さて、ユースホステルの認可が決まりそうになるとなると、やるべき事ができてきます。まず北軽井沢周辺の本格調査と、長野県・群馬県の道路状況の把握です。ユースホステルの最大の魅力は、体験プログラムにあります。その体験プログラムを実施するには、徹底した事前調査を行う必要があるのです。さいわい、北軽井沢ブルーベリーの経営は、友だちがやっています。食事作りも、ベットメイクも友だちがやる予定だし、それについては私は口出しをするつもりは無かったので、私は、体験プログラムと営業に全力を入ることにしました。
で、本屋に行って観光ガイドブックを買いあさり、かたっぱしから名所旧跡を訪れて写真を撮りました。当時は、ホームページも発達して無く、デジカメなんて便利な物もなかったので、キャノンの一眼レフと三脚を持って毎日に三百枚以上の写真を撮影して現像に出しました。ガソリン代・フィルム代は、ものすごくかかりましたが、事前調査と記録写真は欠かせないものなので、体験プログラムを行うに当たってとても重要なことなのです。
もちろん軽井沢のペンションにも宿泊しています。男一人でペンションに泊まると、かなり白い目で見られました。怪しまれましたし、宿のオーナーも、あきらかにドンビキしていました。この体験に
「しめた!」
と私は思いましたね。うまくすれば軽井沢を一人旅したい男性客を、うちが『独占』できると思ったからです。
また、観光地を回ってみて、気さくに旅する男性に声をかけてみると軽井沢には意外に男性客も多いことに気がつきました。旧軽井沢銀座をブラブラするのではなく、静かな別荘地を散策する一人旅の男性客が案外多いのに気がついたのです。そういう御客さまは、お気に入りの喫茶店めぐりをしたあとに、信濃追分、佐久、御代田、小諸のビジネスホテルに泊まっているのです。軽井沢の半額の値段で泊まれるうえに、無料駐車状が完備しているからです。軽井沢の宿の中には、駐車状が有料のところもあるし狭いので、郊外のビジネスホテルに泊まる人も多かったのですね。この人たちに
「北軽井沢に泊まらないんですか?」
と、聞いたのですが、やはりペンションには抵抗があったみたいでした。
「前に泊まったことがあるんですが、まわりはカップルだらけで、いずらいんですよ」
「ユースホステルはどうですか?」
「この歳だと2段ベットはねえ」
「ペンションと同じようなユースホステルがあったら、どうですか? しかも個室でバス
トイレがあったとしたら」
「そりゃ、文句ないですけれど、そんなユースホステルは聞いたことがないです」
ここで、また私は「しめた!」と思いましたね。
これで新しい需要を掘り起こせると。
広告費を限りなくゼロにして、体験プログラムで御客さまをよび、一人旅の男性客で御客さまをよぶ。これを集客の基本にするとして、問題はリピーターの確保です。友人に任せた半年間、ゼロだったのには何か原因があるはずでした。その原因を学んだばかりのマーケッティングでデーターをとって突きとめ、それを改善するのではなく、それを活かす方向性で、北軽井沢ブルーベリーを再建するプランをたてました。
ところが、その時、北は北海道の富良野で大事件がおきていました。
賃貸の民宿をやっていた私の友人が、
大家さんと揉めてトラブルをおこしていたのです。
そのうえ、民宿をやっていた私の友人が
極度のノイローゼになっていたのです。
「これはマズイぞ」
と、友人たちは焦りましたが、
みんな仕事がありますから誰も動けません。
動けるのは、仕事をやめていた私だけだったのです。
そういうわけですから、とりあえず北軽井沢ブルーベリーの再建は後回しにして、北海道の富良野に飛行機で飛んでいかなければならなくなりました。富良野の民宿『千葉荘』の再建と、友人のメンタルケアを、北軽井沢ブルーベリーよりも優先させなければならなくなったのです。
とりあえずペンション・北軽井沢ブルーベリーの再建はあとにして、富良野民宿千葉荘の再建のために北海道に旅立っちました。2000年11月末のことでした。この頃の私は、自分の人生の中でも、最も忙しかった頃だったかもしれません。北軽井沢と富良野の2つを何とかしなければならなかったからです。
つづく
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マネージャーさん、当日は影で忙しく、ご活躍をせざるを得ない状況だったのですね…!
ますます、先が気になります。
そして、周囲のメンバーの皆さんも、危機的状況だったのですね。
10年、か…!
事実は、小説よりも奇なりで、全部正確に語ったら
テレビドラマ『高原へいらっしゃい』よりも複雑怪奇な
ストーリーになりますね。
正直言いまして、ここに書けない
サイドストーリーもいっぱいありますが、
それは、時効になるまで、またの機会に。