続きです。
ジフィーズ・アルファー米の盲点について。
以前、知床山脈の調査で15日間にわたって知床各地の山を縦走したことがありました。1日分の食料は、尾西食品のジフィーズ3パック(1パックに2食入っている)に、カロリーメイト、チョコレート、ナッツなど、0.8キロ。15日分だと、食料だけで12キロになります。1日あたりの摂取カロリーが、3000キロカロリー。1日あたりの補給は6食でした。
ところが、すぐに飢えしまった。40キロ装備で登るために、ものすごいカロリーを消費する。そのうえにハイマツのジャングルを漕ぐという悪条件のために、プラス10キロ以上の負荷がかかっている。軽量な沢装備なら2泊3日の行程を、7日もかかってしまった。
そのうち、みんなの体調がおかしくなってきたうえに、仲間の一人が、足をくじいたので、予定を変更して8日目に下界に降りて食料を補給することにしました。ラーメン屋があったので、そこに飛び込み、何杯もおかわりしました。
すると、アッという間に、全員の体調が戻ったのです。
そして、前より飢えなくなった。
こういう事は、何度もありました。5泊以上の夏の北アルプス縦走を行うと、十人に一人の割合で体調不調を訴えてくる。それも健康志向の女性に多い。私は「ははあーん、また来たか」と、山小屋に連れて行き、カップラーメンを食べさせようとしますが、相手は嫌がります。で、「一口でいいから食べて」と拝み倒して、食べて貰うのですが、一口食べてもらうと、あとは、こっちが何も言わなくても全部食べてくれる。それも美味しそうに。そして、見違えるように体調がよくなっていく。
これは、どういう事かと言いますと、
塩分が不足したのですね。
私たちは、便利さのために、ジフィーズ・アルファー米・チョコレート・カロリーメイトなんかをザックに詰め込みますが、そこに塩はない。かろうじて赤飯のアルファー米なんかに、塩がついていますが、だいたい登山で持って行くものには、甘いものが多い。そのうえ水をガブ飲みするものだから、塩が不足してくる。かといって、塩を持って行って塩をなめるかというと嘗めない。その結果、塩が不足してくる。どんどん体調を悪くしていく。特に日頃から減塩に走っている女性に多い。あと、水ばかり飲む汗っかきにも多い。
話は、かわりますが、今から三十年前、初めて山登りを始めたとき、どういうわけか、山登りの先輩たちは、不味いコンビーフの缶詰や、ナッツ類、ウイスキーなんかを山に持ってきていました。
最初、その意味が分からなかった。
コンビーフは不味すぎるし、
ナッツは、すぐにはエネルギーになりにくい。
で、ウイスキーを飲むなんて命知らずすぎる
と、私は、それに反発していたのですが、その私が塩不足で体調を悪くした。そして、先輩の命令で塩気のきいたナッツやコンビーフを強制的に食べさせられた。すると体調が戻ったのです。
「なるほど、不味いコンビーフの缶詰や、ナッツ類には、そういう役目があったのか」
と納得しました。
しかし、最後まで分からなかったのがウイスキー。しかし、それも20年前に知床半島の海岸線を一週する探検をしたときに分かりました。知床の奥地で、親切な漁師さんに、25度の焼酎の瓶を2本もらったのが、きっかけでした。
正直言って、焼酎の瓶なんぞ、重いだけで邪魔だと思っていましたから、とっとと飲んで空にして、水筒にしてしまおうかと思って飲んでみたら、アルコールの味がしない。
水を飲んでるみたいなんです。
で、一緒に行ってる20歳代の若い女の子にも飲ませた。
が、やはり、水のようにゴクゴク飲んでる。
アルコールを飲めない女の子が水のように飲んでいる。
「おかしいな、やはり水か?」
と思って匂いをかぐと、間違いなくアルコール。
正真正銘の25度のアルコール。
それでもって全く酔わない。
と言うわけで、アッという間に2本とも
空っぽになってしまいました。
「よほど美味しい焼酎なんだな」
と、下界に降りて自分で買って飲んでみたら、水の味はしなくて、25度のアルコールの味になっていました。とうぜんロックでは飲めなく、薄く水割りにしてチビチビ1ヶ月かけて飲みました。
そして、こんな経験を何度か体験するうちに、長期の縦走を行うと、極度の栄養不足になり、焼酎を水を飲むように飲めるようになることに気づいたわけです。しかし、そうなってたら危険信号なんですよね。
そうなる前に、ちゃんとした食事が必要です。
それと塩分。
あと、サプリメント+アミノバイタル+糖分。
つづく。
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追伸
コメント欄に、非常に興味ふかい御意見がでました。
重要だと思われるので、御紹介します。
■takapyonさんのコメントです。
http://kaze3.seesaa.net/article/124487949.html#comment
takapyonさんのお話によると、
>肝臓がアルコールを分解するのに大量のブドウ糖を消費するので
>激しい運動後のアルコール摂取は絶対禁忌です。
だそうです。なるほどと思いました。これが本当なら、アルコール摂取の前に糖を摂取する必要がありますね。この件については、もう少し研究の余地がありそうです。
あと◆低血糖症状と対処の仕方のサイトも紹介してくれています。
http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/hypoglycemia.htm
■あと、クリフハンガーさんのコメント
体は電解質を使って神経や筋肉の機能を調整し、
酸と塩基のバランスを取っています。
筋肉の収縮は、カルシウム、ナトリウム、カリウムの
存在に依存している。
こうした主要な電解質が適正なレベルでないと、筋肉は弱くなったり、
極端な筋肉の収縮が起こることがある。
疲れやすくなったり、足がつるのはここから来るのですね。
参考となるページがありました。
http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec12/ch155/ch155a.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/電解質
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舌まで麻痺しちゃうんでしょうか。
栄養不足ってこわいですね〜
そこまでにはなったことないなぁ。
私は原因不明のかゆみに襲われたのですが、
あれは化学繊維に負けちゃったのかもしれません。
その前に、無茶するほど強靭な肉体してないから大丈夫かも・・・?
