(取扱い注意−これは平成7年に発行されたもので、現在では中身が古くなっています)
第4章・第一に二次災害の防止
まず何をするべきか? 次に何をするべきか? そういった手順を知っているかどうかが、震災マニュアルになります。
@二次災害の防止
A人命救助
B情報連絡
C避難
D情報収集
以上のような手順で行動するのが有事のためのマニュアルです。
特に大切なことは、@二次災害の防止です。これを一番最初にやるべきです。あとは、人命救助が先でも、情報連絡が先でも、避難が先でも特にかまいません。その時のケースにあわせて独自に判断して下さい。
具体的に言えば、ガスの元栓を閉める、電気のブレーカーを落とす、ストーブやヒーターやコタツ等の暖房器具をチェックする事です。
あと初期消火を行うことです。火災というものは、初期の場合ならコップ1杯の水で消せます。ですから可能なかぎり、御近所の火の元を確認し、どんどん初期消火を行うようにするべきです。
ここでもし初期消火に失敗してしまいますと、大勢の人たちが命を失ってしまいます。消防自動車は来られませんし、消火のための水も出ません。そうなると、つぶれた家や倒れた家具の下敷きになってる人を助ける事ができず、見殺しにして逃げなければならなくなります。
★初期消火のチャンス
よく聞かされるのが「ぐらっときたらまず火の始末」という言葉ですが、阪神大震災では、あまりにも揺れが激しく、「火の始末どころではなかった」といわれています。しかし、はたして本当に「火の始末どころではなかった」のでしょうか?
阪神大震災で実際におきた火災を検証してみますと、初期消火の仕方を知らなかったために二次災害になってしまった例が多かったようです。初期消火のチャンスは三回あります。「火の始末どころではなかった」と言うのは、言い訳にすぎません。それでは、3回ある初期消火のチャンスについて解説してみましょう。
@揺れを感じた時
どんな巨大な地震でも、初めの揺れは、それほど強い衝撃ではありません。火を使っているとき「グラッ」ときたら、その2〜3秒の瞬間が勝負です。パッと使用中の火を止めましょう。この最初の2〜3秒の揺れが、1回目の初期消火のチャンスです。
A揺れがおさまった時
もし、最初の初期消火に失敗した場合でも心配いりません。一度机の下などに伏せ、揺れがおさまるのを待って火の元を断ち、電気のブレーカーを落とせばいいのです。
B出火した直後
もし火災が発生した場合でも心配いりません。地震の揺れは、たったの30〜40秒ですが、火災は1〜2分程度では、まだ燃え広がりません。落ちついて消火作業を行なえば簡単に消せます。
初期消火が可能なのは、炎が天井に届くまでです。それ以上広がったら簡単には消し止められないので注意して下さい。手に負えないと思ったら迷わずに近所の人たちの応援をたのむことです。
★初期消火の具体的な方法
それでは、初期消火の具体的な方法について解説しましょう。初期消火が可能なのは、炎が天井に届くまでです。これがポイントになります。ようするに炎を天井に届けなければいいんです。
具体的に言うと、炎に何かを被せればいいんです。一番いいのは布団や毛布。衣類やカーテンでもいいです。何かを被せて一時的に炎を小さくさせ、その後に水や消化器で細かい消火作業を行なえばいいんですね。
ただし、油に引火したとき、野菜などを投げ込むのはやめましょう。野菜が濡れていると油がはじけ、炎が飛散します。一番いいのは、フタを閉めることですが、マヨネーズの入った容器を投げ込むという方法もあります。これは神戸市の消防職員が発見した方法で、マヨネーズの冷却効果と、主成分の卵たんぱくが固まって空気を遮断する効果で消せるんだそうです。
★電気のブレーカーとガスの元栓
ガスの元栓を閉める。これは常識ですね。でも、電気のブレーカーを切る事の重要さを、あなたは知っていましたか? 震災で電気系統がメチャクチャになっている家は、漏電をおこしやすく、いつ火災になってもおかしくないです。
