もう、この事件にふれるのをやめようかと思いましたが、
私が事実確認をせずに、紹介した部分にミスがあったので訂正します。
間違い部分は
>15 日 22:0022:20 時点で遭難パーティは、まだヒサゴ沼避難小屋に
>到着できておらず、行動中であった可能性がある。
という引用部分。
■ばあばさん、
>ヒサゴ沼避難小屋にパーティが到着したのは午後2時だったようです。
>9時間歩いたそうです。
ああ、そうですか!
そうですよね!
いくらなんでも
>15 日 22:0022:20 時点で遭難パーティは、まだヒサゴ沼避難小屋に
>到着できておらず、行動中であった可能性がある。
は変ですよね。と言うことは、
22時の気象通報をきいて、天気図を書いた可能性は高い。
問題は、ガイドが閉塞低気圧を認識できていたかですが。
■Yさん
するどい指摘ありがとうございました。
以下、Yさんの指摘を気象の初心者に分かりやすく解説します。
>2002年は台風崩れの閉塞低気圧ですから、
>気団的には、今回は、2002年より寒冷であった可能性が強いかと思います。
閉塞とは、路や出入り口がふさがるという意味です。
そして2つの前線が閉塞し、
暖かい空気を閉め出してしまうのが、閉塞前線。
図で言いますと、これです。
http://www.weathermap.co.jp/kishojin/diary/products/webjpeg/diary_l/41500_02071509.JPG
北海道の北に、前線が重なり合っています。
これが閉塞前線。
で、これがどうしてヤバイかと言いますと、
この図を見てください。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8a/Warmfrontokklusion_en.png/250px-Warmfrontokklusion_en.png
2つの前線が、ピッタリくっついて閉塞し、
温かい空気が上空で閉じ込められている。
これで急激な寒冷化がおきます。
で、前回遭難があった2002年7月12日の天気図を見てみましょう。
これです。
http://www.weathermap.co.jp/kishojin/diary/products/webjpeg/diary_l/41500_02071209.JPG
みごとな閉塞前線。
では、今回の2009年7月16日の天気図は、
http://www.weathermap.co.jp/kishojin/diary/products/webjpeg/diary_l/41500_09071609.JPG
やはり、みごとな閉塞前線。
Yさんの指摘どうり最悪な天気図ですね。
さらにYさんは、このように言ってます。
>オホーツク海での閉塞低気圧の発達及び停滞は冬季には頻繁に見られるものであり、
>特に発達したものは「旋風」と呼ばれますが、
>今回はその旋風に構造的には近い物であったと考えられます。
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN8/kaikyo/no34/1-(6).html
>そういった低気圧の特徴は、前線部は先行して中心部から離れているため、
>低気圧の等圧線(特に西側)は真円に近づく、かつ移動速度が落ちた場合、
>一定の風向きが長時間において持続するのが特徴です。
>また、前線通過後の小康期がありますので、複数パーティーが当日トムラウシを
>登っているところを見ますと、天気図を知らなければ意外とだまされそうな天候
>だったのかもしれませんがそこは更なる情報を待つべきかもしれません。
さらにYさんは、このように言ってます。
>また、ご指摘のサイトでも低気圧が閉塞したことを知るチャンスは
>おそらくないとされており、私もその点は同意です。
>しかも、定時連絡もしていない以上、今回のツアーでは、
>問題の低気圧がオホーツクで閉塞かつ動きが遅滞化している事は
>知りえなかったと思われます。
これには、そうかもしれませんね。
前日の天気図は
http://www.weathermap.co.jp/kishojin/diary/products/webjpeg/diary_l/41500_09071509.JPG
ですから。欺されるかもしれない。
詳しくは、下記を
http://kaze3.seesaa.net/article/124652751.html#comment
■みわぼーさん
まさか?の展開でした。
どうして気分の悪い人を、途中撤退。
またはヘリ救出、または別行動させなかったのか?
おそらく、彼女は高度障害にかかっている可能性が高い。
2000メートルに低気圧。
ふつうに高度障害がおきるでしょう!
ゲロをはき、頭痛がし、唇と爪が紫ならば決定的。
停滞するしかない。
つづく。
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リンクをクリックすると「15日9時」の天気図になってます。
2002年7月12日の天気図はこちらではないかと…
http://www.weathermap.co.jp/kishojin/diary/products/webjpeg/diary_l/41500_02071209.JPG
それにしても…本土の人たちは未だに「北海道に梅雨はない」と信じ込んでるんですよねー。
毎年8月に北海道に行くので,7月くらいからTVの全国の天気予報レベルだけど北海道の天気はチェックしてますが
函館あたりまでは完全に梅雨あると思います。
訂正します。
多忙な所コメントを拾っていただいてありがとうございます。
気象の変化について、詳しい説明が抜け落ちていて済みませんでした。
今回は、ご紹介のSUBEIGHTブログ殿からの、戸田様のコメント、
また、データとしては、天気図、気象衛星、アメダスから、再度気象の変化について検証致しましたので、(あくまで、天候のみです)ご参考になれば幸いかと存じます。今回も長文となる事、どうか御容赦くださいませ。
■1.戸田様のコメント
その16で、ご紹介頂いたSUBEIGHT殿の記事を見て、戸田さんの言葉を拾っていくと、気象の変化がよく分ります。
>前日は朝から終日雨でした。風速は5mぐらいです。
>コルに着いたときは風はありましたが、撤退とかいうことを考えるようなものではなっかたと思います。
>G雪渓を終えてからロックガーデン・天沼にいたるまでの天候状況は小屋出発時点と比べて劣悪と感じましたか。(小屋を出る頃に比べて、天気が悪くなっておりましたか?という意味です。)
>どこかで急に風雨がつよくなりました。(略)天沼からロックガーデンにかけてに木道があるとおもいますが、そこが一番風が強かったと思います。(略)。低気圧が通ったのかもしれません。7時30分〜10時と思いますが時間については後で述べたい。
>(報道記事によりますと、天気がとても悪くなったそうですが、ヒサゴ沼避難小屋を出てから、何時間ぐらいしてから、ものすごい風や雨となったのですか?
