続きです。
今まで、トムラウシ山遭難事故をおこしたガイドさんにキツイことを言ってきましたが、今度は、ガイドの立場になって考えてみます。というのも、私たちも無償とはいえ、御客様を連れてガイドをすることがあるので、ガイド側の気持ち、ツアー会社の気持ちが多少はわかるからです。
北軽井沢ブルーベリーYGHでも、『風のたより』の皆さんのボランティアにお願いしてガイドツアーを行っています。基本的に無償です。保健代が300円とガソリン代だけです。まれに私がガイドに出かけることもありますが、これは営業ではありませんから、やはり(実費を除いて)無償です。
無償にする理由の一つは、天候が悪ければ、必ず撤退するからです。
まあ、それだけが理由の全部では、ありませんが、理由の6割を占めます。本格的なガイド業なんて、宿業と兼務でこなせるほど甘くありません。雨が降ったら登らない、吹雪いたら登らない、天候が急変したら、すぐに下山する。頂上はめざさない。そういうところは徹底してガイドツアーを行っています。
でも、そこまで慎重に行動しても
事故がおこる時は、おこる。
御客様が怪我をする時もある。
だから余計に慎重になってしまう。
年々、臆病になっていく自分がいる。
しかしね、そういうガイド側の心を鞭打つかのような
御客様の激怒の声が浴びせられることがあるんです。
たとえば、こんな会話(電話)が、年に何回かあります。
「来週は、××山登山ですよね?」
「そうです。でも雨天の時は、温泉ツアーになります」
「それじゃ困るんだよ、はっきりしてくれよ、行くの? 行かないの?」
「こればかりは天候しだいなので・・・」
「それ、おかしいだろう? いかねえならホームページに書くなよ」
「ホームページにも、雨天中止と書いてありますが」
「こっちは、百名山やってるんだ、行ってくれなきゃ困るんだよ」
「それでは、他をあたってください。なんなら必ず連れて行って行ってくれるガイド業者を御紹介しましょうか?」
「それじゃ金がかかるだろう!」
こんな風に、無茶苦茶言ってくる人が希にいます。
スノーシューツアーの時も、
「今週のスノーシューツアーは、どこに行くんですか?」
「それは天候によって決まります。吹雪いたり、雪崩の危険性を考慮して、前日に行ける場所を御客様に提案することになっています」
「それって、おかしいんじゃないの?」
「私どもの宿は、そういうシステムをとっていますので、もし御不満でしたら、他の会社を紹介しますが」
「他の会社は、おたくの3倍の値段なんだよ。それじゃ困るんだよ。四阿山に絶対に行く日を決めてよ」
「では、別価格で、1日4万円のガイド料金で四阿山を御案内いたします」
「なんだよ、それ、ボリすぎだろう」
「いえ、御客様、一日営業を停止して、装備のチェックと四阿山の事前調査と荷物のデポを行わなければなりませんから、これが最低ラインになります。一般のガイド会社でも、この価格になっているはずです」
「もう、いいよ!」
てな、ことがありました。
こういう事があるたびに、世の中には、
「危険なところに行くには、
コストがかかる」
という単純明快なことを知らない人が、
いるんだなと思いしらされます。
私は、電話がきれた後に、
コストをかけたくなかったら、危険に踏み込まないでくれ!
無料どうぜんで危険を手に入れようと思わないでくれ!
と叫んでいます。
逆にいうと、ガイド会社には、北軽井沢ブルーベリーYGHなんかよりも、もっと御客様からのプレッシャーがあるでしょうね。なにしろ、それで食べているから。
それと、今回のトムラウシ山で遭難事故にあわれた皆さんは、
危険に対するコストをどう考えていたんでしょうか?
そういえば、こんな画像が。
ほーっ、今時のツアー会社は、
ポーターもやっているんですねえ。
なるほどねえ。
念のために言っておきますが、
ポーターとガイドは、全く別物ですから。
気をつけてください。
ガイドぽい人が、3人いたとしても、
本物は1人で、
ポーターが2人ということもありえます。
生まれて初めてトムラウシに登る人が、
ガイドなんてことはありませんから。
そういう人が混じってたら、
その人は、おそらくポーターです。
それから念を押しておきますが
ポーターというのは、あくまでも荷物持ちですから。
つづく。
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私は、山には、まったく疎いのですが、それにしても、自然に対する畏怖の気持ちがない人が昨今多いのですねぇ…。
その安い費用で、絶対確実に登山ツアーや、スノーシューツアーを決行せよ、と、おっしゃる方々は、ご本人の休暇の都合もあるかも知れないけれど、自然や天候に対して、ワガママすぎやしないかと思います。
自然や、天候は、人間の思うとおりにならない訳で、それこそ、傲慢に過ぎるように思います。
トムラウシ事故の旅行会社でも、そういう企業利潤の追求なのか、次々と同じツアー客を山に入れていくのではなく、ツアーとツアーの間の日程を入れたりすべきだったんじゃないかと、怒りを感じずにはおれません。
山や海や、川、自然に対して、もっと私たち、ツアー客は謙虚になるべきだし、ツアー主催をする会社なり、ガイドなりは、日程などに無理のない企画を立てていくべきだと、改めて考えさせられますね…。
連れて行ってもらった山は9割が晴天で、
命の危険など、全く感じられないそれはそれは楽しいツアーでした。
なので、自然に対する恐れとか天候の急変による危険などに対する意識が本当に薄かったです。
天候が急変してリーダーがとても危険を感じているときに、私は楽しい気持ちだけでいました。
軽い気持ちで参加している私がいつも無事に帰ってこられるのはリーダーの細心にわたる
気遣いと準備と判断などもろもろのことがあったからだとわかったのは、天候が急変して
体温が下がってきて、動くのがやっとというのを体験したときです。
「山で天候が変わったら、確実に死ぬ」
というのをそこで初めて感じました。
安全に対する考え方は死にそうな目に合わないととわからないのでは、というのが自分の感想です。
長い期間ツアーをずーっとしてきて今まで誰も命を落とさずにこられたのは奇跡です。
リーダーの判断にいまさらですが、本当にありがたく思います。
お金の話も言うと、ちょっとありえない値段設定だと思います。
昔学生時代に、アルプスで遭難した学生の手記を基にした合唱組曲「山に祈る」を歌いました。
この時、モデルになった学生の遭難記を読み、私自身が子供のころ飛騨地方に住んでいたこともあって、寒さというものが如何にきついものか、冬の雨の冷たさが如何なるものか知っておりましたので、この遭難を知って、参加者の年齢、日程のきつさに愕然としました。
静岡のパーティは前日4時間動いただけだったそうです。つまり、静岡のパーティはヒサゴ沼避難小屋の手前の小屋で一泊していたのです。だから同じ16日に下山に向かったにもかかわらず全員生還できたのです。
今回のツアーの方々も、もし静岡のパーティと同じ行程だったのなら、まだ何とか生還できたのではないかと思うと哀しいです。
ガイドの3人の判断ミスもさることながら、計画と引率するツアー客の年齢をなぜもっと考慮に入れなかったのか、下界の野外行事ですら雨天時の計画も立てるものなのに、なぜ天候が急変したときのことを考えたサブプランを持たなかったのか…
なぜ2002年の遭難事故を参考にしなかったのか… あまりにずさんで哀しいです。
海外旅行にいかれたから御存じと思いますが、
山でなくても、安全にはコストがかかるのは常識ですよね。
でも、常識の無い人もいる。
だからツアー会社や、ガイドさんの気持ちもわからんでもない。
だけど、安全を第一にする勇気が必要だったと思いますね。
もし、山小屋で停滞して、午後から晴れたら、ガイドたちは責められるでしょう。
でも、そのリスクよりも、命の重さの方が重いですよね。
>申し訳ないですが、登山を簡単に考えていた一人です。
そんなことを気に病む必要はゼロですよ。
なぜなら、私たちは、最初から暴風雨なら登らないと決めているのですから。
それだけは、リーダーの権限で譲るつもりは無かったですから。
昔、インドの人たち数人と、『風のたより』の合同チームで
北アルプス縦走にでかけましたよね。
インド人に、北アルプスの素晴らしさを体験させたいと、
みんな張り切っていましたよね。
でも、雨が降って全日程、停滞してしまった。
見栄も外聞もなく、山小屋から動かなかった。
あれからインド人たちは、二度と北アルプスに来てくれなかったですが、
あれは、あれで良かったと思いますね。
山小屋から出られなかってですが、毎日、酒浸りで、本当に楽しかったですから。
>静岡のパーティは前日4時間動いただけだったそうです。
どうりで、これで、また一つ納得しました。
情報ありがとうございました。
>客の年齢をなぜもっと考慮に入れなかったのか
不思議ですよね。15人の老人連れなのですから、
晴天であったとしても、体調急変してもおかしくない。
それなのに強行突破するなんて、無茶もいいところです。
花火大会で「雨天中止」とか「雨天の場合順延」って書いて
あるのと同じような感覚だと思います(違っていたらスイマセン)
けど、常識ない人には通じないんでしょうね。
個人的にはこういうクレームつける人が無茶して遭難
するような気がします。
1.予定を立てる
2.当日悪天候(雨や風が強い)
3.せっかく来たから予定どおり登山開始
4.悪天候かつ視界不良とかで遭難
こんなふうになる気がします。
山などでは「勇気ある撤退」ってのも大切なんでしょうね。
マサさん
高額のガイド料をとってて、撤退するのは、本当に勇気がいります。私なんか、そんな勇気がないので無償でツアーガイドをやっているんですよ。
>今回の遭難はツアー会社のありえないくらいタイトな日程に主原因は帰せられるのではないでしょうか?
正直言って、その通りだと思いますね。ガイドたちの責任も大きいですが、それをやれと言ってた会社の方に、問題が大きい気がしてきました。
>心配なのは、これを機にガイドに従わない、ガイドに完璧を求める
これは、私も思っていました。私の経験からしても、ガイドの立場というものは微妙なものでしたね。御客様には逆らいにくい。
天候が急変したとき、コンビニの百円雨具しか持ってない御客様に、私のゴアテックス雨具を貸してあげて、撤退したことがあったんですが、感謝されるどころか、頂上に行けなかったことを逆恨みしましたから。でも、その時、全国的に何人か遭難者がでていたんですよ。