あと電気ストーブや電熱器を使っている家なんかも要注意です。震災直後に火災がなかったとしても、電気が復旧した途端に、電気ストーブにスイッチが入り、火災になってしまいます。だから避難する時は、電気のブレーカーを切ることを絶対に忘れないでほしいですね。
★耐震消火装置の欠点
「私の家のストーブは、耐震消火装置があるから安心」と思っていると痛い思いをします。阪神大震災では、この耐震消火装置にも致命的な弱点があることが判ってしまいました。
耐震消火装置とは、ストーブなどが地震で倒れた時に自動的に火が消える機能の事なのですが、例え火が消えても、ストーブの余熱は残ったままです。この余熱が火災の原因になったわけですが、火災はわずかの余熱の中からも起きる事を覚えておいて下さい。
約二百人の焼死者を出した長田区の火災の原因や、地震直後に出火した火災はこうした石油ストーブが原因と見られています。
★ライフラインが復旧した時に二次災害がおきる
阪神大震災では、ライフライン(電気・ガス)が、復旧すると火災がおきました。二次災害は、震災直後にもおきますが、『ライフラインが復旧した時もおきる』ということをよく覚えておくべきです。ですから震災直後の他に、ライフラインが復旧した時にも二次災害に気をつけなければなりません。
地震発生から48時間で、神戸市内で起きた火災は約 250件。しかし、火災はその後も発生し統け、2月1日までに約 450件にのぼりました。それらの火災の多くは、ライフラインが復旧した時におきています。
地震で傷んだ屋内配線のショートがあったり、スイッチが入ったままだったコンロ、トースター、電気ストーブなどの電気製品が過熱して火災につながったケースや、天井の蛍光灯など照明器具かた出火したと見られる火災や、熱帯魚う水槽に入れた水温調節用のヒーターが原因で出火したケースもありました。
★火災が無かった淡路島
不思議なことに震源地の淡絡島では、地震後に火災がほとんどありませんでした。約六千棟の家屋が全半壊したにもかかわらず、火災の発生はたったの二件。
調査によると、淡路島住民の多くが避難に先立ちガスの元栓を閉め、電気のブレーカーを切ったためと言われています。あと地域社会のつながりが強さが、二次災害を防いだと言われています。
これとはまったく対照的に、都市部では火の始末に、からり無神経だったことが、大阪市消防局の調ベでわかっています。約五百人の大阪市民に電話でアンケート調査したところ、地震が発生したとき一割強の人が、火をそのままにしていたそうです。
★水を貯めること!
もし、自宅が倒壊してなかったら水を貯めて下さい。震災直後の数分間なら水は出る可能性があります。逆に水が出るからと言って安してはいけません。どこかで水道管が破裂していて、いずれ断水になってしまう可能性があるからです。
水は、飲料水・初期消火のための他に、怪我に備えるために必要です。薬があっても水がなくては、効果的な手当ができません。
登山家は、山にいる間は、ある程度の水を確保していますが、これも飲料水というより怪我に備えるためのものなんですね。特にヤケドをした人には、水が必要不可欠です。
そういえば、水洗トイレのタンク内に入れるタイプの芳香剤がありますが、あれは使うのを止めるべきですね。非常の際、飲み水として使えなくなります。あと、マンションなんかの場合、断水になる前に、風呂に水を張っておいて助かった例が多かったです。
それから人間は、医学的には標準体重より10キロ重たい場合、水さえあれば全く何も食べずに1ヵ月間生きられることを知っておいて下さい。これを知っているだけで、かなり不安が軽減されると思います。
ちなみに東京都の場合は、神戸のように断水になりにくくなっています。東京都の水道水は、地下に巨大プールがあり、それを経由して家庭の水道に供給されています。
関東で巨大地震がおきて、水道管が破裂しても、地下プールにはたっぷりと水が残される事になり、消火栓の水が断水になる事はないそうです。
それに水の配給は、阪神大震災のように給水車からではなく、地下プールより行いますから安心です。ちなみに、この地下プールは、1200万人の都民が3週間生活できるだけの水が蓄えられています。
