2021年09月14日

二人の天才、渡辺岳夫と前川陽子

 私が子供の頃、好きだった歌手がバーブ佐竹です。
 とにかく不細工な顔した歌手で、
「顔じゃないよ、心だよ」
の名セリフを言い、牧伸二、菅原洋一らと「モスラ会」を結成していました。

mosura.jpg
(不細工顔のモスラ会/牧伸二・バーブ佐竹・菅原洋一/中央がバーブ佐竹)

 私が小学6年生の時の担任の先生(女性)が、「モスラ会」の菅原洋一のファンなのがバレて
「私は顔が好きなんじゃないの、声が好きなの!」
と真っ赤な顔して言い訳していたのですが、「モスラ会」の歌手のファンたちは、おおっぴらに名乗ることができないくらい不細工な歌手たちだった。

 逆に言うと、当時は顔が不細工でも声が良ければ歌手として成功した。ジャニーズ全盛期の現在からすると考えられませんが、顔と声は別物だった。テレビが贅沢品で一家に1台しか無かったために、ラジオを聞く人が多かった。だから不細工の頂点をいくバーブ佐竹のファンを名乗る大人たちや、小学生が、少なからず存在し、私もその一人だった。

 では、なぜ小学生時代の私が、バーブ佐竹のファンになったかというと、当時、大ブームだった時代劇『子連れ狼』に熱狂したからです。昭和の子供たちは、時代劇をよく見ました。理由は、当時の子供たちの遊びが、チャンバラと相撲だったからです。新聞紙を丸めてスポーツチャンバラのような遊んでいた関係で、よく時代劇をみていた。「おはよう子供ショー」という子供番組でも、ロバの着ぐるみをきたロバ君が、「快傑ロバ頭巾」という時代劇をやっていた。当時はやっていた「快傑黒頭巾」という時代劇のパロディー番組だった。

 みんな丹下左膳や座頭市の真似をして遊んでいたし、当時の子供たちのヒーローは、剣士だった。もうひとついうと丹下左膳には、片手が無かったし、座頭市は目が見えなかった。すごく強い障害者というのが、昭和の子供たちのあこがれだったので、60歳以上の人間にとって、パラリンピックのメダリストは、一種のヒーローに見えてしまう。まあ、そんなことは、どうでもいいとして、昭和の子供たちは、よくチャンバラで遊んだものだった。

 これが変わったのは、テレビで仮面ライダーが放映されるようになってからで、仮面ライダーが放映されるとチャンバラ遊びは廃れていった。ブルースリーの映画がでると、さらにチャンバラ遊びは廃れ、ゴレンジャーでチャンバラは絶滅してしまった。と同時に子供たちが時代劇を見なくなった。代わりに仮面ライターやゴレンジャーや特撮ヒーローものを見るようになった。

 そういうものが無かった時代の子供たちは、時代劇を見た。特に『子連れ狼』に熱中した。3歳の大五郎が主役である『子連れ狼』に熱中した。その主題歌である「ててご橋」を歌っていたのが、不細工集団「モスラ会」のバーブ佐竹だったのだ。





 長い前置きはそのくらいにして、本題にはいります。

 アニメソングの歌手に、もう一人天才がいました。
 前川陽子さんです。
 私が子供の頃に子供たちに大人気だった
 NHK の人形劇「 ひょっこりひょうたん島」の主題歌を歌った人です。



  当時12歳だった前川陽子さんは、この歌を歌って大ブレイクしました。
「 ひょっこりひょうたん島」の原作は、井上ひさし、山元護久さん。
 この二人のコンビは、日本アニメの最高傑作「長靴をはいた猫」をつくります。

 日本アニメの最高傑作は、カリオストロでもラピュタでもない。
 井上ひさし、山元護久コンビの「長靴をはいた猫」ですよ。
 ちなみに山元護久は、「おかあさんといっしょ」「できるかな」「ピンポンパン」あたりの作家もやっている。

 まあ、そんなことはどうでもいいとして、「 ひょっこりひょうたん島」の声が良すぎるので、前川陽子さんは、手塚治虫ののアニメ「リボンの騎士」のテーマソングを歌ったりしたわけですが、これも凄かった。特にエンディングの「たらり、らった、らった、らった、らった、らったったー〜♪」の声が良かった。