>時間ですがピークは8時〜9時と思います。低気圧の通過時刻はわかりませんか?トムラウシ分岐が10時30分とされていますが自分は11時〜11時30分と思います。小屋から5時間でなく6時間(コースタイムは2時間30分)です、2倍ではなく3倍に近い時間を食ったと思います。
O南沼→前トム平の天候について。どちら方面からの風が強かったですか。また天候に変化はありましたか。
>下りでは風のことは忘れました。既におさまりつつあったと思います。
■2.天気図の変化からの把握
http://tenki.jp/past/detail/?day=16&month=7&year=2009
閉塞した低気圧が、宗谷付近をゆっくりと通過し、7時から9時ころ、等圧線が横向きから縦向(北風)に変わります、夕刻からは、低気圧の中心がオホーツクをほぼ抜け、等圧線も緩みます。
■3.気象衛星からの把握
http://tenki.jp/past/detail/?day=16&month=7&selected_image=satellite&year=2009
全体的には西風です。ですが8時〜12時頃にかけて北西方向からの風の影響か一時的に雲の動きが北海道付近を中心に北西-南東に変化しているように見えます。またオホーツク海では低気圧が渦を巻いています。
■4.アメダスからの検証
http://tenki.jp/past/detail/?day=16&month=7&selected_image=amedas&year=2009
一時的に冬型の気圧配置となり、津軽海峡付近まで寒気が南下している様子が伺えます。帯広方面はフェーン現象気味ですが、旭川、富良野方面は寒気の影響で気温が上がりませんでした。その境は大雪山系でした。夜間はいっそう冷え込み、寒気の影響は翌17日、18日も残ります。
■5.地形的な検証
http://www.mapion.co.jp/m/43.5128530555556_142.876618888889_4/
十勝-トムラウシ連峰は、北東-南西に向かって稜線が延びます。北西風で時雨易く、冬型の気圧配置時には大荒れになる傾向があります。今回は冷湿な寒気が、山塊にぶち当たったものと推測されます。
■6.総括
天気からは、小康期(この間に出発した)を経た後、一時的な冬型気圧配置となり、寒気を含む冷湿なオホーツク気団がトムラウシ連峰目掛けて、真正面からぶつかったということで間違いないかと思います。時期的にオホーツク高気圧及びオホーツク気団は、オホーツク海北部に居座っているはずです。それらが北風によって流れ込んだと思われます。
ところで、subeight様経由で、以下のブログに行きますと、
http://snowmania7.blog38.fc2.com/blog-entry-56.html
旭川の天気予報は回復傾向、降水確率低下、でよくある天気だった、との表記もありますが、少なくともトムラウシ登山の条件としてかなり良くなかったのではないかと思うのです。(特に寒気、風向)
他の遭難者も出ているところを見ますと、2つ玉低気圧発生時、大雪山系は特に気をつけて行動する必要があると思います。また、類似気圧配置である、2002年7月12日を考え合わせると、閉塞低気圧がオホーツク海で発達した場合、発達度合がそれ程ではなくとも、オホーツク海を低気圧が抜けるまではトムラウシを中心とした大雪山系では、絶対に動いてはいけないと言う仮説が立てられます。より専門的な方に検証頂いて、もし本当にそうであれば、「一人でも多くの登山者にどんな気圧配置が危ないかを分って頂ければ」と思うのです。これは地形的なものもあって、旭川−富良野の盆地に北西方向から風が吹き降りた場合、十勝トムラウシに風が当たって、「きわめて低い温度で凝結した雨交じりの嵐になる」からだと思われます。
対策としては、何とか天気図を伝える手段がヒサゴ沼等に設置される事を望みます。天気予報に囚われ、天候が回復する見込を持ってしまったからこそ、今回の悲劇はより助長されてしまったようにも感じます。
最後にヘタカル様のその16でのこの言葉
>この遭難事件は、誰かに責任をとらすことよりも、どういう会社の指示で、どういう理屈で、どういう心理状態で、どういう判断を下したかを究明することを第一にしては、だめでしょうか?
本当に心に響きます。ヘタカル様に比べると足元にも及びませんが、かつて大雪を愛した者としては、ヘタカル様が恐らく忙しい時間を割いて検証や経験に基づいた話をして下さる事にやはり感謝せずにはおれません。
ガイドも、登山者も互いに、また山に敬意を持って親しんで欲しいとつくづく思います。