歴史を調べるとユースホステル業界の発展は、青少年たちの口コミと支部協会の活発な活動、それに無数のグループ活動によるところが大きいことは、連載で何度も何度も言いました。しかし、今まで発展を支えてきた青少年たちの口コミと支部協会の活発な活動、それに無数のグループ活動は、いつのまにか消滅しています。そして、それに変わるモノがない。
ユースホステルの過去の成長の最大の理由は、アナログな口コミですね。これがやユースホステルの武器だった。いわゆるマンモスの牙だった。しかし、関係者は、かっての武器の威力を知らないまま、その効果を意識しないまま、盛況を迎え、かっての武器が消えてしまったのも気がつかないまま、じり貧に向かっている。
ところで、アナログな口コミ。つまりユースホステルにとってマンモスの牙を、ユースホステルのマネージャーたちが嫌った時代があった。マネージャーたちは、マンモスやサーベルタイガーの牙を毛嫌いした。全部が全部ではないけれど、マンモスやサーベルタイガーをシャットアウトしようとしたことがあった。これが
ユースホステルオタクバッシング。
でした。
もちろんバッシングすべき理由が個々のユースホステルマネージャーにはあった。
けれど、それによって熱烈な信者たちを根こそぎ消してしまったのも確かだった。
しかし、この方法は、マーケッティングの法則から言うとちょっとはずれている。
『8対2の法則』
というものがあって、2割の顧客が8割の利益を生むのが一般的な考えですから、どの企業もリピーターを確保するために血眼になっている。どの企業も常連やサポーターを欲しがっている。にもかかわらずユースホステル業界のみが、どういうわけかリピーター排除をしてきた。一般企業とは異なる道を歩んできた。そして、アナログな口コミを根こそぎ排除してしまった。これは商売の法則に反する行為です。
企業の常識に反している。
私は、10年前に、北軽井沢ブルーベリーYGHのホームページを作っています。
で、多くのホームページをリンクしてきましたが、
10年前には、100以上の個人のユースホステル関連サイトがありました。
ホームページだけでも、100以上ものサイトを運営しているサポーターがいたのです。
それだけユースホステルオタクたちがいた。
それだけユースホステルサポーターがいた。
しかし、現在は、ほとんど壊滅しています。
ほぼ、皆無になっている。
私はユースホステルオタクたちに問題がないとは言わない。しかし、彼らが熱心なサポーターであったことは確かだった。熱心にホームページを立ち上げて、施設や料理の画像をアップしてくれた。いろいろ宣伝してくれた。そして仲間を増やしてくれた。これは揺るぎない真実だった。
それをユースホステル関係者は少しでも
『ありがたい』
と思っただろうか?
私の知る限り、そういう関係者たちは少なかったと思う。むしろ目の敵にしていた人が多かった。関係者たちは、マンモスやサーベルタイガーの牙を支えきれなくなっていた。問題をかかえる人たちを疎ましく思っていたと思う。しかし、何であれ彼らから恩恵を得ていたことも確かだったのだ。それを少しでも理解していたのだろうか?
問題は、そういったユースホステルオタクたち、ユースホステルサポーターを排除するならば、彼らが担ってきた宣伝や広報をユースホステル側が行わなければいけないということです。ユースホステルを支えてきたサポーターたちの口コミを排除するならば、その口コミをユースホステル側が代わりに行わなければならないんですね。
しかし、現実にはできてない。
できてないのならバッシングしては駄目です。
ホームページで、ユースホステル売り込むのは簡単です。
しかし、サポーターたちのように口コミを拡げるのは関係者には難しい。
私たちマネージャーが100人で頑張っても、
信者(サポーター&オタク)100人の力におよばない。
これは冷徹な事実です。
私も、一人のユースホステルサポーターとして、ユースホステルのサポーターのホームページを作ってみました。
http://yh.shiruman.net/
http://b-yh.seesaa.net/
http://kazeno.info/kanto/index.html
しかし、10年前の信者(サポーター&オタク)たちが作っていたホームページに遠くおよばない。マネージャーであるために本音の口コミが書けないことと、もう普通の御客さんではないからです。いくらマネージャーが頑張ってみたところで限界はある。これに対してサポーターたちのホームページの素晴らしいこと。ちょっと紹介してみましょう。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/noriyo/
http://homepage.mac.com/shoukichi44/shoukichi/
http://homepage1.nifty.com/SWALLOW-EXPRESS/
http://www82.sakura.ne.jp/~hashimoru/tabi-youth-hostel.htm
http://ameblo.jp/mika450/entry-10092481852.html
