>その中で、「山屋」の方は「捨てる」事について徹底されているなと思っておりました。
>「捨てる」と言っても、山の為に色々な「無駄」を捨てると言う意味で、
>より良い条件での登頂及び下山を第一にした「合理的思考」に長けている印象があります。
おっしゃるとうりですね。これは山屋にかぎらず、危険な場所を探検する人たちは、目標を限定する傾向がある。経済でいえば、ランチャスターの弱者の戦略です。ペンション経営でいえば、差別化です。大ホテルが真似できないような特殊化によって、大ホテルに勝つ。これが弱者の戦略です。
トムラウシ山の大自然は、強者です。危険(リスク)があ。それに対抗する人間は、弱者。危険(リスク)がある場合、それを避けるには、目標を限定すればいい。そして、この場合の目標は、安全であるはずです。
例えば、うちは宿屋ですが、御客様に食事提供する際の第一目標は安全です。味は、その次になる。で、北軽井沢には生で食べられる美味しいトウモロコシ『みらい』があるのですが、これを生では出しません。茹でて殺菌する。茹でると甘みが減少するのですが、そこを敢えて茹でる。味は2の次なんです。ところが魯山人は、味を第一にした。そのために彼の体は、寄生虫に蝕まれていきました。魯山人は、それで本望だったと思いますが、宿業者の考えは違います。
宿は、一回の食中毒で壊滅します。
ツアー会社も、同じでしょう。
いや、同じでないと困る。
だから危ない橋は渡れないんです。
で、大自然という強者に対して弱者の戦略で立ち向かうとしたら、安全確保のための目標限定と、ロジスティック(補給)を確立するしかないはずです。
>今回の遭難事件、天候も要因のひとつではあるのですが、今回の遭難の要因には、
>1現地判断(ガイド)のミス
>2組織のミス
>3天候
>の三要素が複合して絡み合っているとは思いますが、
>今回、8人死亡のうち何人かの死因の一つには、ヘタカル様提唱の
>「熱収支の悪化に伴う低体温症」があり、
>1次要因として、天候条件と天候に関する判断ミス、
>その2次要因として、気象状況における情報不足及び情報不足に伴う判断ミスがあった、
>という事が、おぼろげながら判ってきました。
憶測ですが、いろいろな情報を勘案するとガイドさんは、真面目で誠実な方たちだったような気がします。遭難中も一生懸命、ツアー客に尽くしていた。ただ、判断だけが間違っていた。御客様の体調を見誤ったことも、病人を放置したことも、出発したことも、大沼で2時間も停滞(戸田証言)したことも、隊を分割したことも、テントを小屋に置いてきたことも、天候予測も、何もかも間違っていた。
だれど、遭難中も一生懸命、ツアー客に尽くしていた。
人事を尽くしていた。
しかしね、彼らの一生懸命は、ポーターとしての一生懸命であって、ガイドとしての一生懸命ではないですよ。スイス人ガイドは、傲慢ですよ。ネパール人ガイドも同じです。荷物なんか持ってくれません。その仕事は、あくまでもポーターの仕事なんです。
ポーターとガイドは、本質的に違うんです。
極論するとガイドは、判断するための存在。
だから、判断材料は、何が何でも持参するはず。
衛星携帯というものがあるなら使うのは当然です。
>極端に言えば、何も捨てれず、参加者の命を捨てた。(様に見えます)
>1.行程を捨てれず、救助や予定変更のコストを捨てれず、
>2.体調の悪い人を(最初の日に避難という言う意味で)捨てれず、
>3.体調の悪い人への付き添いと言うことでのガイド人員の融通を捨てれず、
>(2.3については手遅れになってから要救助者、ガイドの命もろとも捨ててしまいましたが)
>4.結果的にこの時期としては(恐らく)究極の悪天候にツアー全体を、
> 寄集め大人数、体調不良者つきで放り込んだ。
>5.最終日に、最後に安全に替えて捨てたのはテント二貼り(後からのツアー客に残した?)。
