http://mainichi.jp/chubu/newsarchive/news/20090720ddq041040004000c.html
>戸田さんは「自分が見たことを知らせる義務がある」と取材に応じた。
>「遭難当日、私たちは『こういう危険があるけど行きますか?』と、
>判断する機会を与えられなかったのはおかしいと思う。
戸田さんのお怒りは、ごもっともです。
しかし、こういう場合に御客様にも出来ることがあります。
そこで今回は、『役割人格』について。
危険な時に、冷静・勇敢に対処した『美談』の多くは、特定の『役割』を持たされた人間が主人公の場合が多いです。例えばハイジャックの時のスチワーデスや、事故現場の警官などがそうですが、彼ら彼女らは『役割』を持たされているから、勇敢になれるんです。人間には本来的な人格の他に、現在の役割から与えられる第2の人格があり、それが恐怖を乗越えられるバネになると言われています。
これを『役割人格』といいます。
例えば、とんでもないグータラ社員が、責任者になったとたんにシッカリ人間になったりしますが、これは責任者という役割を与えられために責任者という『役割人格』が自分の中にできたためです。また、こんな例もあります。覚醒剤やシンナーでボロボロになり、カミソリを振り回し、親を殴り倒し、家出して売春をするといった非行少女が、ある日バッタリと非行をやめてしまい、分別のつく大人になりました。きっかけは出産です。その子は、母親という『役割』ができたために、母親という『役割人格』が引き出されたわけです。
人間にとって何よりも恐ろしいことは、危険が迫っているのに何をしていいかわからない事です。けれど、やるべき事を知っており、そのための『役割』を与えられている人は、かなり冷静に行動できます。ということは、自分がパニックに陥らないためには、自分自身に役割を与えておけばいいんです。自分だけではありません。パニックになっている仲間がいれば、その人にも役割を与えてあげればいいんです。役割を与えて、その人の役割人格を引き出してあげればいいんです。
これは、阪神大震災の被災者にも言えることでした。私が避難所を回って気が付いたことは、避難所によって被災者の表情が全く違うことです。被災者が生き生きしている避難所では、被災者に『役割』が与えられていました。そして絶望する間もないくらいに活発に行動していました。被災者が進んで救援物資を運び、何でも自分たちでやっていました。だから行列も少なく、何でもスムーズに動いていました。
ところが被災者に『役割』が与えられてない避難所では、一杯のトン汁の配給を受けるために2〜3時間の行列を並んでいました。被災者に『役割』が与えられている避難所と、『役割』が与えられてない避難所では、こんなにも違うんです。
では、トムラウシ山遭難事故のケースの場合、
どうであったかと言いますと、
ガイドが、御客様に役割を与えたという形跡がみあたりません。
むしろ自身がパニックになっていた可能性もあります。
そして御客様は、何をしていいか分からなくなっている。
それが証拠に北沼で90分停滞して、何人かに致命傷を与えている。
勝手知ったる山岳会では、こういう事は、ちょっと起こりにくい。
各自が、自分の役割を認識いるからです。
しかし、寄せ集めのガイドツアーでは?
そうはいきません。
そこで冷静な人が、役割人格を振り当てる必要がある。
誰かが冷静に判断しないと
全滅する恐れがある。
逆に言うと、ツアー参加者は、こういう異常事態に「自分に何が出来るのか?」という役割人格を自分自身で見つける必要があるかもしれません。もっとも、今回の遭難事故の中で、自分なりの役割を見つけ出すのは、至難の業ですが。90分停滞する間に、ぼーっとしてて、何もしてないとしたら、その隊の隊員たちには、役割人格が与えられてなかった。見つけられてなかった。そういう可能性はありますね。
役割人格については、スノーシューのサイト
http://www.kaze.cc/snow/02-huyu-yama/kiken-17.htm
にも書きましたが、よろしければ、御一読を。
つづく。
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