(取扱い注意−これは平成7年に発行されたもので、現在では中身が古くなっています)
第5章・第二に人命救助
二次災害の防止に成功した後に私たちのやるべき事は、人命救助です。
「なんで見ず知らずの人間を助けにゃならんのだ?」
と思っている人に忠告しておきます。そういう考えの人には、しっぺ返しが来ます。
地震は一時的な事件ですが、人間関係は一生続くんです。阪神大震災の時に、どう行動したかによって人生が変ってしまった例は多かったんです。紙面の関係で、それらを紹介できないのが残念ですが、ほんのちょっとした自分勝手な行動が、自分の人格の全てだと思われてしまって、後で人間関係に苦しまなければならなかった人も多かったんですね。
人間の真価は、極限状態に現れるといいます。ということは、私たちは『極限状態によって試される』とも言えます。『
イザとなったら、どのような行動をとるか?』それが全部、バレてしまうんですね。
さて人命救助の方法ですが、具体的に言いますと、
@救助を必要とする人を発見すること
A連絡すること
B助けること
になります。「あたり前のことじゃないか」とおっしゃる人も多いかと思いますが、イザとなった場合、この当たり前のことが、とても難しいんです。
@救助を必要とする人を発見すること
震災では救急車が来ません。病院だってどうなってる事か。そんな状態の時に「政府は何やっとるんだ!」と言っても始まりません。そこで人命救助の方法を簡単に説明しますと、何よりも『救助を必要とする人を発見すること』が大切です。
そのためには何よりも情報を集める事ですね。全く見ず知らずの人の家でもドンドン声をかけてみる事です。ここで声をかけそびれると後が大変ですよ。ひょっとしたら、この後に長い避難所生活(共同生活)が待っているかもしれないのです。
震災前と震災後では、人間関係が 180度変ってきます。震災直後は助けあって生きていかなければなりません。だからこそ積極的に御近所の門を叩いてみる必要があるんです。そうしないと避難所で気まずい雰囲気のまま長い生活をしなければならなくなります。
A連絡すること
発見した後は、『A連絡すること』です。ただし、消防員もレスキュー隊も救急車も来ない可能性があります。でも連絡は絶対に必要です。これは、自衛隊の災害派遣や国会対策と密接な関係があるんです。
皆さんは震災直後の被害状況をテレビで見て、どう思われましたか? 私は「こりゃいかん、何千人も死者がいるかもしれんぞ」と直感しました。しかし、死者に関する発表は百名程度と少なく、政府の対応は、まだのんびりしたもので、村山総理大臣にいたっては財界人と御食事会をしている始末です。さらに被災地の知事は、自衛隊からの出動連絡を断ってしまっています。ムチャクチャな話ですが、どうしてこんな事になったのかを説明しましょう。
自衛隊は、自治体が派遣要請を行なわないと動けないんです。勝手に動くと大変な問題になるんです。それに災害に関する仕事は、自治体の仕事なんです。これも政府が勝手に動けない。政府が勝手に動くと国家権力の介入になってしまうんです。
じゃあ「悪いのは全て自治体なのか?」と言うと、これもちょっと違うんですね。自治体は、現場から被害届が届いてからでないと自衛隊の派遣要請ができないんです。自衛隊を呼ぶと言っても、百人の被害状況なのか、千人の被害状況なのかで全く違ってくるんです。
国に応援を頼むのにしたって、どういう被害状況かをを報告しないと国も応援できないシステムになっているんです。具体的に言えば、現場の情報を市町村が、都道府県に報告し、それらの情報に基づいて県が国に応援を頼むシステムになっています。都道府県は、市町村から被害報告がこないと動けないんです。
だから生埋めになっている生存者を発見したら即座に連絡をしなければなりません。『連絡すること』によって政府を動かさなければなりません。
B助けること
助け方にもいろいろあります。具体的な例をあげて御話ししたいと思います。
☆死者は圧死が90パーセント
死者は圧死が90パーセントを占めていました。しかも、発見された死体の多くが死後硬直していなかった。もうちょっと発見が早かったら助かっていた。
ちなみに倒壊した所から救出された人は、約千人です。ただし、そのうちの70パーセントは亡くなっています。結局三百人くらいしか助かっていません。救出が遅れたからです。筋肉が長時間圧迫されると、筋肉内の蛋白質が溶け出して急性腎不全を起こします。ですから地震では、48時間以内でないと、ほとんど助からないのです。震災直後の48時間は、人命救助が最優先されなければなりません。
☆老人・障害者を捜そう!