さらに無駄話をしましょう。東京都の震災対策は、前鈴木都知事によって、世界最高の準備ができています。神戸では、1食も用意されてなかった住民用非常食料を、東京都では数千万食もの非常食が用意されています。これは、全都民の2日分の量になります。
最初の1日分は区が用意し、2日目の分は都が用意する事になっています。東京都全部が崩壊する事はないですから、これだけでもかなりの長期間、食事に困る事はないと思います。さらに、3日目からは自衛隊と共同で救援物資を輸送するシステムが出来ています。
ちなみに東京都と自衛隊は、非常に緊密な連絡を取りあっていて、どの部隊が☆☆区☆☆町に出動するといった細部まで決っています。食料の輸送ルートも決っていますし、車輌の割り当ても決っています。関東大震災が起きた場合のマニュアルができているんです。
交通規制も決められています。震災直後から環状7号線より都心部は、車輌通行止になり、環状7号線は、緊急輸送路となります。それとともに避難専用の避難路線も決まっていて、神戸の時のように渋滞する事を未然に防いでいます。
警察も震災交通システムを持っており、自衛隊と共同作戦をとるようになっています。ちなみに警視庁管轄のパトカーには、ラジオ放送も可能なくらいの大出力の警察無線が積まれており、NTTが壊滅しても通信に影響はありません。
面白いのはライフライン復旧計画です。東京都のライフラインは、ブロック別に分割されており、被害の小さいブロックから集中的に復旧作業を行うことになっています。
本当ならば被害の大きい方を優先的に復旧作業を行なうべきなんでしょうが、逆に被害の小さいブロックを優先させるのは、すぐに復旧できるブロックを優先することによって、早く復旧した地域を拠点にして、復旧地域を拡大していく計画を持っているからです。
これによって1ヵ所でも多くの病院・消防署・警察・企業などを活動可能状態に持っていき、それらをもって大規模な復旧プロジェクトを組むことが可能になるからです。
東京消防庁も、ユニークな震災対策を持っています。東京消防庁の消防方法は、初期消火です。そのために東京都では自主消防組織の編成が進んでいます。不幸にして大火になった場合でも、避難路を確保する消防方法をとっています。
さらに東京都では、震災用の作戦司令室を持っています。以上の点を考えてみると、阪神大震災の被害のある程度の部分は、人災だったと言えるかもしれません。神戸に東京なみの防災意識があれば、ある程度、被害を食い止められたと考えても良いのではないでしょうか?
★消化器のの使い方
駅に、町中に、ビルの中に、アパートの外などに消化器は必ず置いてあります。条令で設置が義務づけられたものですが、これらの消化器は私物ではなく公共物になります。いわゆる所有権というものは、ありませんから火災がおきたら遠慮なく使用して下さい。
消化器の使い方ですが、安全ピンを抜きホースを火元に向けレバーをにぎるだけで使えます。一般の火災の時に、気が動転して安ピンを抜くことを忘れ、消火器を使えなかった例がよくあるそうですが、くれぐれも気をつけて下さい。
それでは、消防庁が指導する消化器使用のポイントを解説しておきます。
@姿勢を低てして熱や煙を吸いこまないようにする。
A薬剤は手前からホウキで地面を掃くように火元にふりかけます。
B風上から風下へ薬剤が放出される時間は10〜20秒です。あせらず確実に火元にすることが大切です。ふとん、座布団、畳などは、粉末消火器で消したつもりでも後から燃え出すことがあるので、さらに水をかけておくことも忘れないで下さい。
★煙に対する注意
難燃性の壁材や塗装には、燃えると有毒なガスを発するものもあるので、煙は吸いこまないようにしましょう。阪神大震災とは直接関係は、ありませんが煙だけで何十人という人がバタバタと倒れてしまったケースがありました。
煙は、上へ上へとあがる性格をもっています。もし煙にまきこまれたら、できるだけ姿勢を低くして一刻も早く外に逃げ出すことです。それから濡れ夕オルを口にあてるといいと言われています。
つづく
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