http://first-backpacker.info/category/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%9B%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB%E3%81%AB%E6%B3%8A%E3%81%BE%E3%82%8D%E3%81%86
昔は、もっと凄いサイトがいっぱいあった。
でも、みんな消えてしまった。
100近く消えてしまった。
この消えてしまった分をユースホステル関係者が補っているかというと、全く補えてない。
それどころかマネージャーの半分は、ホームページさえ作れないのが現状なのです。
もう一度言います。
ユースホステルのかっての成長の理由は、アナログな口コミでした。
これがやユースホステルの最大の武器だった。
けれど、このアナログな口コミがインターネットによって駆逐される。
じゃあ、ユースホステル側がインターネットを使いこなせているかというと、全く駄目。それでも初期の頃は、熱心な信者たちが自分たちでホームページを作って宣伝してくれていた。しかし、それさえも、ユースホステル側は、上手にサポートしてあげられなかった。
個人サイトを紹介したり感謝したりしなかった。
これによって、インターネットででおくれてしまった。
そして、ユースホステルがインターネットにとってかわられてしまった。
インターネットが無かった時代は、ユースホステルこそがインターネットだったのに、
その役割をインターネットに全部もっていかれてしまった。
ここで昔話しをしましょう。1975年のことです。私が中学1年生の時に『宇宙戦艦ヤマト』というアニメが放映された。それまでアニメに全く興味がなかった私は、この『宇宙戦艦ヤマト』の虜になってしまい、アニメやマンガに熱中しだしました。実は日本のアニメブームは、この『宇宙戦艦ヤマト』から始まりますが、当時には、熱狂的なファンはいても、マニアもオタクもいなかった。
しかし、いつのまにかマニアが出現し、オタクが現れ、社会からバッシングされるようになる。そのうち作家たちもオタクバッシングするようになる。しかし、マニアやオタクたちは熱心な購買層でもある。その購買層が市場を拡大していった。そして多くの作家たちを誕生させていった。だから多少、社会の顰蹙を買うことがあってもアニメ界は、マニアもオタクも拒絶しなかった。市場原理に忠実だった。
善悪を別にして、ユースホステル業界は、その逆を行ってしまった。ここには市場原理と別の法則が働いていた。そのために、善悪は別にしてユースホステルという青春(ライフスタイル)が絶滅しかかっている。というか熱心なサポーターたちが提唱していたライフスタイルが絶滅しかかっている。
まあ、それが悪いと言わないが、
代わりの青春(ライフスタイル)をユースホステル側が提案できてない。
これが問題なのだ。
昔は、今より提案できていた。ヤマケイなどの多く出版社がユースホステルを使った旅のモデルコースを掲載した本がたくさんあった。私も、そういった本を買って計画をたてたものだった。東京都ユースホステル協会などでは、窓口で旅のアドバイスをしてくれていた。他にもボランティアでアドバイスしてくれる団体がたくさんあり、ユースホステル新聞の地方版に掲載されていた。
もっとさかのぼって初期の頃のユースホステルは、会員の海外旅行レポートまでもユースホステル新聞に掲載していた。そしてユースホステルの会員になると、こういうワクワクなライフスタイルがありえるのだと実例をもって示していた。海外留学生の海外レポートも載っていた。こういう記事は、他のマスコミでは読めなかった。『地球の歩き方』は、そういうユースホステル新聞から生まれた。ユースホステル新聞の地方版にも、そんな記事がたくさん載っていた。感謝や感動の記事も載っていた。それを読んでは心をときめかせていた会員がたくさんいた。そういう時代もあったのだ。しかし、それらの大半は滅んでしまい、ユースホステル側からユースホステルという青春(ライフスタイル)を提案できなくなっていた。
と言っても、全てのユースホステルが、ユースホステルを使ったライフスタイルを提案出来てないのではない。一部のユースホステルは、ホームページなどで積極的に提案しているし、口コミなどを利用して独自のライフスタイルを提供している宿もたくさんある。しかし、それが全体として有機的に動いてないのだ。サポーターやボランティアを有効活用するシステムができてないのだ。一人旅しようと考えている若者の心が折れないようにサポートするためのシステムができてないのだ。
デルというパソコンメーカーがある。
パソコンを買ってトラブルがあると、24時間のサポートをしてくれる。
そうでなくても、サポート用のホームページにアンサーがついている。
マシントラブルがあると電話してサポートしてもらう。
JAFにしたって同じように安心を買えるシステムになっている。
そういうサポートが、ユースホステル業界には無い。
これが問題なのだ。
これが昔なら、ユースホステルには別のサポートがあった。会員同士の互助や、マネージャーが会員の親代わりになった。もちろんマネージャーは怖かった。親代わりだから厳格だった。でも困っていると助けてくれた。私が財布を無くして身動きとれないでいると、そっと金を貸してくれたマネージャーがいた。この人は昔気質で怖かったけれど困っている人には優しかった。でも、この人は規則を破るホステラーには遠慮無く怒鳴ったから今の時代には生きていけないと思う。
