ささらーさん
>歌ですが、やっぱり苦手分野です。
>いまいちよくわからん感じで。。
>国語も古典も苦手な日本人です。
>こんな大人がいちゃいけませんが。。。
万葉集は、決して難しくないですよ。難しいのは古い単語であって、それは分からなくて当然です。方言が分からないのと一緒なんですよ。そんなものは何かで訳せばいいのであって、英語の詩を理解するより、ぜんぜん分かりやすいです。
むしろ分かりにくいのは、
詩を構成する表現方法の方ではないでしょうか?
例えば
伊香保ろの
岨の榛原
わが衣に
着き寄らしもよ
ひたへと思えば
ですが、これは何かに例えて詩情を訴えているわけです。
レトリックでいうところの隠喩ですね。
これは西欧文明が千年かけて達したレベルの
究極な文章表現(隠喩)を
万葉集の、しかも東歌といわれる庶民の歌によって、
普通に歌われているのですよ。
例えば映画でいえばヒッチコック。彼は、映画は小道具だと言いました。セリフで訴えるのではなく、小道具で語りかけるのが、良い映画であると。つまり、そういう歌の集大成が百人一首なんです。
よく青年は、臭い詩を書きますが、青年の詩が臭い理由は、この隠喩がうまくいってないからです。そのためにストレートすぎて臭い。その臭さが良いという意見も多いですが、比喩を使ったレトリックを使ったり、小道具をうまく使った詩の方が、深みと味わいがあると思いもすね。例えば
「もっともっと、君を愛せば良かった」
よりも
「たえまなく降りそそぐ この雪のように
君を愛せば良かった」
の方がイメージがわきますね。
だけど、
「・・・・のように」
という表現は、最も初歩的な表現方法なんです。
中学生レベルの表現なんです。
だから、ちょっと臭いですよね。
これを、もっと複雑にするならば、
「・・・・のように」
といった表現を使わないで詩情を訴えればいい。
例えば
「たえまなく降りそそぐ この雪のように
君に夢中です」
ではなく
「伊香保の山にあるハンノキは
染め物に使うハンノキは、
私の、一重(ひとえ)の衣を、すっかり染めてしまった」
といった作り方です。
ここには
「・・・・のように」
という表現はありませんね。
そのかわりに、ハンノキや衣に何かの思いをこめている。
ただ、これは表現が複雑すぎて分かりにくいんですね。
まずハンノキが草木染に使うことが現代人にはわかりにくい。
そして「染まる=あなたに夢中」が分かりにくい。
そして「一重(ひとえ)=一筋」が分かりにくい。
つまり、日頃から高度な文学表現と、相手の心情を察する文化風習に慣れ親しんでないと分かりにくいのが和歌(短歌)なんですよね。だから、もし、奈良時代や平安時代に、kyな、空気の読めない人がいたら、今よりもいじめられていただろうなあ。
関係ないですが、私が
>この意味が何となく分かるなら、
>恋する人の気持ちが分かる人です。
>そんな人なら、銀婚式も迎えられるでしょう。
と書いたのは、空気の読める夫婦なら
銀婚式も迎えられるでしょうという暗喩でした。
下の画像も隠喩によく使われますね。
つづく。
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直接的な表現はすぐに伝わる感じがあります。
けれど、隠喩はなんとなく伝わるんだけど、
はっきりとわかるまでにゆったりとした時間が
流れているような感じがしました。
短い言葉の中に、文化とか生活とか
そういうものもすべて混ぜ込んだ
世界が詰まっているのが万葉の歌なのかなと
ぼんやりと思いました。
選ばれた言葉たちも美しいです。
実は、ささらーさんが知っている中に
隠喩の天才がいるんですよ。
その天才が造った歌の例をあげてみますね。
風の中のすばる
砂の中の銀河
みんな何処へ行った
見送られることもなく
草原のペガサス
街角のヴィーナス
みんな何処へ行った
見守られることもなく
地上にある星を
誰も覚えていない
人は空ばかり見てる
つばめよ高い空から
教えてよ地上の星を
つばめよ地上の星は
今何処にあるのだろう
うまいですよね。誰にも知られてない栄光を、ここまで上手く歌にした例を私は知りません。こういう歌は、映画やテレビの主題歌になると、大ヒットしやすい傾向があります。そして心を打ちます。でも、プロジェクトXがなかったら、はたして、あれだけのヒットとなったかどうか?
とまあ、ここまで書くとバレちゃいますが、私が過去に書いた『風のたより』の文章は隠喩だらけなのでした。でも、最近は使ってませんが。
これも暗喩の天才が造った歌です。
あまりにも上手すぎて、
一般人には、理解されず終わりました。
ふるさとは走り続けたホームの果て
叩き続けた窓ガラスの果て
そして手のひらに残るのは
白い煙と乗車券
涙の数 ため息の数
溜ってゆく空色のキップ
ネオンライトでは 燃やせない
ふるさと行きの乗車券
(ホームにての一節)
あの歌があったからプロジェクトXもなが〜く
続いたんでしょうね。
相乗効果とはまさにあんな様ではと思いました。
この方の詞の解釈をめぐっていつも私が
とんちんかんなことを言うので、
自分では「日本人ではないのでは・・・」とか
軽く落ち込むことがあります。
>でも、最近は使ってませんが。
またいつか書いていただきたいと。
書く気にならない何かあったんでしょうか。
いつ現れるともわからない隠喩がまた(:>
>とんちんかんなことを言うので、
この歌には、さまざまな隠喩が使われていますね。まず「地上の星」。これは分かると思います。天に輝かない、誰にも見られることのない星のことです。そして「つばめ」。これは分かりにくいですね。これは「幸福な王子」を暗喩してますね。破壊された幸福な王子とツバメこそが地上の星ですから。ちなみに破壊される前の王子は、大空の星。