2011年01月24日

ユースホステルは甦るのか?13

ユースホステルは甦るのか?13

 日本ユースホステル協会を創設した横山祐吉氏と中山正男氏ですが、
 どっちがボスだったかと言うと中山正男氏だった。

 中山正男氏は、本気で青少年運動をやりたかったんでしょうね。ずいぶん無茶な事をして日本ユースホステル協会を大きく発展させていった。その功績は、主に中山正男氏の手腕によるところが大きかったでしょう。中山正男氏がいなければ、ここまで大きな発展はしなかった。理事をぶん殴るといったこともしたし、泥棒みたいなことをしてサヨナラパーティーの景品を集めたりもした。


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 中山正男氏は、壮大な大風呂敷式を拡げる男だった。
 金もないのにアジアユースホステル会議を開いたり、
 国際ユースホステル会議を開いたりした。
 で、来賓の御客様のホテル代が払えません。
 だから助けてくださいと岸総理に泣きついて、内閣官房費で払ってもらったりした。
 そういう無茶苦茶なことをやって、ユースホステル運動を大きくしていった。

 そういう無茶苦茶な中山正男氏に対して、横山祐吉氏は、じっと耐えて従ってきた。
 そして兄貴として立ててきたんです。
 中山正男氏のどんな無茶苦茶な行動にも反抗せずに忠実な部下として行動してきた。

 ところが、そういう横山祐吉氏ではあったけれど、本当の意味で日本ユースホステル協会を牛耳ったのは横山祐吉氏の方だったのです。中山正男氏は、トップとして威勢が良かったけれど、大風呂敷を広げる人だったけれど、本質的に無思想だった。青少年運動に対しての一定の思想性は無かったのです。

 ところが、横山祐吉氏には明確なグランドデザインがあった。
 日本ユースホステル協会は、横山祐吉氏のグランドデザインのもとで
 着々と作られていったのです。

 しかし、このグランドデザインが、当時のユースホステル関係者には全く分からない。いや、分からせなかったと言ってもいいでしょう。わざと分からなくしたふしがある。多くの学生諸君が横山祐吉氏のところに押しかけて
「ユースホステル運動って何ですか?」
と問いかけても、歯切れの悪い言葉で煙に巻いた。例えば

「ユースホステル運動とは、富士山に登るようなものです。道はたくさんある。どこから登っても良い」

と禅問答のようなことを言った。それを聞いたユースホステル関係者は、ボーゼンとして言葉が出なかったと言います。関係者の人たちは、さぞかし困ったでしょうね。これじゃ何を目標にしてよいか分かりませんからね。しかし、この言葉こそ、横山祐吉氏の目指したところです。

 ユースホステル関係者の中にも、この言葉の意味するところを理解している人は、ごく少数いたことはいました。日本青年団から日本ユースホステル協会に移ってきた人たちです。城宝栄作さんなんかは、よく分かっていたと思います。それは何であるかと言いますと、

協会としては脱イデオロギーを目指したい

ということなんですね。

 協会としては、目的を固定したくないということです。
 そういうものは個人個人がもってもらいたい。
 それの手助けはするけれど、
 協会としての方向付けはしたくないということなのです。


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 これは横山祐吉氏の独創ではなく、日本青年団時代に教わった田澤義鋪イズムなんです。田澤義鋪の思想そのものなのです。思想とか、目的とかは個人にまかせる。それについては協会は関知しない。しかし、それを目指す青少年たちの手助けを行うというのが田澤義鋪イズムであり、横山祐吉氏の考えた日本ユースホステル運動なのです。

 だから横山祐吉氏は、ユースホステル運動という言葉さえも嫌った。密かに「運動」という言葉を嫌悪したのです。のちに日本ユースホステル協会の二十年史を作るときに「日本ユースホステル運動二十年史」とはしなかった。三十年史、四十年史、五十年史は、『日本ユースホステル運動・・・・年史』となっているのに、横山祐吉氏が編纂させた二十年史だけは、『運動』の文字が消えているのです。彼は、この運動という文字が嫌いだった。けれど、それを関係者の誰かに話してはないのです。誰にも話してない。ひっそりと心の奥にしまって墓場までもっていってしまった。


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 じゃあ、何故横山祐吉氏は、協会としては脱イデオロギーを目指したかったか? 協会として目的を固定したくなかったか?というと、これにも深いわけがあります。そのわけを話すと長くなるので今回はやめておきます。ただ言えることは、GHQが指導して行わせた『共同学習』や『グループ活動』や『グループワーク』が横山祐吉氏の狙っていた協会としては脱イデオロギーを目指したかったという方向性にとっては、とても都合のよいものだったのですね。だから盛んにユースホステル運動においてグループ活動を奨励したのです。

 しかし、当時の日本ユースホステル協会の関係者は、面食らったと思います。協会としては、目的を固定したくない。そういうものは個人個人がもってもらいたい。それの手助けはするけれど、協会としての方向付けはしたくないという考えは、一個人の理念としては立派な考えなんでしょうが、組織の人間としては、
「はあ? 何で?」
ということになると思います。

 しかし、これについては絶対に譲らなかった。
 独裁者として力を発揮して反対派を容赦なく追い出したと言います。
 もちろん裏から手を回して、再就職の世話をしていたようですが。

 さらに横山祐吉氏は、文部省と一緒に
「指導者のためのユースホステル活動」
(ここでも運動という文字は使われていません)
を出版して、トドメをさしました。

 この本に
「ユースホステルは、YMCAやボーイスカウトや青年団のように目的をもった団体でなく、ホステルを利用することを目的とした団体である」
と書いてしまった。この本が、ユースホステルの研修会に使われるようになったわけですから、ユースホステル協会は公式に無目的団体であることを表明してしまった。そして、目的や理念は、個人個人が背負うことになってたのです。


 ただし、文部省と一緒に発行した「指導者のためのユースホステル活動」は、律令みたいなものです。現代風にいえば、憲法前文みたいなものです。これだけでは、何の活動も出来ません。そこで、御成敗式目や武家諸法度のような非公式なものを密かに作った。これがグループ活動の推進でした。

 スケッチグループとか、
 写真グループとか、
 ハイキンググループとか、
 合唱グループとか、
 ウォーキンググループ

といったグループを量産させて自由に活動させました。


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 これが大当たりに当たりました。
 若者たちは、興奮しました。
 ユースホステル運動が、自分たちの生活の場になった。
 ユースホステル運動が、自分たちに幸せをもたらした。
 しかも若者たちが、主役だった。
 少なくとも彼らは、そう思った。

 グループ活動というのは、基本的に出入り自由です。
 気に入らないことがあれば、出て行けばよい。
 しかし、田舎だとそうはいかない。
 近所つきあいもあるし、出て行きにくく息の詰まる思いもする。
 特に昭和三十年代、昭和四十年代はそうだった。
 ところが、その当時のユースホステル新聞には無数のグループがあった。
 そして、どのグループも出入り自由だったし、脱会の後腐れもなかった。


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 だいたいユースホステルそのものが一期一会の世界です。みんな後腐れない自由を愛する仲間たちです。グループを脱退するのも自由。入会するのも自由。自分でグループを作るのも自由でした。自分の趣味のグループを立ち上げてメンバーを募集したりもした。募集は、ユースホステル新聞の地方版で行ったり、旅先のユースホステルで勧誘したりしました。

 こうして乱立していったユースホステル運動のグループ活動には、新鮮な自由さがありました。だから当時の若者たちは、グループ活動に熱狂し、しだいにユースホステル運動にはまっていきました。これこそ横山祐吉氏の狙いだったと思います。

 でも、これには時限爆弾がしかけられています。そうやってできあがったグループの会員たちは、すぐに年をとっていくといことです。グループは、つねに若い世代によって新設されなければ、どんどん高齢化がすすみ、消滅していくはめになります。例えば、女性なら結婚して子供が出来たらスケッチグループでスケッチして旅する暇が無くなってしまう。

 ユースホステル協会の役員なんかもそうです。財団法人化のさいに、会員による総会を廃止して、役員の互選にしてしまった。そうして横山祐吉氏は協会を特定イデオロギーから守ろうとした。イデオロギー好きな団塊世代の不毛な議論を警戒してした。その行為の善悪はともかく、その結果、役員の高齢化が進みました。互選のシステムは、役員に無理して若い人を入れようとしない限り、役員の高齢化は避けられません。何もしなければ役員は、どんどん偉い人の集まりになっていく。

 ただし、横山祐吉氏も中山正男氏も、若い人たちをジャンジャン起用はしているのです。起用はしているけれど、ちょっと油断すると、高齢化は着実に進行してしまう。そうなると若い人たちは、ユースホステル運動に無関心になっていく。思い入れを感じてくれなくなるのです。これが時限爆弾です。若い人たちの無関心こそが最も恐怖すべき爆弾だったのです。だから横山祐吉氏は、その対策もたてていました。それは.....?


つづく

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posted by マネージャー at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ユースホステルの話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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