今では、旅人に対する、こういうサポートは通用しない。
「上から目線」
と言われてネットでバッシングされるに違いない。
現代は、デルやJAFのようなサポートでないと世の中に通用しない。しかし、もし会員証にデルやJAFのようなサポートがついていたり、便利リンクの入ったQRコードがついていたり、旅行傷害保険がついていたら、もっと会員は増えると思う。実現は難しいだろうが、イザ困ったと言うときに電話で旅人の達人から助言が得られるとしたら、どんなに若い人にとって心強いかしれない。
また、横山祐吉氏が積極的に推進したグループ活動をネットで展開させることも一案だろうし、ネットでサポーターを一から育てていくことも大切であろう。会員が発信するユースホステルレポートを日本ユースホステル協会のサイトで取り上げるなど、サポーターたち情報発信を利用する方法もあるだろう。そうすれば『地球の歩き方』よりも巨大なサイトになるに違いない。なにせ世界に5500の宿泊ネットワークがあるのだから。他にも、案は沢山あるが、一々あげたらきりがないので、ここでは書かない。
だいたい私が書いたユースホステルの復活策なんて、今から60年前に、中山正男氏と横山祐吉氏が、すでに実行しているものばかりなのだ。それを現代風にアレンジしているだけだ。私よりも、もっと良い案を提案できる人が、世の中にごまんといるはずである。
ただし、思いつきの案では絶対に失敗する。慎重に歴史を検証しないで、思いつきにたよってしまったら、失敗は目に見えている。だからこそ慎重にユースホステルの歴史をふり返ってほしい。そういう思いをこめて、今、本を執筆しています。
つづく
↓ブログの更新を読みたい方は投票を
人気blogランキング
【関連する記事】
- 8月26日はユースホステルの誕生日
- ラジオ体操で思い出した、30年前の南九州のすごみ!
- 宿屋(ユースホステル)の将来は?
- 今日は、研修と会議で東京に来ています
- 利用者の立場から、こんなサイトがあったら便利という御意見募集
- 浴槽の解体に驚かれたこと+α 修善寺YHについて
- 三余荘ユースホステルが無くなってしまう! その4
- インターネットで、じゃんじゃん書くのはいいことだと思ってます
- 函館YGH(北海道)が、昨日をもって閉館しました。残念。
- ユースホステルは甦るのか?27
- ユースホステルは甦るのか?26
- ユースホステルは甦るのか?25
- ユースホステルは甦るのか?24
- ユースホステルは甦るのか?23
- ユースホステルは甦るのか?22
- ユースホステルは甦るのか?21
- ユースホステルは甦るのか?20
- ユースホステルは甦るのか?19
- ユースホステルは甦るのか?18
- ユースホステルは甦るのか?17
各地のローカル線や当時建設中だった青函トンネル等、
全国各地を周りました。
利用したのは勿論YH。
封筒状のシーツ、夜のミーティング
当時はそれが当たり前だった様な気がします。
今でも思い出に残るのは浜田のYH。
ここは夕飯にスキヤキが出るのが有名で、
それがとても楽しみだった。
もう一度行きたいと思って先日検索してみましたが、
もうないみたいで、とても残念でした。
先日うちの息子が、日本に一人旅に行った時、
迷わずYHを薦めました。
高校生なんだから、相応の旅をさせるのがいい、
と思ったわけです。
我が家はヨーロッパでもYHをよく利用するので、
彼にとっても違和感がなかったようですし、
親としては普通のホテルや旅館よりも
YHの方が安心感があります。
息子は、日本人は勿論、外国人とも情報交換、交流をして、
有意義な旅をして来た様です。
正に旅の醍醐味を味わったわけですね。
YHだから出来たこと、だと思います。
かってYHを支えたものとして
・鉄道マニア
・サイクリスト
がありましたね。
この2つは、中学生や高校生をYHに呼び込んでくれた。
特に鉄道は、親を説得しやすかったと聞いています。
徐々に距離を伸ばして、宿泊の許可までとれるようになったから。
サイクリストは、『サイクル野郎』の影響が大きかった。
あのマンガを読んで何人の少年たちがYHに旅立ったことか。
なにしろYHをマンガで紹介してましたからね。
なのに、そういう趣味(鉄道・マンガ)をバッシングしちゃ駄目ですよ。
むしろ大いに推奨しないと。
趣味は通過点で、その先に何かがあるんだから。
みわぼーさん
出版しようと思ったのは、誰もやってないからが一つ。
国会図書館や大学の研究室に行くとわかりますが、
YHを研究した本は、皆無なんです。
希にあっても、幼稚なものしかない。
とても研究と言えるレベルのものじゃない。
これが青年団だと山ほどあるし、国の補助金でワンサカ出版もしている。
YHには皆無なんです。
その理由が分からなかったのですが、
調べていくうちに横山祐吉氏の意図が入っていたことがわかってきた。
じゃ、どうして、そういう意図をもっていたかと言うと、それなりの理由があった。
すると、日本のユースホステル界の問題点が見えてきたんです。
で、見えてくると自分が孤独になってしまった。
私には誰も仲間がいないと。共通の認識が持てなくなってしまったから。
それが出版を思い立った理由ですね。