このブログを読んでいる人だと思うんですが、ある人から『カニ族の青春』という本を送ってもらいました。ありがとうございました。
カニ族と言っても、若い人たちには何のことかさっぱり分からないと思いますが、昔は旅をする時に、キスリングというリュックサックを背負って旅をしたのですが、このキスリングでさえ今では死語となっています。
キスリングというのは、横に長いリュックサックのことです。キスリングと現代のザックと、どこが違っているかと言うと、横幅が長い。現在のザックが縦に細長いのに対して、キスリングは横幅がある。どうしてかというと、フレームがないから、縦長にできない。饅頭のような形・巾着のような形にしかできない。で、両サイドに大きなポケットを作った。そのほうが、安定するからです。
しかし、これは非常に担ぎにくかった。
全部の重量が、肩に食い込むからです。
だから昔の山岳会では、腕を組んで猫背になって山を登るように指導していた。
ちなみに、このキスリングは、私が中学生だった1970年代の半ばまで、日本の登山家たちは、みんな担いでいました。1975年頃から日本にも現在のようなフレームザックがでてきます。
ユースホステル運動・ワンダーフォーゲル運動の盛んなドイツでは、ザックの性能が著しく進化しました。その結果、ドイツでは、ザックにフレームを入れて縦長にして、肩ではなく腰で担ぐようにしました。それが現代のザックです。なのでキスリングは、もう滅びてしまって、どの店にも売っていません。
理由は疲れるからです。逆に言うと縦長のザックの方は、疲れません。バランスも取りやすいし、腰で背負うので荷物も軽くなります。キスリングはそういうわけにはいきません。肩だけで背負うので、肩が痛くなるし、歩くとふらふらする。
まあそんなことはどうでもいいんですが、昔の人たちは、キスリングを背負って旅行したわけですが、大きなキスリングから手足が出ていて、その姿が蟹のように見えたので『カニ族』と言われました。そしてカニ族が日本全国を席巻していたのが、1960年代末から1970年代のことです。そして彼らの大半は、鉄道旅行社でした。当時若者で、車やバイクを持ってる人は、よほど裕福でもない限り難しかったので、鉄道旅行をするしかなかったわけです。もちろん鉄道会社も積極的にカニ族を応援しました。
カニ族を対象としたイメージソングまで作られていました。
みんなも知っている有名な歌です。
『遠くへ行きたい』
『いい日旅立ち(山口百恵)』
『思えば遠くへ来たもんだ(武田鉄矢)』
『旅人よ(加山雄三)』
などです。
この他に『風来坊』『遠い世界』『岬めぐり』『風』なんてものもありましたけれど、やはり『遠くへ行きたい』『いい日旅立ち(山口百恵)』『思えば遠くへ来たもんだ(武田鉄矢)』『旅人よ(加山雄三)』の4曲が有名ですね。
『遠くへ行きたい』は、1970年に国鉄が一社提供として作った番組で、そのテーマ曲になった曲です。当時、国鉄は大阪万博のために製造した車両の有効活用を考え「DISCOVERJAPAN」という旅行誘致キャンペーンを開始して、駅スタンプを各駅に設置し、周遊券を新設するなどして、若者に旅行ブームを煽り『遠くへ行きたい』のテレビ番組を作ってもりあげ、DiscoverJapanというCMをじゃんじゃん流していました。
『遠くへ行きたい』
『いい日旅立ち』も、国鉄による旅行誘致キャンペーンソングで、「DISCOVERJAPAN2」として1978年11月に山口百恵で歌われています。この曲も大ヒットして、多くの若者たちが、この曲を歌いながら旅に出ました。
『いい日旅立ち』
『思えば遠くへ来たもんだ』は、武田鉄矢の曲で、国鉄による旅行誘致キャンペーンソングに採用されかかった曲で、山口百恵の『いい日旅立ち』と最後まで争った曲です。結局、国鉄は、山口百恵の『いい日旅立ち』を採用したわけですが、『思えば遠くへ来たもんだ』も素晴らしい曲なので、もし、これが選ばれていたら男の旅人が増えていたでしょうね。そして駅寝がもっと爆発していた可能性がある。なので山口百恵の『いい日旅立ち』だからこそ、女性一人旅が大勢現れて、ユースホステルに女性の旅人が多かったのだと思います。
『思えば遠くへ来たもんだ』
そして加山雄三の『 旅人よ』も同時期に大ヒットとなった歌ですね。
『 旅人よ』
残念ながら、この後、国鉄はJRになって急行列車・夜行列車・周遊券を廃止します。
そして、「DISCOVERJAPAN」のキャンペーンは無くなり、
新幹線の宣伝ばかりになり、JR東海 X'masExpress みたいな宣伝ばかりになる。
キスリング・カニ族の時代は終わりを告げるのです。
この時代になると、鉄道は旅の道具と言うより、
便利な交通機関という感じになって、哀愁が無くなってしました。
つづく。
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