おっしゃるとうりですね。
特に5番は、捨ててはならないものです。
捨てるべきモノを捨てずに、
捨ててはいけないものを捨ててしまった。
>結果としては天候条件もありますけれど、8人の命が失われて…
>言葉は悪いのですが、主催側はお金を惜しんで、
>安全を捨て続けて、結局大勢の命を捨ててしまった。
私の感覚からいうと、アミューズが、安全でない登山を奨励しているとは、思えない。会社の経営者が、そういうリスクを抱え込み商売しているとは、にわかには信じにくい。しかし、現実には、かなり杜撰な登山計画がなされており、後方支援体制も皆無。
でも、それなら、もっとまともな人選をすべきですね。
後方支援をしないなら、もっと、すごいガイドをつけないと。
そのお金をケチったのかどうかは不明ですが、
5回の経験者一人と、
未経験者2人なら、
もっと後方支援しないとダメでしょう。
>「安全第一」ではなく、もしかすると
>1、お金、2、段取り(行程)≒登頂、3、安全位の優先順位
>だったのかなと。全部が揃う条件なら問題ないですが、
>全部は取れないですよ!と言う今回の様な時に、
>優先順位が低いもの(安全)から犠牲になってしまった。
>という感じで、効率的ではあっても合理的じゃない。
22万円のツアー費用をとっていて、トムラウシ山に登れなかったらクレームがくるのですかねえ。だとしたらガイドの方たちに、とても同情しますが、それでも安全第一に断固拒否するのがガイドの仕事だったと思います。スペシャリストなんですから。
そのためのガイドなんですから。
で、私の感想ですが、5回しか登って無くて、スペシャリストと言えるかどうか。それでスペシャリストなら、私もトムラウシのスペシャリストになります。
でも、そんなことありえない。春夏秋に2回づつ、それを3シーズンくらいやらないと、つまり3年で18回くらいやらないと、スペシャリストとは言えないでしょう。ポーターならともかく。
本物のスペシャリストなら、
会社が拝金主義でも、
断固拒否して停滞したはずです。
>私が指摘した天候条件は、仮に全てにおいて仮説が正しかったとしても、
>あくまでも「最悪の結果」への決定的な一押しにしか過ぎない。
そうですね。
>■ガイドは先述した優先順位に基いてという事であれば、
>実に一生懸命だったと思います。
>■打てる手を打ってそれでもトラブルは起こることはあります。
>でも、今回は打てる手をほぼすべて打たず、考えうる最悪のパターンに陥っている。
8人は死にすぎですよね。この遭難は、もっと被害を減らせたはずです。2時間の停滞(戸田証言)が無ければ、少なくとも死者は半分ですんだはずです。
↓ブログ更新を読みたい方は投票を
人気blogランキング
【関連する記事】
- カラマツシャワーが始まっています
- インナーシーツ(スリーピングバッグ)持参しないと山小屋に泊まれない?
- 最近、登山道にマスクのゴミが目立ちます
- 3歳児が、親の手を借りずに三千メートルの山に一人で登れるようになる方法 7
- 3歳児が、親の手を借りずに三千メートルの山に一人で登れるようになる方法 6
- 3歳児が、親の手を借りずに三千メートルの山に一人で登れるようになる方法 5
- 3歳児が、親の手を借りずに三千メートルの山に一人で登れるようになる方法 4
- 3歳児が、親の手を借りずに三千メートルの山に一人で登れるようになる方法 3
- 3歳児が、親の手を借りずに三千メートルの山に一人で登れるようになる方法 2
- 3歳児が、親の手を借りずに三千メートルの山に一人で登れるようになる方法 1
- 2歳児からの登山(幼児のための体験的登山論)
- なぜ浅間山に登るのか?
- アミューズトラベル 業務停止期間中に登山ツアー
- 万里の長城で大雪遭難 日本人の死者3人 主催はトムラウシ遭難事件のアミューズ
- さすが野口健!
