今回は、ちょっと趣向を変えて生物の進化について語ってみます。生物の種は無数に現れては消えていきます。弱肉強食の競争の中で、多くの種が競争に敗れて消えていきました。そのうえで生命体は、幾多の大量絶滅の時代をえて今日の姿を残しています。これらの生存競争の浮き沈みの中で、ある種の法則があるのを発見したのは、明治元年生まれの丘浅次郎です。丘浅次郎は、生命体の生存競争で勝ち残ってきた生命体は、その勝利原因によって滅びることを発見しました。
例えば、サーベルタイガー。
世界最大の牙をもったサーベルタイガーは、その牙の大きさ故に、どんな哺乳類にも負けない強さを誇り、おそらく食物連鎖の頂点にたったと思われます。牙が大きければ、大きいほど強い。だから適者生存の結果、サーベルタイガーの牙は、どんどん大きくなってきます。サーベルタイガーだけではありません。
マンモスもそうです。牙が、どんどん大きくなっていく。氷河期で餌が少なくなると、少ない餌をめぐって争奪戦になる。そうなると、牙が大きいほど餌を確保しやすくなる。だから適者生存の結果、マンモスの牙は、どんどん大きくなってきます。牙が大きいほど生存率が高くなるからです。
しかし、サーベルタイガーもマンモスも、ある時期に滅びてしまいます。原因は牙の大きさによって、アゴが牙を支えられなくなり、食事も満足にとれなくなるからです。サーベルタイガーは、野ねずみのような小さな獲物をしとめられなくなるし、マンモスは林の中に入れなくなる。ある時期まで有利だった条件が、あるラインを越えると、生存には不利になっていく。じゃあ、牙を小さくすればいい話しなのですが、そうはいかない。長い間に形成された遺伝子は、子孫が減り始めると、なおのこと牙をどんどん大きくしてしまい、ついには種が絶滅してしまいます。
この丘浅次郎の理論は、生物の進化だけでなく、
私たちの社会にも当てはまることが多いように思います。
ちょっと例をあげてみましょう。
その昔、戦後の日本の復興を支えたのは、国鉄であり、ダムであり、優秀な官僚であり、教育水準の高さだと言われていた時期がありました。
国鉄は、復員兵士たちを吸収して雇用を確保し、新しい技術を開発して、国鉄一家と呼ばれるほどになり団結を誇りました。渥美清主演の国鉄映画シリーズが生まれたくらいに模範的な企業だった。ダムの建設は、水資源の再利用と公共事業による景気対策をすすめ、工業化のためのインフラの整備をすすめました。優秀な官僚たちは、日本経済をひっぱっていきました。高度な教育水準も日本経済を陰からささえました。これらは、サーベルタイガーやマンモスの牙のように日本を世界第2位の経済水準におしあげた原因だと言われています。
しかし、これらの牙は、ある時期から日本経済の足を引っ張るようになります。国鉄は赤字を出し、ストライキばかりでサービスは酷くなるばかり。ダム建設も利権と汚職の温床になってきました。優秀だったはずの官僚も天下り利権の話しが聞こえ始めました。教育は、金をかければかけるほど荒廃していき、国際的な学力はどんどん低下していきました。どれもこれもサーベルタイガーやマンモスの牙みたいになってきているのです。こうなると牙を大きくするという発想は滅びへの道に見えてさえきます。もっと別の発想が必要になってきます。
では、かって急成長したユースホステル界には、どんな牙があったのか?
ここに、ユースホステル運動の復活の鍵があります。しかし、その鍵を見つけるには、慎重に、そして正確に歴史を検証する必要があります。私が、くどいくらいにユースホステル運動の歴史の検証にこだわってきたのは、そのためです。
安易な思いつきでは、ユースホステルの再建はできない。誰かが捨てられてしまった歴史を掘り起こして、それらを再検討して貴重なノウハウとして積み重ねていくしかない。それをしないで単なる思いつきで改革を始めたら悪い方向に流れてしまう。歴史をみてもわかるように、根拠のない思いつきでアッという間に滅びた組織ならいくらでもあります。
というわけで、いよいよ結論です。
ユースホステルには、どんな牙があったのか?
そして、どんな牙がユースホステルを滅ぼそうとしているのか?
つづく
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サーベルタイガーから組織論へ・・
歴史を知ること
そして、そこから学ぶこと
それを軽視する人って、多いように思います。
特にトップに立つ人々ほど。
戦争が繰り返されることも、その証左ではありますまいか?
それはさておき。
いよいよ、結論ですか…!
続きが気になります。
みわぼーさん
よっし〜さん
今回は、起承転結でいえば「転」です。
次回から「結」にうつります。
せっかくなので、日本の誇る歴史作家である
頼山陽の文集論を紹介しましょう。
彼は、たった4行で文章の極意を語っています。
起: 京の三条、糸屋の娘
承: 姉は十六、妹十四
転: 諸国大名、刀で殺す
結: 糸屋の娘は、眼で殺す