁそういうことがあって、今度は保守系の村長が誕生したわけですが、新しい村長は、行政改革を熱心に行いました。そして10年ぐらいで村の財政は良くなってきて、お金も余ってきたので何十ヘクタールと言う国有地を買い取って、道の駅でも作ろうかというところまでなったのです。
しかし、議会では、それよりも子育て支援をした方がいいんじゃないかという話になって、子育てに多額の予算が使われることになったんですね。なぜそういうことを私が知っているかというと、私自身が観光協会の役員をやっていて、その役員仲間に村会議員や、商工会の役員や、色々な役員さんがいるからなんですね。もちろん私の師匠筋にあたる、地元の元校長先生のブレーンの人たちからの情報もあります。
まぁそんな話はどうでもいいんですが、ここで重要な事は、子育て支援のための予算は、どっかから沸いて出てきたお金では無いということです。嬬恋村という小さな地方自治体が、一生懸命行政改革を行ってきた結果なんですよね。
その行政改革は、ちょっとやり過ぎじゃないかと思うことも多々ありました。もう少し観光に予算を増やしてくれればよかったのにとか、何も嬬恋村郷土資料館の館長を辞めさせることも無いのではないかとか、思っていました。もちろん思っているだけで、私自身は黙っていましたけれど。
しかし、そういう努力が実ったからこそ、子育て支援をするための予算的なバックグラウンドができたのではないか?と私は考えています。こういったお金は、どこから湧いてくるのではなくて、いろいろなところを切りつめないと、出てこないんですよね。要は、いかに無駄をなくすかですよ。
でも、自然災害に対する対策は、切り詰めては駄目なんです。安全のための資金は絶対に減らせない。前村長が、負けたのは、村の災害積立金にまで手をつけて、ばらまこうとしたからです。だから村民が怒った。嬬恋村は、何度か川が氾濫して橋が流されている。それの対策として、災害積立金を200億位をプールしていたけれど、それを使ってばらまこうとした。それに村民が怒ったんですよね。そういう失敗を前の村長はしている。
そういう意味では、以前の革新系村長は、いろいろな大失敗をしていると思います。ばらまき財政の原因を作った以前の村長が行った最大の失敗は、幼稚園の統合から始めたことです。そして新幼稚園という箱物を作ってしまった。
幼稚園の統合ではなくて、小学校の統合から始めれば良かったんですよね。そうすると、いくつかの小学校が余るわけです。その余った小学校を、幼稚園として施設を利用すれば、大きな箱物作る必要はなかったわけです。余計なお金がかからなかったはずなんですよね。
それを反省したのか、どうなのかわかりませんが。村長が変わってから役場がやった事は、小学校の統合を最初にした事です。小学校の統合で、いくつかの小学校が余ります。そのうちの1つを、幼稚園の施設として、再利用したわけです。
もちろん元々は小学校ですから、幼稚園としては大きすぎます。その大きすぎる利点を利用して、幼稚園と保育園を統合してこども園にしたわけです。そして巨大なグランド(野外運動場)を2つに分割して、半分を駐車場に、半分を巨大なドックランみたいなものにして、そこで幼稚園児保育園児を遊ばせるわけです。まぁよく考えたと思いますね。
こうやって予算を節約していき、その結果、給食が無料、教材購入費が無料、英検受験料が年5,000円まで補助。幼稚園保育園の保育料が無料。第一子・第二子に5万円のプレゼント。第三子に10万円。第四子からは15万円。ということになったんだと思います。村長・議員・役場の三つが、無い知恵を絞って出した結果なんだと思います。
ちなみに私は1人の一般的な村民なので、以上の認識に誤りがあったら申し訳ありません。私の知ってる範囲で書いてみました。ひょっとしたら、このほかにも、いろいろな要因があったのかもしれません。
それはともかくとして、嬬恋村がここまで変化すると、若い人たちが浅間高原に移住してこようと思う人たちは、長野原町や軽井沢町ではなくて、嬬恋村を選ぶようになるかもしれませんね。だって、これだけ手厚い自治体は、よそにはなかなかないかもしれませんから。長野原町や軽井沢町も、真似しにくいだろうなぁ。
ただし、嬬恋村にも問題点は残っています。それは職業です。働き口が少ないんですね。今後は、どうやって就職先を増やすか?というところが、重要になってきますね。まだ余ってる小学校を利用して、私立学校を誘致するとか、工場かなにかを誘致するとか、何か対策を立てないと、せっかく、子育てのために充実した制度も、あまり使われないということになるかもしれませんから。私が嬬恋村に移住してきた時は、12000人いた人口も、いまは、たったの9000人台です。なんとかしないとねえ。
つづく。
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