- 登山用のザックの話2
- 登山用のザックの話
- 加水分解の話2
- ついでに加水分解の話
- 登山靴の話6
丁寧な返答ありがとうございました。御礼申し上げるのが遅くなって申し訳ありませんでした。
気がつくとブログそのものが面白く、結構楽しんでしまいました。
>ポーターとガイドは、本質的に違うんです。
極論するとガイドは、判断するための存在。
だから、判断材料は、何が何でも持参するはず。
衛星携帯というものがあるなら使うのは当然です
なるほどと思います。分業が今の日本のツアー旅行ではなかなか出来ていないのですね。
いずれは百名山2で触れていた様な、ガイド連盟のようなものが出来ていくのでしょうか?その辺りは日本に「ガイドを尊敬する土壌」が醸成されるかどうかにかかっているのかもしれませんね。
逆にポーターはポーターとしてもっと尊敬されてもいいのでは?と思います。そのうち病院ランキングや食べ物屋のランク本の様に変に商業利用されないかちょっと不安ですが、「ミシュラン」の様な制度があってもいいのかも?知れませんね。
ところで、経営者となりますと、やはり安全重視は大事なんですね。
>魯山人は、味を第一にした。そのために彼の体は、寄生虫に蝕まれていきました。魯山人は、それで本望だったと思いますが、宿業者の考えは違います。
宿は、一回の食中毒で壊滅します。
上記の文をもって、食べ物をはじめとして、「良かれと思って」の言い訳は経営では通用しないというのを強く感じました。逆にそれまでの自由な時にどんな経験を積み重ねてきたか、で人間としての幅が出てくるのでしょうね。
また、リーダーとしての判断、という意味では今回の遭難はとても考えさせられるものがありました。最近はとにかくリスクテイクを誉めそやす考えもありますが、リスク管理といいますかバランスは本当に大事ですね。かといって、多少無茶の経験がないと紙一重の判断はつきませんし…。
ところで全く話が変わりますが利尻1周、登った次の日に達成とは恐れ入ります。私も、利尻に登った次の日にチャレンジしましたが、沓掛で声をかけられた老夫婦に甘えてしまい、そこから車に乗せて頂き、途中で挫折してしまいました。ほかに六甲縦走も試みたのですが、やはり30K位まではそんな苦痛でもなかったのですが、それを超えると足に来る。40K位で足が痛くなってしまう、私の足ではそんな感じがありました。なので、時間と距離の壁があるのかな?などと思っていたのですが。しかし、蜂蜜が筋肉がやせるのを防ぐに都合がいいとは存じませんでした。徒歩話にも興味が尽きません。
続きを楽しみにしております。それにしても、利尻1周を何度もこなされるなんて、尊敬です!
