2016年07月23日

動物園の象と三歳の息子

 熊本の大地震で、動物園のライオンが脱走したと言うデマを流して逮捕された人がいましたね。

 第2次世界大戦中の日本で、上野動物園の動物たちがたくさん毒殺された事件がありました。アメリカ軍の空襲によって、猛獣が脱走して人々に危害を加えないためです。多くの動物たちが毒殺されたわけですが、ただゾウだけは、毒入りの餌を一切食べなかったと言います。当然のことながらゾウたちは日に日に飢えていきます。すると餌を貰うために、必死になって芸を始めるんですね。餌欲しさに、いろんな芸をしてみせるわけです。それをゾウの飼育員さん達は、涙を流して見守ったと言います。

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 話は変わりますが、夏本番になって、うちの宿もお客さんが大勢押し寄せるようになってきました。当然のことながら、私たちは 3歳になる息子と一緒に遊ぶことができません。遊ぶどころか、構うことさえもできません。かといって、子供を嫌がるお客さんも少なからずいるので、お客さんの前に出すわけにもいかず、 1日中、奥の部屋に閉じ込めてしまうことが多いのです。親としてはとても不憫ではありますが、宿屋をやっている以上、仕方のない事でもあります。毎日20人近くの食事を作る訳ですから、とてもではありませんが子供にかまっていられるわけがありません。

 しかし、息子は3歳になったばかりです。

 1日中、家の中に閉じ込められてしまったら、退屈するのは当然ともいえます。最初は、教育テレビを見ていたり、ジグソーパズルをやって遊んだり、日本地図や世界地図のパズルをやって遊んだりしているのですが、それでも寂しさに耐えかねて、親のところにやって来ます。ところが、私たちは包丁を持って料理を作っているので危険でしょうがない。なので、子供部屋に追い返すのですが、 3歳の息子は寂しそうに泣きながら戻っていきます。 

 けれど、少しでも親の顔を見たいのか、厨房と隣接しているトイレの中に入って、大きな声で数字を読みあげたり、漢字を読みあげたりします。実はうちのトイレのなかには、数字のポスターや小学1年生の漢字のポスターが貼ってあるんです。それを大声で読み上げていくわけです。暇なときならば、「すごいなぁ」と褒めてあげるんですが、それを期待して読んでるんでしょうね。

 かまってほしいんでしょう。

 しかし料理で忙しいために、無視するしかありません。そうすると、息子はますます大声で漢字のポスターを読み上げます。まるで第二次世界大戦中の上野動物園のゾウたちが、飢えに苦しみながら必死になって飼育員さんに芸を見せている姿にだぶって見えてきます。

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 親としては、非常に切ない思いではありますが、無視するしかありません。そもそもそれどころではないからです。お客さんを相手に、夕食を作るために、毎日が戦争状態なので、かわいそうだけれどかまってあげることができない。

 もちろん、保育所に連れて行くという選択肢もありますが、それにも限界があります。土日は休みだし、連れて行けば連れて帰らなければならない。しかも、保育所の先生からいろいろな申し送りがあったり、預けるにしてもかなりの準備がいるので、そんな暇は無いんですね。保育所というのは、もう少し便利なものかと思っていましたが、実はそうでもないんです。子供にとっては、とても大切な場所ではありますが、いろいろとこまごました準備が必要なので、それに時間がとられてしまうんです。

 なのでどうしても、この夏は息子を家に閉じ込めてしまうことが多くなってしまうんですが、そんな息子の精一杯の訴えが、トイレに貼ってある数字や漢字のポスターを読み上げることなんですね。上野動物園のゾウたちが、飢えに苦しみながら必死になって飼育員さんに芸を見せているごとく、一生懸命、親たちに自分の芸を見せているようにも見えます。

 長い前置きはこれくらいにして本題に入りたいと思います。

 私は息子が2歳になる前に、ひらがなとカタカナとアラビア数字を覚えさせました。だいたいどれも2週間ぐらいで覚えてしまいました。というか、むしろ2歳ぐらいの方が、 3歳の頃よりも覚えるのは早いようです。年が若ければ若いほど、覚えるのが早いようです。すぐ忘れますけどね。まあそんな事はどうでもいいとして、私は、ひらがなとカタカナとアラビア数字を覚えると、絵本が読めるようになるかと思ったんですが、これが全くダメでした。

