歴史を調べるとユースホステル業界の発展は、青少年たちの口コミと支部協会の活発な活動、それに無数のグループ活動によるところが大きいことは、連載で何度も何度も言いました。これらを一言で言うと、日本におけるユースホステル運動の発展は、若い人たちの支えと、全国各地の志し有る人たちの行動によって築かれたものです。日本ユースホステル協会は、そのパワーをうまくリードしたにすぎません。下からのパワーによって大きくなった組織がユースホステル業界でした。
実は、これがマンモスやサーベルタイガーの牙です。
若い人たちは、いずれ歳をとりますし、青少年たちが頑張れば、組織は大きくなります。大きくなってしまえば創業にかかわったという喜びと感動は消えてしまうでしょうし、そうなれば組織は老化しますし、守成に入らなければならない。しかし、その切り替えがうまくいかなかった。
今まで発展を支えてきた青少年たちの口コミと支部協会の活発な活動、
それに無数のグループ活動は、いつのまにか消滅しています。
しかし、それに変わるモノがない。
そうなると、脱イデオロギー化をめざして無目的な協会を作ってきた
横山祐吉氏の意図が全て裏目にでてきます。
現代の青少年たちに、ユースホステルが提供する青春(ライフスタイル)が、
明確に見えてこないからです。
旅行業者が提供する体験プログラムと差がないように見えてしまう。
しかし、両者は根本的に異なるのです。
旅行業者が提供する体験プログラムは、あくまでも顧客のニーズを満たすものでしかないですが、ユースホステルが提供する体験プログラムは、ユースホステルという青春(ライフスタイル)の一つの形態でしかない。体験プログラムに一つのライフスタイル、つまり生活の場が微妙に加味されたのが、ユースホステルが提供するプログラムですから。
しかし、これが分かりにくい。
目的を持たない組織であるために分かりにくい。
分かりにくいから、ユースホステルの認知が低くなる。
昔なら、この分かりにくさを、青年たちや支部協会やグループ活動の地道な口コミ活動で補ってきた。いや、口コミ活動が広報のメインだった。多くの青年たちがサポートしてくれた。それによってユースホステル業界は大きくなれた。しかし、その青少年たちが高齢化して、ユースホステル業界から消えてしまうと、すっかり火が消えてしまったようになってしまった。
支部協会も、青少年たちの活動も、しだいに消えていった。
残されたものは、施設とマネージャーだけがのこされていた。
前にも言いましたが、ユースホステルのマネージャーは、ユースホステルの第一線ではありませんでした。不思議なことに、第一線は、ユースホステルではなく支部協会だった。利用者側であるグループ活動の方だった。宿屋は、あくまでも
『協力者』
の立ち位置にあった。
もちろん宿屋みずから第一線に入っていく者もいましたが、宿屋が業界を引っ張ったわけではない。ここがドイツのケースと徹底的に違っている。本家のドイツは、宿屋こそがユースホステル運動だったわけだが、日本の場合は、正反対で、利用者本体がユースホステル運動の主体だった。だからドイツユースホステル協会の会長は、
「日本のユースホステル運動は、ドイツにおけるワンダーフォーゲル運動に似ている」
とまで言った。
つまり、かっての日本のユースホステル運動は、ドイツにおけるワンダーフォーゲル運動のようなものであったと。逆に言うと、現在の日本ユースホステル運動の衰退は、ユースホステル運動が衰退したというより、いわゆるワンダーフォーゲル運動が衰退したようなものかもしれない。
「つまり利用者側の立ち位置にいた活動が衰退した」
という事なのですね。
(ただ、もともと日本ユースホステル運動は、利用者側の団体だった)
(最初に利用者ありきで、宿はあとからできた)
(だからもともとユースホステルの主役は、利用者側であった)
逆に言うと、かっての日本のユースホステル運動は、利用者がリーダーシップを発揮して運動を牽引してきた団体だったとも言える。しかし、そういう時代ではなくなってしまった。利用者は、別の青春(ライフスタイル)に熱中しだしたからです。だからこそ、宿側は、明確にユースホステルというライフスタイルを提案していかなければならないのです。長くなったので、今回は、これまで。次回でこのシリーズの最後とします。
つづく
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最近のお勧めユースホステルさんの紹介も、マネージャーさんなりの一つの回答なのかな?と感じております。
ユースホステルの過去の成長の最大の理由は、アナログな口コミですね。
これがやユースホステルの武器だった。
けれど、このアナログな口コミがインターネットによって駆逐される。
これが衰退の直接的な原因ですよね。
しかし、関係者は、かっての武器の威力を知らないまま、
その効果を意識しないまま、盛況を迎え
かっての武器が消えてしまったのも気がつかないまま
じり貧に向かっている。
これも全て歴史の検証を怠った罰ですね。