そういえば、山屋の友人で六甲を縦走した人がいまして、相当苦しかったみたいですね。トレース無しの冬山でガンガン縦走する人でも足にきてしまったようです。
ご紹介の記事、読んだ瞬間記事に対して「またまた、冗談言って」っと思ってしまう位です。
またも長文で失礼だと思いまして、こちら(14+α+α+α)への書込みご容赦下さい。
自分は気象の興味が山より先に立った変わり者ですが、「気象通報から気象図を書くことで、天気予報図と実況天気が如何に異なるかを知り、自分なりの気象哲学を持つ」事が、山に携わる方にとっては必須に近い、と思っています。山屋の方は哲学以前に体(経験)で覚えている人も多かったですけれども、やはり研ぎ澄まされた何かを持っていらっしゃいました。
ガイドの一生懸命の方向は「あさっての方向」であるばかりでなく、もしも記事通り(携帯の14日の天気予報頼り)なら結果的に特攻隊であった事が悲しいです。(もしテントがなければ、致死率80%近かったことになります。)
改めて、ですが、今回の遭難では「リーダーシップ」が質・量とも足りなかったのですね…。でもお客サイドにもマネージャー様の仰っている「役割人格」を発揮する方がいらっしゃらなかった。もちろんガイドにもお客様と合議する器量も「役割人格」を育てる努力も存在しなかった。
もし、下山グループをまとめあげる能力のある方がいれば、脱落者は出ず、南沼のテントで助かった可能性が多分にある・・・。最低限トランシーバがあれば、テントがあった事をメンバーに知らせられれば、またバラバラになっていなければ…。
これらは結果論であって、南沼にテントがあったのは偶然ですから、何が正解とは言い切れません。ですが、最低限のマニュアル、パーティーとしての鉄則を守るだけで、犠牲が減らせたと言うのは悲しすぎます。
また、「南沼にテントがある」事を本当に偶然に知ったのだろうか?という事に、何だか疑問を感じています。本当に偶然であれば、「みつからなければどうしたの?」と思いますが、ブルーシートなど何らかの記憶があって行ってみたのかなと…。単にビバークしている人のところに居候する気だったのかもしれませんが…
でもどうやら記事は警察のリークと仰っているので、ガセであることを願ってまずは冷静に見守ろうかと思っています。
ここからは個人的意見ですが、今回の件で最近思った件を記させてください。
1.からだの痛みや体調の変化はありがたい。
天候急変時には、気圧の変化により事前に体調不良者が少なからず出ます。古傷の痛みや神経痛も出ます。ご年配の方は天気予報よりも正確に体で教えてくれます。
私は恥ずかしながら、20くらいから神経痛持ちで、山では膝の痛みで雨を、直前(30分前)と一日前に、大嵐の予兆は全身の関節が「かなり正確に」教えてくれました。
もちろん、外れる事も、不発な事もありますのでむやみに頼るのではなく、そういったものが出た時に慎重になって天気予報を疑えば、ご年配の方が多い事は安全側に作用する可能性があります。(個人差があって難しいですが)
初日に体調不良となった方、高度障害はもちろんあったのかなとも思いますが、体で警告を発していたのかもしれませんね。あれだけの人数がいれば、(関節)天気予報高齢者が誰かいらっしゃったとも思うのでした。YGHの宿泊客でもそういう方いらっしゃいませんか?
2.「自己犠牲の精神性」を持てた方が後数人いらっしゃったかどうかと言うのも遭難時には一つのパラメータなのかもしれません。
私は山に入る時には「山で死ぬのは幸せだ」と思って入っていました。その事によって冷静と精神バランスが保てるからです。「死んでもいい」と思えば思うほど、裏腹に勘や生きる為にできることも沸いてきます。逆に恐怖や、客観的、第六感的な警告の強さが本当に上回れば、躊躇なく撤退できます。私の場合は極端ですが、無茶を承知で申し上げれば、そういう落着きが今回の遭難には欠けているような気がするのです。ツアー登山自体がそうなのかもしれませんけれど。
亡くなった吉川ガイドについても批判は色々あるでしょうが、そういった心理面では是認されてしかるべきかなとも思っています。
3.南沼などに、ビバーク用のテントと、衛星電話、番号鍵(使用時には衛星電話で連絡の上、番号を聞いてビバーク)の設置で、今後遭難者数が減らせるかもしれません!
山小屋の設置はお金がかかりますが、テントと衛星電話のセットであれば、わりとすぐにすぐに手を打てるかなと。
ただ、勝手にテントを持ち出して返さない人がいると逆に遭難の種になりかねないので、トムラウシは人が多すぎますから、登山者のモラルが気になります。
と勝手ばかり書かせて頂いておりますが、今回の遭難、大変冷たい言い方で非難を覚悟して言えば、準備も判断も水準以下であったからこそ、色々な「問題点がほぼすべて露出」し、「見事にほとんど間違えた」「貴重なケース」であるとも思います。恐縮ですが、マネージャー様の的確な視点とご意見、情報、今後とも拝見させて頂ければ幸いです。