 魔法使いサリーのエンディング「魔法のマンボ」も歌っていた。
 この頃の前川さんは、高校生だったと思う。



 オンブオバケの主題歌も歌ったりしますが、これがまた凄かった。
 下の動画をみればわかりますが、
「オンブが怒るとカラスが騒ぐ、カーカーカー♪」
という歌声が凄かった。この声を業界がほっとくわけがなく、CMソングでひっぱりだこになり、昭和40〜50年代のCMソングはたいてい前川さんが歌っていたと思う。特徴のある声なので、前川さんの歌は、どんなCMソングでも、一度聞いたらすぐわかった。



 リボンの騎士も、魔法使いサリーも、オンブオバケも、子供の頃によく見たアニメだったので、 前川陽子さんの歌声は当時の子供たちにの中に完璧にインプットされていたと思う。特にリボンの騎士の「たらり、らった、らった、らった、らった、らったったー〜♪」のサビが頭の中で、ぐるぐる回ってとれなかった。前川陽子さんの歌う曲には、こういう曲が多かった。そのうえ CM ソングもかなり歌っていたので、昭和40年代というのは、テレビをつければ必ず前川陽子さんの歌声が聞こえてくるという時代でした。

 そして極めつけがキューティーハニー。

 キューティーハニーといえば、若い人たちにとっては、エヴァンゲリオンを作った庵野監督のキューティーハニーであり、 倖田來未の歌うキューティーハニーでしょうけれど、 六十歳前後の人間にとっては前川陽子さんの歌こそキューティーハニーです。子供達にとっては、非常に刺激的な歌だったわけですが、そのキューティーハニーの歌さえも、幕下になってしまうほど強烈な歌を前川陽子さんは歌います。

 「魔女っ子メグちゃん」です。
 YouTube に動画が出ているので一度聞いてみれば分かりますが、
 これこそ最高傑作の歌声。
 オマケにコンテもすごい。



 上の動画を見てください。
 今聴いても古くない。
 というか新しい。
 令和の作品に負けてない。

 と、同時に、この曲を作った渡辺岳夫とは、いったい何物なのか?
 と思ってしまう。

 彼は、渡辺岳夫は、巨人の星・天才バカボン・キャンディ・キャンディを作っている作者。
 これにくわえ、アルプスの少女ハイジ・フランダースの犬・あらいぐまラスカル・ペリーヌ物語・機動戦士ガンダムまで作っている。
 ガンダムですよ! ガンダム!
 天才バカボンと、巨人の星と、ガンダムの作者が同一人物!
 信じられますか?
 おまけに、子連れ狼と作者が同一人物!

 そのうえ実写ドラマでも名作を量産している。「あばれはっちゃくシリーズ」や「ザ・カードマン」が、有名な代表作だけれど、私のお気に入りは「白い巨塔」と「新幹線公安官」です。この二つも全く古さを感じない。


https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A%E5%85%AC%E5%AE%89%E5%AE%98
(新幹線公安官・1977年)


(白い巨塔・1978年)

 白い巨塔にいたっては、1978年版の方が新しい。
 まさに天才ですよ。超天才!
 渡辺岳夫という男は。

 映画にいたっては、もっと凄い。

 眠狂四郎シリーズ、
 緋牡丹博徒シリーズ、
 あしたのジョー、
 極真会のドキュメント映画シリーズ。

 と、いくらでも出てくるし、時代劇にいたっては、ほぼ全ての時代劇の音楽を作っていると言っても過言では無い。で、個人的に私が一番気に入ってる渡辺岳夫の曲が
『子連れ狼』
で、バーブ佐竹の歌う『ててご橋』です。







 バーブ佐竹の『ててご橋』と『魔女っ子メグちゃん』と『天才バカボン』と、東映任侠映画の名作で藤純子の『緋牡丹博徒』の音楽を作った人が、同一人物だということが信じられません。いったい渡辺岳夫とは、何者だったのでしょうか?



つづく。

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posted by マネージャー at 14:31| Comment(0) | アニメ・漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする