2016年04月16日

大河ドラマ「真田丸」を地元から語ってみる 12

 やっと真田丸14話の録画を見ることができました。14話は、と第一次上田合戦の続きを放送するんだと思っていたら、後半戦の戦いを全部カットしてあったのに仰天してしまいました。あのドラマを見た視聴者は、徳川軍が上田城を攻撃しようとして失敗して、それで終わってしまったのだと勘違いしてしまいますね。

 実は違うんです。

 第一次上田合戦は、この後が重要なんです。徳川軍は、上田城を攻略するのに失敗した後に、もっと小さな丸子城を攻めるのですが、そうはさせないと真田昌幸は、徳川軍の邪魔をします。そうこうしているうちに、上杉景勝が援軍にやってきてピンチになります。慌てた徳川家康は、さらに大規模な援軍を送りますが、戦わずに佐久方面に撤退します。この間4ヶ月。 4カ月間も、両者は戦ったりにらみあったりしているわけです。

 もちろん豊臣秀吉も黙って見てはいません。
 いろいろと工作をします。

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 大河ドラマの方では、徳川の人質となっている真田信尹(真田昌幸の弟)が、徳川家康の家老である石川数正が、家康を裏切って豊臣秀吉に仕えるように工作したことになっていますが、実は違います。これは秀吉の差し金なんです。秀吉が、石川数正の裏切りを画策したのです。そして、裏口から真田昌幸を助けたんです。で、真田昌幸に
「小笠原貞慶と、よく相談して失敗のないように、うまくやり過ごしなさい」
と言う手紙を送っているんです。

 この手紙をもらった真田昌幸は「? 」と、頭をひねったことでしょう。小笠原貞慶は、徳川方なんですよ。変だなぁと思ったと思います。しかし、その1ヶ月後に大変なことが起きます。徳川の家老である石川数正が、秀吉側に寝返たんです。で、石川数正の軍勢の中には、小笠原貞慶の人質もいたんです。つまり、石川数正が、秀吉側に寝返ることによって、小笠原貞慶も一緒に寝返ることになったわけです。

 この事件は、徳川を揺るがす大事件となりました。
 ここが、 14話の最大のポイントです。
 これによって、前提条件が、すべてひっくり返ったわけです。


 石川数正の寝返りによって、徳川の軍事情報が
 すべて秀吉に筒抜けになってしまったからです。
 真田征伐しているどころではなくなってしまったんです。
 そこで、徳川は全軍を撤退させます。
 そして、軍事体制を一新させるわけです。

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 暗号とかを変更したり、
 情報機関をすべて変更したり、
 戦術を大幅に変更したり、
 影武者を一新させたり、
 城の構造を変更させたり、
 何から何まで変更しなければならなくなったんですね。

 実は徳川軍というのは、今川義元の弟子みたいな軍事体制なんですね。徳川家康は、今川義元を手本にしていたんです。もっとはっきり言うと、今川義元の師匠と徳川家康の師匠は同一人物なんです。太原雪斎と言う和尚さんが師匠なんです。若い頃、徳川家康は今川家の人質で、静岡県の駿府で青春時代を送っています。徳川家康は、青春時代に過ごした駿府が、よほど気に入っていたらしく、晩年もここで暮らしています。駿府に、甘酸っぱい思い出があったんでしょうかね。この駿府で、太原雪斎から学問を学び、それが基本となって徳川軍の軍事制度を作っています。

 これが石川数正の寝返りによって、
 徳川の軍事情報がすべて秀吉に筒抜けになってしまった。
 ここが重要なんです。

 困った徳川家康は、軍事制度を大幅に変更しなければならない。で、藁をもすがるように飛びついたのが、武田信玄の軍事制度です。

 で、それに1番詳しい奴がいたんですよ。
 うまい具合に、いちばん詳しい奴がいた。
 それは、真田昌幸と真田信尹なんです。

 この2人は、武田信玄のもとで、優秀な官僚として大いに活躍しているからです。残念ながら真田昌幸とは、今は敵対していますが、真田信尹なら人質として徳川家にいる。彼を家臣に加えれば、武田信玄の軍事制度を短期間で学べます。できれば、真田昌幸とも戦争をやめて仲良くなり、彼も取り込みたいと、家康は考えたはずです。

 ここから先は、まだ大河ドラマで放送されていませんが、
 ちょっとネタバレを言います。
 真田昌幸は、結果として家康の配下につくんです

 嫌々ながらでしょうが、豊臣秀吉の命令で、徳川家康の配下になるんです。おそらく、家康が秀吉のところに上洛するにあたって、色々と根回しをしていたんだと思います。秀吉に「真田をくれ、そしたら秀吉の家来になる」と。真田昌幸にしてみたら、秀吉に臣従したつもりが、その秀吉の命令で家康の配下にされてしまうわけですから、内心複雑だったと思います。

 で、家康のすごいところは、真田昌幸の長男である真田信幸に、政略結婚で本田忠勝(藤岡弘)の娘を結婚させているところです。そこまでして、武田信玄の軍事システムを手に入れないと、やばかったです。情報が筒抜けとなった今、秀吉相手に、小牧長久手の戦いのような戦いは通用しないですから、次はあっという間に、秀吉にやられちゃうかもしれない。それを防ぐためには、武田信玄の軍事システムが、どうしても必要なんです。

 この辺が分からないと「真田丸」14話が見えてこない。
 もちろん15話以降の話も見えてこない。

 私がシナリオライターなら、そこを重点的に書いていたはずです。石川数正の寝返りは、それほどの大事件だったんです。皆殺しにするつもりの真田昌幸を、逆に味方に取り込まなければいけない位の情勢の変化があったんですね。

 それ以前は、何とかして北条氏と同盟を結んで、秀吉に対抗しようとしてたんです。だから真田昌幸に、沼田城を北条氏に渡せと言って、第一次上田合戦が起きてしまった。しかし、石川数正の寝返りによって、それどころではなくなった。北条氏と同盟を結んで秀吉に対抗しても、勝てる見込みがなくなってしまったわけです。おまけに、第一次上田合戦によって、徳川の軍事システムよりも、武田信玄の軍事システムの方が優れていることが分かってしまった

 だから、家康は頭を切り替えたんです。
 つまり家康は、かなり頭の切れる男だった。
 逆に真田昌幸にしてみたら、
「天地は複雑怪奇なる新情勢を生じたので」
 と思ったでしょうね。

つづく。

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posted by マネージャー at 07:07| Comment(4) | TrackBack(0) | 真田丸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする