2009年07月26日

トムラウシ山遭難事故に思う8

トムラウシ山遭難事故に思う8
続きです。

今日も御客様がたくさんいるのに深夜まで、こんな駄文を書いている自分に嫌気がさしてきました。でも、これだけは書いておかないと。
「命は、ある程度は金で買える」
という事を。

 ゴアテックスの雨具ができる前の夏山は、凍死する人が、ワンサカしました。でもゴアテックスの雨具が出たら、夏山で凍死する人は大幅に減りました。つまり、高価なゴアテックスの雨具を買うことによって「命」を無駄にせずにすむ。

 で、登山には、たくさんのギア(道具)が必要なんですが、高価でも、それらを完璧に揃えることによって命を無駄にせずにすむ。つまり「命は、ある程度は金で買える」んです。荷物も軽くなるし、寒さも防げる。ザックの重さも感じずにすむ。

 例えばトムラウシ山でビバークした某社のテント、あれは重いし、あの大きさだと張れる場所が限定される。風にも弱いし。じゃあ、どんなテントが良いかというと、これが難しい。山行によって求められる性能が違うから一概に言えない。

 で、私は、どのメーカーのテントを買ったかというと、10年間の間に、ほぼ全てのメーカーのテントを買いそろえてしまった。最盛期には全国に1000人以上の山仲間がいたので、研究しているうちに、気がついたら全部ためしていたのです。そして、何度も何度も使っていくうちに自分たちに合ったテントが決まってきた。そうなる迄に、10年かかり、何百万もかかってしまった。

 これを個人でやるのは、大変ですし無理というもの。第一、金が続かない。いくら「命は、ある程度は金で買える」と言っても、金には限度というものがあります。でも抜け道はあります。山岳会に入るか、登山学校で教えて貰うのです。そしてノウハウを盗み出すんですよ。

 あ、でも、うちの宿(北軽井沢ブルーベリーYGH)に、盗みに来ても、無駄かもしれない。うちは、安全な登山しかやってないから。テント泊はしないし、雨降ったら登らないし。

 そう言えば、山岳会のベテランさんたちが、うちのスノーシューツアーに参加したことがあった。で、ジフィーズ(高価な山用レトルト品・かなり不味い)やら、ガスストーブ(ガスコンロ)やら、各自が一個づつザックに入れてきました。私は、頭を抱えて山岳会のベテランさんたちに言いました。

「それは全部、おろしてください」
「どうしてですか?」
「重いですから」
「・・・・」

 この時、重い沈黙が流れたことを正直に告白しておきます。

「じゃあ、昼飯はどうするんですか?」
「カップラーメンと携行食にします。あ、御握りはダメですよ。凍っちゃいますから。アミノバイタルとチョコレートにしてください」
「・・・・」
「お湯は、私たちが水筒を持っていくのでガスストーブ(ガスコンロ)は必要ありませんから。寒い頂上で湯を沸かすなんて、時間がもったいないです。冬は日没がはやいですからね。今日の歩行時間は3時間ぐらいなので、ネイチャーウォッチングを楽しみましょう」
「・・・・」
「あと、吹雪いたらすぐに下山します。身軽に登って楽しくやりましょう。」
「・・・・」

 みんな不満そうでした。
 山頂でジフィーズを食べたいみたいでした。
 あの時ほど、空気が怖かったことはなかった。

(でも、空をみると雲の流れが速かったので、山頂は....)


つづく。

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posted by マネージャー at 03:15| Comment(5) | TrackBack(0) | 登山関係の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
もっと聞かせてください。面白いです。
Posted by コシヒカリ at 2009年07月26日 16:21
私も読みながら笑っちゃいました。
だけど、それが普通の山ですものね。

山頂でジフィーズを食べたいみたいでした。

っていうところがつぼです。
Posted by ささらー at 2009年07月26日 17:03
管理人さま、

ご丁寧なコメント、ありがとうございました。

私事になりますが姉が、いい歳をして百名山に凝り始めてしまい、今年は劔に行くということで、アミューズトラベルのツアーに申し込みをしたそうです。学生時代は毎年小屋のバイトをし、槍穂縦走もしているのですが、まあツアーの方が安全だろう、と。

ところがアミューズトラベルの規定で、(1) 同社の「上級」コースを過去1年以内に2回以上歩いていること、(2) 劔登山に先立って妙義山のコースに参加すること、の条件があり、どれも満たせなかったので断られたそうです。で、勝手に行ってしまいました。ちなみにトムラウシにも行くそうですが、姪と二人のテン泊で、短縮登山口から天人渓へ下山する予定だそうです。そりゃそうだろう。

ということで思うのですが、上記規定を持つアミューズトラベルさん、報道等で言われるほどの極悪非道なツアー会社なのでしょうか。本件ツアーでは無理な日程を設定しているようですし、昔だったら考えられないような失態もあったようにも見受けられますが、それなりの努力はしていた? ガイド対客の比率も (ボッカさんをガイドと数えれば) 正当ですよね。

プロの立場で、どう思われるでしょうか。
Posted by 代官山のバッカス at 2009年07月26日 23:18
ついでに。

ジフィーズは不味いです。みんな旨いと言うのですが、あれが不味いという意見を初めて聞いて、心強く思いました。
Posted by 代官山のバッカス at 2009年07月26日 23:27
■コシヒカリさん、
はじめまして。
よろしくお願いいたします。


■ささらーさん、
 ジフィーズについては、機会があったら、じっくり語りたいですね。登山にとって食事は重要ですから。あー、でもね、何でもかんでも山頂でガスストーブで料理するのって、どうかと思います。往復3時間の山行ならテルモス(水筒)で足りますよ。


■代官山のバッカスさん、
>報道等で言われるほどの極悪非道なツアー会社なのでしょうか。

 こればっかりは、ちょっと私の口からは言いにくいです。ただ、この会社は、社員教育を充分してない気がします。ノウハウも欠けているし、団体登山のスキルもない。これは会社に欠けていたのか、たまたまガイドに欠けていたのかわかりませんが。ただ、アミューズは、この事故を機会に、徹底した安全管理をはかることによって大化けするかもしれませんね。
Posted by マネージャー at 2009年07月27日 04:53
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