犠牲者は、老人・幼児・障害者といった震災弱者ばかりでした。その中でも老人の犠牲者が一番多かったです。骨が弱くなっている老人は、ちょっとした事で骨折したりします。それに寝たきり老人が逃げるに逃げられずに焼け死んでしまった例も多かったと聞いています。
視覚障害者も聴覚障害者も透析を必要とする障害者も、その各種の障害者が、だいたい20〜30人の犠牲者となってしまいました。健丈者の死亡率に比べると、かなり高い率で犠牲者を出しています。
あと障害者の家庭では、障害者の家族の死傷率も高かったようです。震災のような災害では、障害者の家族は、とても大きな危険にさらされるようです。
震災がおきたら、老人・幼児・障害者といった震災弱者を優先に助けたいものです。自分の家の後かたずけより、それらの震災弱者の救出を積極的に行いたいものです。きれいごとではなく、そういった活動は必ずその後の人間関係に影響してきます。震災は、後遺症の長い災害ですから。
☆ある老人の悲劇
阪神大震災後54日目に、アパートの倒壊現場から1人の老人が遺体で見つかりました。目立った外傷もなく、胃の内容物も消化されていたことから、この老人は生き埋めになって餓死したと見られています。
驚くことに、そのアパートの住人は、誰一人として老人が死んでいる事に気が付きませんでした。近所の人たちは、この老人が、どこかの避難所で生活しているものと思い込んでいたわけです。こういう悲劇は、普段から近所付き合いがあれば防げたケースなんですね。
☆建物の崩壊は、震災直後だけではない
意外な事ですが、建物の崩壊は地震の終った後にもありました。具体的に言えば、震災15分後に倒壊した家屋がゴロゴロあったのです。1時間後に倒壊した家や、3日後に倒壊した家もあります。酷いのになると、マスコミのヘリの爆音で倒壊した家さえありました。崩壊をまぬがれた家だからといって安心していると、地震後に家の下敷になってしまう可能性があります。
☆みんなボーゼンとしていた
震災直後、みんなボーゼンとしていたらしい・・・・。「らしい」と言うのは、「みんなボーゼンとしていた」と言われると、「私は、そんな事はない」と反論してくるからです。しかし、やはり「みんなボーゼンとしていた」らしい。
これは、多くの直接被災されたジャーナリストたちが証言している事です。震災直後の被災者の脳は空白状態であり、火事が起きても、人が苦しんでいても泣き叫んでいても、ただボーゼンとしていただけだったと言います。そして、そのボーゼンとしている間の記憶は無いらしい。
高見議員は、そういうボーゼンとしている人を正気に戻すのに、ずいぶん苦労されたそうです。また、高見議員自身も、やはりボーゼンとしていたらしく、自分を正気に戻すために東京の秘書の所に電話をしたそうです。
☆言葉の壁
震災を受けた人のショックは、想像以上に大きいです。ですから、てんかん症などの病気を持っている人は、突然発作で倒れたりします。そんな時に適切に処置できる知識を私たちは持ちたいものです。
これは震災の時の事例ではありませんが、ある外国人(cw.ニコルさん)が、路上で窒息状態で倒れている老婆を発見しました。ただちに『マウス・トウ・マウス』で、人工呼吸を行なったのですが、通りがかりの日本人は、それを変態行為とみなして、殴る蹴るという暴行を行ないました。
それから似たケースとして、聴覚障害者が仲間を助けてもらおうと、必死に道行く人に訴えたけれど、相手にされなかったケースがあります。手話が通じないために、必死の思いで話そうとする聴覚障害者の、「アア・・ウウ・・」という意味不明な訴えを、みんな気味悪がったんです。そのために聴覚障害者たちを助ける事ができなかった。手話しか話せない聴覚障害者。日本語の話せない外国人。こういうハンデを持つ人に対して、もっと思いやりが欲しいですね。
つづく
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