今から二十数年前のことです。一人の親友が悪の道に入ってしまったことがありました。その親友は、私より一歳年上でしたが、いわゆる駄目人間であり、大学もギリギリの8年在籍したうえに三十歳をすぎても仕事をしていませんでした。今で言う引きこもりだったわけですが、二十年以上前には、そういう言葉はありませんでした。その男が私が勤めていた会社に部下としてはいってきた。三十歳になって、生まれて初めて仕事をするという彼に、私はネクタイの結び方から挨拶の仕方まで、手取り足取り教えてあげました。
いわゆる引きこもりであり、アニメオタクであり、マンガオタクであった彼の自宅の彼の部屋には、少女マンガが一万冊ほど山積みになっていました。レザーディスクのアニメも大量に持っていました。典型的な引きこもりだったわけですが、二十五年から三十年前の話しですから、いわゆる元祖ひきこもりといえるかもしれません。
それだけに世間に疎く、年下の同僚に、よく虐められていました。私は見るに見かねて、彼を旅に誘ったり、山に連れて行ったりしました。すると1年くらいで人が変わったように健康的になり、ドモリは治り、普通の会話ができるようになり、体力もついてきて、妙義山をロッククライミングしたり、北アルプスを縦走したりするようになりました。おまけにユースホステルでヘルパーまでしました。
そうなると女性たちにモテモテになってきます。三十歳まで母親以外の女性と口をきいたことの無かった彼は、大勢の旅仲間や、山仲間に囲まれるようになり、大勢の人々から慕われるようになりました。これは彼にとっては夢のような変化だったにちがいありません。そんな彼は、ある女性に恋をしました。四十歳ちかくになっての初恋でした。しかし、それは適わぬ初恋でした。失恋した彼は絶望のあまりに悪の道に走りました。私が止めても駄目だった。
私は、全国の友人に相談しました。
そして、みんなで、なんとか
悪の道から彼を取り戻そうということになった。
で、その時に、凄い行動をとった人がいました。九州は福岡県の端っこから、飛行機に乗ってやってきた女性がいたのです。その人の名前は「三苫」と言いました。三苫さんは、私の友人とは、あまり面識が無かった。それどころか私とも、あまり面識が無かった。しかし、私が親友のことで困っていると聞いて飛行機でかけつけてくれた。頭が下がった。その心意気に。その行動に。私は、心の底から、その友情に感謝しました。私は、義理人情に弱いので、いつか借りを返したいと、ずーっと思っていました。
そして、数年後、三苫さんは、稚内に住む旅仲間と結婚しました。
旦那さんは、稚内の病院で言語療法士をやっていましたが、
旦那さんの夢は、旅人民宿を開くことでした。
三苫さんは、愛する旦那さんの夢をかなえるべく、
北海道中をさがしまわって、富良野の不動産に売りに出している
民宿の持ち主に、頼み込んで、賃貸させてもらうことにしました。
その民宿は
『千葉荘』
と言いました。
私が、ペンション・北軽井沢ブルーベリーを開業して数ヶ月たった頃でした。
ところが、開業してまもなく、大家さんとトラブルになってしまったのです。そのうえ三苫さんは、極度のノイローゼになってしまいました。私は、私が苦しかった時に、九州から飛行機で三苫さんが、かけつけてくれたことを思い出しました。
北軽井沢ブルーベリーの再建なんかやってる暇は無いと思った私は、すぐさま北海道の富良野に飛行機で飛んでいきました。もちろんノーマルチケットで千歳まで飛び、そこから電車に乗って富良野に向かいました。御客様と同じ交通手段を使って『千葉荘』に向かったのです。途中、『とほ宿』関係者や『フリー宿』関係者にも連絡をとり、アポをとりました。北海道ユースホステル協会にも連絡し、ユースホステルの申請についての打診をしてみました。
富良野についたら直ぐに観光協会に向かいました。そして、千葉荘と富良野の情報をあつめまくりました。で、11月の富良野を一人でじっくり歩いてみました。『千葉荘』問題にかかる前に、富良野と千葉荘について少しでも知っておこうと思ったからです。そして富良野の人々の気質を知っておこうと思ったからです。
で、あちこち歩いていると、身体が芯まで冷えてきました。11月の富良野は、雪も積もって路面は凍結しており、寒さが身にしみました。で、夜、真っ暗になって千葉荘に到着したのです。千葉荘は、古くてボロボロの民宿でしたが、そこには温かい灯が灯っていました。
つづく
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