私は昭和36年生まれですが、私の世代になると、近所に軍隊経験者が大勢いました。近所の駄菓子屋の親父が、空母瑞鶴の乗員で、50円の安いプラモデルを買うと、その親父が戦争体験を語ってくれたものです。例えば、空母瑞鶴の廊下は、どのくらい狭いとか、寝るときはどうやるとか、私物はどこに置くとか、どんな料理がでて、その料理が出ると何曜日になるとか・・・実際の軍隊経験でないと分からないことを教えてもらうわけですが、これが実におもしろい。なので、その親父の話を聞きたいために、いくら金を巻き上げられたことか。
軍隊経験者は学校にもいました。特攻隊あがりの先生でしたが、この先生もおもしろい。爆弾を川に投げて魚を捕った話とか、飛行機内では小便を漏らし放題で、誰の落下傘も真っ黄色だったとか、上空では飛行めがね(サングラス)がないと目が見えないとか、戦記物とかミリタリーに書いてないこと。つまり経験者で無いと分からないことを話してくれる。で、不思議なことに、みんな面白可笑しく話してくれる。そういう人たちに囲まれて育ってしまうと、こっちも相当な戦争知識が、積みかさなって来る。
ここからが本題です。
昭和49年、『宇宙戦艦ヤマト』がテレビ放映されました。裏番組が、アルプスの少女ハイジだったので、『宇宙戦艦ヤマト』は、まったく視聴率がとれなかった。この『宇宙戦艦ヤマト』がブームになるのは、数年後に再放送されてからであり、昭和49年当時は、話題にもならなかった。しかし、ごく少数の人間が、この『宇宙戦艦ヤマト』に熱狂した。第1話に熱狂した。
『宇宙戦艦ヤマト』の第一話は、冥王星で、地球連邦軍とガミラス艦隊が、艦隊決戦を行い地球連邦軍が2隻を除いて全滅するのですが、残った2隻のうちの1隻が『雪風』なんですよ。『雪風』といえば、旧海軍軍人なら知らぬ者はいない。『戦艦・大和』より『駆逐艦・雪風』の方が圧倒的に有名であり、スターなんです。
『雪風』に比べたら『大和』なんか下っ端も下っ端。大和の方がスターだと思っている奴は、素人かモグリだ・・・なんて言うくらいのものだった。なにしろ『雪風』は、太平洋戦争の最初から最後まで、大半の海戦に参加していながら一度もやられてない。戦死者も二〜三人しかいない。連合艦隊がレイテ湾に突入したときも、戦艦大和が沖縄特攻に出撃し撃沈されたときも、この『雪風』だけは無傷だった。無事どころか、海に放り出された大和乗員を助けまくって無被害で帰ってきた。
それでも終戦直後には、燃料が無くなって動けなくなったけれど、港で空襲にあっても対空砲火で敵を撃退し続け、終戦直後まで生き残ったのが『雪風』だった。
『宇宙戦艦ヤマト』の第一話に、この『雪風』がでてきて、その艦長が『古代守』で、『宇宙戦艦ヤマト』の主人公の兄に当たる。その古代守艦長が、撤退命令を無視して敵ガミラス艦隊に突入していく。これが第一話の前半部分なのです。そして、ただ一隻が地球に戻っていくわけですが、その地球が廃墟になっている。冥王星から攻撃してくる遊星爆弾で、地球は放射能まみれになっている。
「ああ、これは広島だ!」
「原爆投下された広島をダブらせている」
と思いましたね。そして、第二次世界大戦の時に沈んだ戦艦ヤマトを改装して、宇宙戦艦ヤマトに仕上げている。太平洋戦争では、大和が沈んで雪風が生き残っているけれど、『宇宙戦艦ヤマト』では『雪風』が沈んで、昔沈んだ戦艦ヤマトを改装した宇宙戦艦ヤマトが生き返る。逆なんですよ。逆になっている。
この逆転パロディは、いろんなところで『宇宙戦艦ヤマト』のエピソードとして出てくる。太平洋戦争で、日本が負ける原因になったのがミットウェー海戦。日本は、ここで精鋭の四空母を撃沈されますが、『宇宙戦艦ヤマト』では逆になっている。ガミラス艦隊が、精鋭の四空母を失って、地球に負けるきっかけをつくってしまう。逆パロディをやっている。
しかし、この微妙な仕掛けは、当時の子供たちには分からないし、再放送でブームになり、大勢のアニメファンが誕生したわけですが、そのアニメファンたちも分かってない。と言っても、戦記マニアなんかは、そもそもアニメなんかみないし、
「宇宙戦艦ヤマト? なにそれ、美味しいの?」
という状態だろうから、彼らが『宇宙戦艦ヤマト』に興味をもつわけろがない。監督の松本霊士が、しかけた劇中の仕掛けが分かった人間が、当時も今も、いったい何人いただろうか? ただ、交響組曲宇宙戦艦ヤマトを作曲した宮川泰氏だけは、松本霊士の世界観を分かっていたかもしれない。でないと、こういう音楽は作れなかったはずだから。
残念だったのは、低視聴率すぎて放送打ち切りになったことです。ガミラス艦隊が、精鋭の四空母を失って、いよいよ、これからと言うときに、唐突に終わってしまった。ああ、放送打ち切りかあ・・・と、当時13歳だった私は、かなりガッカリしたものです。で、私が高校生になったころに『宇宙戦艦ヤマト』ブームがおきるんですが、そのブームに全く興味がもてなかった。『宇宙戦艦ヤマト』ファンと会話しても、全く話が通じなかったことを覚えています。当然のことながら、その後のパート2以降も、リメイク版も全く見ていません。
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