2010年02月17日

河野功先生を悼む2

河野功先生が生前に、私たちユースホステルマネージャーに熱く語っていたことを紹介したいと思います。群馬県ユースホステル協会理事長が、世界に向けてインターネットにて発進していたユースホステル運動論です。

http://kaze3.com/gyh/5-mam/kouno1.htm より紹介します。
2002年に谷川岳ラズベリーユースホステル曽原マネージャーが、
インタビューした時の内容です。

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曽原

 今日は、河野さんのユースホステル運動論を聞かせていただけたらと思います。今後、私たちマネージャーは、ユースホステル運動をどのように考えていけばよいのでしょうか? そのへんのところをズバリ本音で聞かせて頂ければと思います。

河野
 
 あの、ちょっとね、エキスだけちょっとお話しておきますがね・・・・その、三位一体(協会・指導者や施設・会員)という意味を、ちょっと解説しておきますとね。

 まず協会。

 地域協会を含めて、協会とは、ユースホステルの会員になる機会を、できるだけ提供するという事。会員になるためのユースホステルの情報を皆さんに提供すること。これが大きな仕事なんですよ。協会というのはいわゆるPR、ユースホステルを知らしめる、情報発信の場所と考えます。

 そして指導者。

 リーダーを育てるという事、ユースホステル運動のリーダーとは、現場を預かるペアレント、ユースホステルを経営するマネージャーが最大の指導者だと思っております。

 マネージャーは、運動の最大の実践者であると同時に、指導者であるという事。こういう風に理解しております。ですから、ユースホステルというのは施設的にも、ある程度、会員が望むような施設をユースホステルのスピリットに基づいて拡充していきたい。また、拡充してほしい。

 もう一つはペアレントの見識、が兼ね備わってきますと、その両輪が、ユースホステル運動の姿が、キッチリ見えてくると思います。そういう意味で、施設の重大性というのがあるわけです。

 会員というのはどういうものか。
 旅の手法、方法というのは、ありふれるほどある。

 その中で、ハートいわゆるホスピタリティを中心にした仲間意識のようなものもあるし、連帯感もあるし、そういうものを、うんと大事にしていただける旅を好む人たちのよりどころ、それがユースホステル運動に詰まっているような気がします。

 ユースホステルには、物質的には若干、時には、不足するかもしれませんけれど、全体の旅を通じた充足感というのはうんとあると思います。今回の旅行で、あそこで、ああいう人たちと会って、それが、モノより心にズシンと来る。

 見返りみたいなものね、それがこのユースホステル運動の本旨なんだなと思っていただければ、私たちは携わっている人間として、満足そのものですよね。それが、三位一体の仕組みだと思っております。


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曽原

 なるほど、協会・現場・会員を三位一体としているわけですね。


河野

 そこで、どうしてユースホステルは会員制なんだろう?
 という問題が一つあります。

 あまり触れたくないんですけれども、触れておかなければならないと思います。組織というのは何においても、お金が無ければ運営していけない、ホスピタリティ、ボランティアだけでは成り立たない部分ありますよね。その部分を、どこでどういう風に捻出したらいいのでしょうと、それから、無から、有を生じさせていくには、やっぱりある程度必要なお金だってあるわけで、例えば直営ユースホステルだってそうですよね。

 あれは、最終的に補助金や色々いただいていますけれども、
 基本的には皆さんの納める会費がああいう形になって現れています。

 ユースホステルは、日本には350くらいありますが、世界には74ヶ国が加盟しています。日本では12万人。世界では、320万人の会員、仲間がいます。そして全世界に4000のネットワークがあるわけです。それを利用して世界的な、国際的なネットワークのたびをする、そういう規模の団体は、ユースホステルしかないわけです。だから、これを大事にしないといけませんので、ここだけを見てもらっても、大変な存在なんです。

 このネットワークをうまく活用しながら、
 世界中を、若い人たちに見てもらいたいですね。
 それが私どもの一番望む所なんですね。

 で、先ほどの問題で、なぜ、会員制かといいますと、ある程度、負担能力というか、自分の小遣いを我慢すれば、学生さんだって、一年間の会費くらいは払えるでしょうと、ちょっと負担してよと、それで、自分のホスピタリティの一貫でもあると同時に、もう一つは、仲間意識というかね、それともう一つは
「俺たちが参加している」
という自意識が生まれてくるだろうと。

 そのために応分の負担をしてくださいと。

 ところが、子供がいるよね、少年会員。

 その子供たちは、まだお小遣いももらえない世代ですから、この世代、つまり少年会員がどうしても伸びてないんですよね。本来は少年会員にターゲットをもたなきゃいけませんので、これをどうしたらいいかってんで、正直言って私は、日本協会の中に、少年会員を無料にしたらどうでしょう?

