ユースホステル開業する前に聞かされていたことは、「ユースホステルをオープンすると、そのオープンを狙ってユースホステルのヘビーユーザーが、ドットおしかける」という事でしたが、そんな事は無かった。北軽井沢ブルーベリーYGHが、オープンした開所記念に泊まった御客様は、たった4名で、うちユースホステル会員は、たったの2名でした。しかも、その後2週間ちかく御客様はゼロ状態。
「このままでは、干上がってしまう」
2001年1月の暖房費は、10万円。電気代は、8万円。何もしなくても、毎月30万くらいが消えて行ってしまう。おまけにインターネット代が3万円。当時は、北軽井沢にフレッツadslというものがなく、インターネットに莫大な費用がかかっていました。おまけに、引き継ぎが完璧でなかったために、水道管の凍結や、ボイラーの故障や、下水が凍結で流れなくなったりで、おおわらわ。
で、車で40分もかかる大雪の真冬の軽井沢駅にいって客引きをしたのですね。最初は勇気がいりましたが、やってみると、これが案外うまくいきました。しかし、何回かやっていると、警察がやってきました。で、客引きをしてはならんと言ってきました。
困った私は、カー用品店のイエローハットに行きました。イエローハットに行けば、鍵山さんの本がある。そこに何かヒントがあるはずだと。で、吹雪の中、御代田のイエローハットに行き、鍵山さんの本をかたっぱしから読み始めました。で、鍵山さんが過去に映画を作っていることに気がつきました。
北軽井沢ブルーベリーYGHには、たくさんのビデオが置いてあります。かれこれ2000本くらいになります。人気ビデオもあれば、誰も見ないビデオもある。その誰も見ないビデオの一つに、
『てんびんの詩』
という映画があります。鍵山さんが作った映画です。
で、全くヒットせずに誰にも知られず埋もれてしまった映画です。
映画マニアの私も知らなかった。
それだけに幻の映画だった。
軽井沢駅で客引きを禁止されたあと、御代田のイエローハットで鍵山さんの本を読んでいたら『てんびんの詩』という映画をイエローハットが制作したことがあると書いてあった。直感的に
「ここにヒントがある」
と思った私は、その作品を探しに車を走らせました。佐久・上田・軽井沢・小諸・御代田のレンタルビデオ屋さがしました。
吹雪の中でした。
家に帰らず、
車の中で仮眠をとりながら、
何十軒ものレンタルビデオ屋をまわり、
なんと長野市内のレンタルビデオ屋で、ようやく見つけました。
それも、レンタルではなく、中古落ちで、たったの33円で売られていました。もっと正確に言うと、3本で百円のコーナーに乱雑にやまずみされていました。それもエロビデオと一緒に。
ちなみに『てんびんの詩』は、Yahoo!オークションで五千円もします。
http://auctions.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%B3%E3%82%93%E3%81%AE%E8%A9%A9&auccat=&aq=-1&oq=&ei=UTF-8&tab_ex=commerce
今でこそ、このビデオが見直され、高値が付いていますが、まだ鍵山さんが、今ほど有名でなかった2001年当時は、たったの33円でも売れてなかったのです(もっともビデオは33円だったけれど、探すためのガソリン代は1万円以上した)。しかし、これを見つけた私は、大喜びで北軽井沢ブルーベリーYGHにもどり、飯も食べずにビデオを見ました。ビデオの内容は、このようなものです。
近江商人の家に生まれた主人公は、小学校を卒業すると、父から鍋蓋を売ってこいといわれます。それを売ることもできないようなら商家跡継ぎにはできないと。おまけに、丁稚小僧と同じ服装をさせられ、家族ではなく使用人と一緒に飯を食べるようにいわれ、弁当にいたっては、梅干ししか入ってない御飯しかない。
そんな境遇に不服な主人公は、さっさと鍋蓋を売るために、店に出入りする者の家に行き、親の威光を使って売ろうとするが売れない。かげで父が手をまわし、修行の一環であることが知れ渡っているからです。ですから、もみ手で媚びたり、脅したり、嘘をついたり、いろんな小細工をするが売れない。そういう小細工では、いっさい売れないのです。
だいたい鍋の蓋です。
売れるわけがない。
蓋のない鍋があるわけがないから、売れるわけがない。
3ヶ月間。一つも売れない。
しかし、ある事がきっかけで、何十個も売れるようになるのです。
しかし、そのきっかけとは・・・・。