 ひらがなを覚えても、絵本は読めないんです。
 今にして思えば、当然と言えば当然なんですけれど。
 しかし、どういうわけか当時の私にはわからなかった。

 ひらがなを覚えても、絵本が読めるわけがないんですよね。
 abc が読めても英語の本が読めるわけでは無い。
 もちろん発音することはできるけれど、読書はできない。
 なぜならば、単語を全く知らないからです。

 だから2歳の子供にひらがなやカタカナを教えるのは、あまり意味のあることではなかったのです。むしろ日常で使う単語を憶えさせた方が、よほどよかったのです。というのも、知ってる単語が出てくる絵本は2歳の息子にも読めたからです。

 ひらがなを覚えさすときに、積み木を使っていました。表に消防車の絵があって、裏に「し」がある積み木で「し」を覚えさせると消防車の単語を知っているから消防車が出てくる絵本なら読めるんです。つまり消防車という単語なんかをたくさん教える方が、よほど読書力がつくんですよね。

 つまり読書力というのは、単語力であって、
 語彙の幅広が絵本を読む力なんですね。
 決して『ひらがな』だけで読んでるわけではない。

 それに気がついた私は、息子の語彙を増やすことにしました。手始めに、息子の大好きなジグソーパズルを大量に買い与え、毎日ジグソーパズルを一緒にやったんです。幼児用のジグソーパズルには、いろんな動物があったり、自動車があったり、魚があったりします。ジグソーパズルをやりながら、動物の名前や、魚の名前や、自動車の名前を覚えさせたわけです。ジグソーパズルのなかには日本地図のパズルもあったし、世界地図のパズルもありました。

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 で、息子が1番熱中したのが日本地図のパズルです。
 47都道府県の漢字もだいたい読めるようになってきました。

 すると、面白いことに息子の生活が一変してしまったんです。まずEテレを見なくなって、すぐチャンネルを変えるようになってきたんです。そしてニュースをじーっと見るようになってきて、新潟県と言う単語がアナウンサーから出てくると、「新潟県!」と何度も絶叫するようになってきたんです。明らかに、それまでと違う世界が見えて来たようです。 47都道府県の単語をマスターすることによって、息子なりに世界が広まったんでしょうね。やはり、読書力というのは、単語力なんですね。

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 逆に言うと、息子に会話力が今一つ足りないのは、単語力が足りないせいなのかもしれません。幼児の女の子が、男の子よりも早く会話能力に目覚めるのは、それだけ単語力が早く身に付いているためかもしれませんね。

 それはともかく、息子の語彙を広めるために、 3歳の誕生日の頃から漢字を教えることにしました。絵本には漢字がほとんど使われてないにもかかわらず、どうして漢字を教える気になったかというと、これは非常に単純な話で、そっちの方が覚えやすいからです。

 例えば『しょうぼうしゃ』よりも『消防車』の方が息子にとっては圧倒的に覚えやすいんですよね。あと、どうせ覚えさすなら『しょうぼうしゃ』と『消防車』を同時に覚えさせた方が能率的なんです。どっちにしろ語彙を広めるのが目的なので覚えやすい方を使った方が便利なんです。

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 第一、そっちの方が息子のほうも喜ぶんです。興奮するんです。いつだったか、靴下・靴・長靴の3つの単語を同時に教えたら、すごく興奮していました。それまで息子にとっては
『くつした』と
『くつ』と
『ながぐつ』は、全く別の存在だったんだと思います。それが、靴下・靴・長靴の3つの漢字カードを並べてみることによって、何か1つの法則性を発見したようで興奮がしばらく収まらなかったみたいなんです。 3歳児にとって、漢字というのはそれほど衝撃的なものだったようです。おそらく息子にとって、新しい世界が見えてきたんだと思います。最近は、幼稚園・動物園・遊園地の中にも法則性を見つけて興奮していました。いろんなところに法則性があることに少しずつ気づいてきたようです。ほんとうなら、そのたびに大げさに誉めてあげればいいのですが、残念ながら今は忙しいので、あと40日間くらいは、放置しなければいけないのがちょっとつらいところですね。


つづく。

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posted by マネージャー at 15:24| Comment(4) | TrackBack(0) | グンマーで嫁が出産と育児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする