2011年01月25日

ユースホステルは甦るのか?14

ユースホステルは甦るのか?14

 ただし、横山祐吉氏も中山正男氏も、若い人たちをジャンジャン起用はしているのです。起用はしているけれど、ちょっと油断すると、高齢化は着実に進行してしまう。そうなると若い人たちは、ユースホステル運動に無関心になっていく。思い入れを感じてくれなくなるのです。これが時限爆弾です。若い人たちの無関心こそが最も恐怖すべき爆弾だったのです。だから横山祐吉氏は、その対策もたてていました。

 それは、PRによる広報活動でした。

 日本ユースホステル協会が、広報のための予算を得たとき、最初に行ったことは、3種類のユースホステル新聞を作ったことです。一つは会員に読ませる新聞。もう一つは関係者に読ませる新聞。そして最後に外部にPRするための新聞。そして1970年の10月21日に、全国ユースホステル広報担当者会議を甲府ユースホステルで31都道府県から36名の広報担当者を集めて開催しています。

 ここで横山祐吉氏は、このように述べています。

「ユースホステル運動のPRは、人間関係の結びつきのある会員仲間を対象として働きかける、すなわち「クチコミ」が最も効果的です。その一方で、難しいと言われるPRは、無関心な者を説得する方法です。PRにはこの二つの異った要素を考えて行われなければなりません」

 さすが横山祐吉氏です。
 一番難しいとされる広報活動を熟知しています。
 無関心の者を説得することが一番難しいことを良く知っている。


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 実は横山祐吉氏は、広報の専門家でした。大日本青少年団の広報部長をやっていた人だったからです。そして日本最大の雑紙「青年」を発行していました。ですからマスコミに知り合いはおおかったし、文化人とのおつきあいも多かった。広報こそは横山祐吉氏の最も得意分野だったかもしれません。その横山祐吉氏が、全国ユースホステル広報担当者会議で、このようなことを言っています。

「ユースホステルは若人の生活の場です。
 この生活に密着したPR活動でないと効果が上がらない、
 若人の人生観と離れてPRはありません。

 PRは人生であると考えてもいいです。

 PRすることによって青少年の生活を豊かにする。
 青少年の生活を変えていく。
 考え方を変えていく。
 よい環境を作っていく。
 それがPRの目的です」

 これを1970年に言ったのですから横山祐吉氏は天才でした。
 広報の本質を良く知っていました。


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 実は広報というのは、宣伝ではない。宣伝と広報ではまるで違っている。宣伝を英語でプロパガンダと言いますが、ナチスは宣伝省というものを作りました。宣伝は、こっちの意図するところに相手を導くことが目的です。ナチスは、そういう省庁を作ってドイツ国民を導いていった。

 これが広報となると少し様子が違ってきます。広報のことを英語でPR(Public Relation)と言いますが、PRとは、己の自己修正のための宣伝方法です。相手を導くのではなく、相手に利益をもたらすための自分を変えてしまう宣伝方法です。つまり、御客さんとキャッチボールして自分を相手にあわせていく宣伝方法です。で、肝心の横山祐吉氏は、どのようなPRをしろと演説したかと言いますと、

1.ユースホステルは若人の生活の場である。
2.この生活に密着したPR活動でないと効果が上がらない。
3.若人の人生観と離れてPRはありえない。

と言いました。つまり青少年が、ユースホステルに求めているものを無視してはPRもへったくれもないぞと言っているわけです。そして当時の青少年たちが求めていたものを提供したのが、ユースホステルであり、ユースホステル新聞であり、多くのグループ活動であったわけです。

 そして、これらをまとめた世界。つまりユースホステルの世界は、当時の日本に一つしか無かった。今でいえば、ユースホステルの世界は、インターネットみたいなものであったかもしれません。自由で、いろんなグループがあり、情報が豊富で、しかも出会い系であった。そして、ユースホステルを利用すれば確実に生活が楽しくなった。いろんな人たちと知り合いになれ、いろんな体験ができて、いろんなコネクションができあがった。

 横山祐吉氏は、それをPRしろと言ったのです。
 PRすることによって青少年の生活を変えていき、
 みんなに喜んでもらいなさいと言っている。
 つまり最高のPRは、あなたの生きざまを見せることだと。

「PRは人生であると考えてもいいです(横山祐吉談)」

 また、こうも考えていたはずです。日本ユースホステル協会は、何のイデオロギーも持ってないところだから、それは個人個人がもつべきものだから、青少年の各自に、いろんな人生をみつけだしてもらいなさいと。そして、それを密かに応援できるユースホステル協会になりなさいと。つまり青少年が、ユースホステルに求めているものを提供してあげなさいと。

 そうすれば無関心な人たちもユースホステルの世界に興味をもってくれると。
 口コミで会員が増えていくと、
 グループ活動も盛んになり、サポーターが増殖していくぞと。


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 しかし、このPR作戦は、うまくいったとは言えません。横山祐吉氏が理事長を解任された昭和47年以降、ユースホステルの会員は、じゃんじゃん減っていったからです。現在まで、何人もの理事長が交代し、理事や評議員も次々と変わっていきましたが、どうにもならなかった。会員は減る一方でした。時限爆弾は、爆発し続けていきました。


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 実は、この爆発し続ける時限爆弾を私が知るきっかけがありました。それは忘れもしない2001年。北軽井沢ブルーベリーYGHユースホステルがオープンした年の3月に、群馬県ユースホステル協会から理事の任命をいただいた時でした。新参者の私が、恐る恐る理事会に参列してみて、末席で小さくなっていると、驚愕する事実を聞かされたからです。

つづく

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posted by マネージャー at 23:42| Comment(5) | TrackBack(0) | ユースホステルの話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
何だろう?気になる。
Posted by よっし〜 at 2011年01月26日 09:59
ご希望に応じて早めにあっぷしてみました
Posted by マネージャー at 2011年01月26日 20:47
マネージャーさん、ありがとうございました。今の理事の方々、組織としての意思決定は仕方ないとしてツィッターで思うことをどんどんつぶやけばいいのに。百家争鳴、ケンケンガクガクが組織の生き残るすべだと思うのですが。20年くらい前に飯田橋の協会に呼ばれてちょっと議論に参加した淡い記憶があるなー。
Posted by よっし〜 at 2011年01月27日 10:00
と思って久しぶりに協会の寄付行為、理事構成等ひととおり見たが(といってもウェブの構成上そもそも協会の姿がわかりにくい)、これはむつかしいとかんじました。
Posted by よっし〜 at 2011年01月28日 14:34
日本ユースホステル協会は、議論をジャンジャンさせるところです。
発言が自由なのです。
だからトップに悪態つくマネージャーがいっぱいいる。
福田総理(会長)にかみついたマネージャーもいました。
発言は自由なのですが、協会組織は互選。
トップのキャラによっては独裁にもなりえる。
ただし、協会としての思想は脱イデオロギーなので、
個々の思想には立ち入らないので自由な雰囲気はある。
これが日本ユースホステル協会の面白いところです。


Posted by マネージャー at 2011年01月28日 23:57
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