『てんびんの詩』を見終わった私は、まさに鍵山さんらしいテーマだなと思いました。忘れかけていた商売の原点というものを改めて考えさせられました。売る者と買うものの心が通わなければ売れないと。人の道にはずれて商いはないと。見終わった後にボロボロと涙が落ちて止まらなかったです。
そして、見終わった直後に予約の電話がかかってきました。死ぬほど、ほしかった予約ですが、当時の北軽井沢ブルーベリーYGHは、その御客様のニーズと合わなそうだったので、お断りし、別の宿を紹介し、いろいろな旅のアドバイスをしました。すると、その御客様が、別件で、別の日の予約をしてくれました。「お前の宿に興味をもったから泊まりたくなった」と言うのです。私は、御客様をお断りすることによって、御客様の予約を頂いたんですね。
御客様が来ない。
だから、必死になって御客様を集めようとし、
宿にあわない御客様をとめたりする。
媚びたり、嘘をついたり、小細工して御客様を泊めようとする。
これは、『てんびんの詩』の鍋蓋売りの少年と一緒です。
しかし、これでは鍋の蓋は売れません。
私、北軽井沢ブルーベリーの経営を半年間、友人にまかせても全く収益が上がらなかった理由が分かった気がしました。友人がやっていた1年間、リピーターがゼロだった理由も分かった気がしました。私は、友人が宿主をやっているあいだ、旅行代理店を回ったり、チラシを配ったり、大金をかけて宣伝をしたり、集客のために走り回ってばかりいたわけですが、一度も実際に御客様と向き合ってなかったんですね。
もっとも、当時の私は、埼玉県に住んでいたわけで、向き合いたくても向き合えなかったわけですが、それでは駄目だったわけです。そもそも友人に、宿の経営を任せたのが間違いであって、どんなに「俺にやらしてくれ」と言っても心を鬼にして断るべきだったのです。しかし、アマちゃんだった私は断り切れなかった。で、御客様と向き合わずに宣伝ばかりしていたのです。これでは、うまくいくはずがない。
これが分かってから北軽井沢ブルーベリーYGHは、快進撃するようになりました。まず、リピーター1号が現れました。1年間、リピーターがゼロだったのに、たったの2週間でリピーターが現れ始めました。それもユースホステルの御客様ではなく、ペンションの御客様です。
私は初年度に、250万円の宣伝費をかけました。今は、ほとんど宣伝費は使っていません。250万円の宣伝費をかけて、リピーターはゼロ。今は、ほとんど宣伝費は使っていませんが、7割の人がリピートしてくれます。これも全て『てんびんの詩』のおかげであり、鍵山さんがくれたヒントのおかげだと思っています。
北軽井沢ブルーベリーYGHには、2000本のビデオがあります。
人気ビデオもあれば、誰も見ないビデオもある。
その誰も見ないビデオの一つに『てんびんの詩』があります。
制作されたのは、1988年。
バブルの頃の作品です。
バブルの頃に、こんな作品を作った会社があったんですね。
けれど全くヒットせず
誰にも知られず埋もれてしまった映画でした。
そのビデオは、北軽井沢ブルーベリーYGHのビデオコーナーでも
人知れず埋もれていました。
あまりに地味でボロボロのビデオだったために、
いつだったか、嫁さんがゴミ出そうとしていたのを、慌てて救い出し、
今は、私の本棚に置いてあります。
つづく
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見てみたいです。
DVDで29,400円って書いてありました。
マネージャーさんのはビデオですが、それを33円で。
よくぞ見つけられたと思いました。
映画のできは、決してよくないですが、
これをバブル時代のピークに制作した
鍵山さんの凄さがわかります。
マツモトキヨシの創業者の話は新潟の某旅館の蔵書を読みました。
野辺山のペンションエリアの出来たいきさつや歴史も、野辺山のペンションにあった印刷物で知りました。
コツコツと積み重ねた苦労の歴史に感動しました。
ブルーベリーに初めて来た時、今度来たらビデオを見まくろうと思いました。
百泊以上してるのに、実際ビデオを見たことは一度もありません。
ビデオより、ブルーベリーのツアーやホステラーとの交流の方がはるかに魅力だからでしょう。
同じような考えのリピーターさん、多いんじゃないですか。
ビデオを見る暇もないですね。
暇があっても、庭で野鳥をみながら酒ですから。
同じく!
ついでにいうと、ブルーベリーのユニットバスも1〜2回ぐらいしか
使ったことありません。
今の季節は無理ですが、テラスで酒を飲みながらのんびりするのが
楽しいですよ♪
また花壇が増えました。
合計5つになっています。
来年の春は、花でいっぱいにしたいですね。