 これは、際限なく無料ということではなく、ユースホステルの門を叩いてくれた人は、会費貰わなくてもいいじゃないかと。そうして子供たちがだんだん少年から青年になり、成人になった暁には、正規なメンバーになっていただくとして、いま、子供たちが門を叩いてくれたら、それは無料にして会員と同じようなと同じような待遇をしたらどうだろうと、言うふうに私は運動の方向を考えて、リードしているといったら語弊があるかもしれませんけれども・・・・思い上がりがありますが、私はそういう事を、提唱し始めています。

 私は、近い将来、それが、実を結ぶんじゃないかな?
 と思っております。
 ま、そんな事を、今日は伝えたくてしょうがなかったですね。

 それはね、ユースホステル運動に携わる私たちを、うんと勇気付ける方向なんですよ。なぜかって言うとね、我々が協会の運営の為に、運営費を生み出すために、会員を増やしてる、というふうに受け取られかねないような風潮、世相の中でね、そうじゃないんだと、時代を担う少年たちに夢を持ってほしいと、夢がユースホステルでは叶うんだよと、いうことを教えてあげたい。


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曽原

 小学生は無料入会というアイデアが実現したら素晴らしいことですね。ガキ大将スクールを設立し、日本で最も大勢の少年会員を河野さんならではのお考えですね。


河野

 それからもう一つ、今、学校がご承知のように、荒れ放題。これは教育の批判じゃないけれども、やっぱり、荒れてますよね。中学生がナイフで人を刺したとか、小学校のイジメだとかね。本当の意味の本当の勇気を、真の勇気をもてる、運動というのがこのユースホステルのなかにあるわけです。

 こういうものを、是非、世の中に知っていただき、参加していただくために、我々がやらなければならないもの一つとして、ユースホステルの運動があります。ユースホステルに行けば、それを自分で体感できるわけです。

 で、いま、なんか、会員になってください、といいますと、勢力の拡大かと言う風な見方をされがちですので、それを、やっぱり、どこかで、本当の心を知ってほしいですと、いま、私が申し上げているような、方向なんですね。

 ですから、是非、夢を、地域の協会の関係者、あるいはユースホステル関係者、先輩、現役、そういう自信を持って、今度ユースホステルいってみませんか?と隣の子供たちに声掛けられるような、運動にしていきたいですねと、それが一つの、ターゲットに置いている部分です。それを是非知っていただきたいのです。
 
 それからそれをね、教育関係者だとか、世のお母さん方とかに、ユースホステルを使って人間形成の手段として役立ててもらいたいと、こんな社会的意義を、私は考えています。

 と言っても私たちは教育者だとか何とか、そういうことじゃなく、運動というのはそうあるべきだと、世の中の人たちに訴えたい、また、そういう意味で、ユースホステルの仲間に、元気付けてあげる、そういう方向へ、とにかく今だって潜在しているわけですから、それを掘り起こして、原点に戻れるような、原点に戻って、自分が運動体の一人であると、意識してほしい。ま、そんなことが、わたしは夢として持っております。今日はそんな話ができればと思って・・・・、三位一体とは、そんなふうに考えていたんです。


曽原

 今日は、貴重なお話、ありがとうございました。


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聞き手・谷川岳ラズベリーユースホステルマネージャー 曽原正俊

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つづく。

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posted by マネージャー at 13:43| Comment(4) | ユースホステルの話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
河野先生のお話は、リヒャルト・シルマンの思想を連想させられました。
今の、こすっからくて、礼節も何もかも忘れ去られそうな日本で、このように子供たちに夢を託そうとされていた、河野先生のスピリットを私たちがどのように繋いでいくべきか…?と考えさせられます。
惜しい方が亡くなられましたね。
河野先生のご冥福をお祈り申し上げます。
Posted by みわぼー at 2010年02月18日 01:05
河野功先生は、面白い人が好きでした。面白い奴がいると聞くと、「連れてこい」と連れてこさせ、何かをやらせるのです。ですから群馬県ユースホステル協会は、梁山泊のようなところだったようです。そして、次から次へと新企画をたてて、ぜんぶ丸投げし、そして責任は自分が取ったそうです。

 で、私の話になりますが、実は、北軽井沢ブルーベリーYGHは、ユースホステルに認可して貰えない可能性があったのです。というのも、鹿沢リゾートホテルという強敵も、声をあげていたからです。施設は、圧倒的に鹿沢のホテルの方が良かった。それに大勢の従業員のいるホテルだった。しかもスキー場の目の前にありました。資金力もあり、飲み屋も経営していました。
「これは勝てないな」
と私は、あきらめかけたのですが、河野功先生は、北軽井沢ブルーベリーYGHの方をとってくれました。理由は、北軽井沢ブルーベリーYGHを認可して貰うために、私が提出した『ぶるる知床』と『風のたより』のバックナンバー全部と、『風のたより』のホームページでした。実は、河野功先生は、『風のたより』の熱心な愛読者で、こう言ったのです。
「おれは面白い奴が好きなんだ」

 考えてみれば河野功先生の周りには、そういう人たちばかり揃っていました。まさに梁山泊です。
Posted by マネージャー at 2010年02月19日 00:11
おお! ブルーベリーYGHの誕生には、河野先生とのそういった経緯があったのですね!

「面白い奴」を認めて、信頼して、仕事を任せて、責任は、自分が取る、だなんて、河野先生ご自身も、太っ腹で、面白い方だったんでしょうね!

そういう器量のある方が亡くなられたとは、本当に残念ですね…。

河野先生に「面白い奴」と認められるような人間になりたく、また、ありたいものですね。
Posted by みわぼー at 2010年02月20日 12:40
遊びを重視している人だったのですね。遊べない奴にろくな奴はいないと。オタクでもいいから遊べる奴が、好きだったみたいですね。そういう人が、人の心を動かすと。
Posted by マネージャー at 2010年02月21日 00:31
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