3泊4日の登山での出来事を思い出しました。
8人パーティーで装備はひとり13kg(リーダーのみ20kg)
涸沢から下山時の朝食はマヨネーズサンドと粉末スープ。
行動食はナッツ(塩分補給)、チョコ・飴玉(糖類)、
7時出発で11時に下山完了。松本市内で隊を解散し、
市内の居酒屋でビールを飲むことになりました。ところが
ジョッキ2杯飲んだときに突然意識が混濁して動けなくなって
しまったのです。同僚は「酒が弱くなったなあ」などと
笑っていましたが、私そのとき死線をさまよっていました。
食料計画で綿密なカロリー計算をしてあったのにも関わらず、
下山後に食事前に酒を飲んでしまい脳機能障害一歩手前でした。
酒は高カロリーで「日本酒は液体米だ」などという人もいますが、
肝臓がアルコールを分解するのに大量のブドウ糖を消費するので
激しい運動後のアルコール摂取は絶対禁忌です。
(同僚はコンビニに連れて行ってくれて「ソルマック」を薦めて
くれましたが、私は「おにぎり」を買って食いました)
テント場では夕食後に酒を飲んでいても何ともなかったのに
居酒屋では「とりあえずビール!」で死にそうになった訳です。
私のようにならない様、アルコールはカロリー計算ではマイナス
ということを忘れないようにして下さい。
◆低血糖症状と対処の仕方
http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/hypoglycemia.htm
ありがとうございました。大切なことなので、勝手に本文にも紹介させてもらいました。すみません。
それは虫かもしれませんよ。私も藪こぎで、原因不明のかゆみに襲われ、1週間ほどかゆみが止まらなかった。
1泊ぐらいでは気にすることないです。3泊以上の夏山は、充分に気をつける必要があります。
まさに登山は科学ですね。
(一部抜粋)
体は電解質を使って神経や筋肉の機能を調整し、酸と塩基のバランスを取っています。
筋肉の収縮は、カルシウム、ナトリウム、カリウムの存在に依存している。こうした主要な電解質が適正なレベルでないと、筋肉は弱くなったり、極端な筋肉の収縮が起こることがある。
疲れやすくなったり、足がつるのはここから来るのですね。
参考となるページがありました。
http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec12/ch155/ch155a.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/電解質
情報ありがとうございました。
これも貴重なので本文にも紹介させてください。
いろんな視点を投げ掛けてくれるのでこちらもとても勉強になり、大変、感謝しています。
今日、自分でコメント記事を書いた後、すこし疲れていたので、塩を取ったら、一気に元気になりました。
とても単純です。
夏の暑い日は、ただでさえ、汗で塩分が流れてしまいますので、水分だけでなく、意識して塩を取った方が良いでしょう。外で肉体労働する方は、そのあたりのことをとても心得ています。
車にたとえると、車を走らすには、ガソリンとそれを点火して走らすためにバッテリーが必要です。バッテリーは電解液の成分がきちんと満たされていることが必要です。それで初めて点火のための電気を流すことができます。
人間におけるガソリンは食事です。カロリーです。電解液の成分はナトリウムやカリウムです。これらの成分が足りないとバッテリーが機能しないのです。
ガソリンである食事が仮にいっぱいでも、点火がスムーズにいかないので、体を動かすことができなくなるのです。筋肉疲労、足がつるなどはまさにこれですね。
塩不足はとても危険です。
また登山は、摂取エネルギーより、消費エネルギーが大きいということが私に新たな視点を与えてくれました。何日間も山歩きをする場合は、休みの日を設けてエネルギーの収支バランスを整える日が必要ですね。
車にたとえるとガス欠の上にバッテリーが上がってしまったので、レッカー車で移動されました。これが救助された状態でしょう。
http://homepage2.nifty.com/motoyama/salt.htm
効果とかそういうのが素人でもすぐわかるようになったらいいのに
早速見てみました。やはり塩は大切なんですね。