御客さんに、こんな質問をされました。
「ブログなどを読むと、スーパーで仕入れをしているみたいですが、業務用専門店で仕入れはしないんですか?」
「あまりしませんねえ」
業務用専門店といっても、業務用スーパー(ユーパレット)のことではありません。あれはスーパーです。それとは別に業務用専門店があるんです。ある程度の注文があるペンションなんかだと、注文すると商品を届けてくれる業務用専門店があるんですね。それは全国チェーンの巨大企業だったり、地域のお肉屋さんだったり。
地域のお肉屋さんといっても、地域では大きな企業です。その企業が、宿屋やペンションに大きな冷凍庫をプレゼントしてくれる。そして、その冷蔵庫に注文した品物を納めてくれる。もちろん肉以外のものも持ってきてくれる。サランラップ1個から納めてくれる。うちの近所にある喫茶「ハイジ」なんかは、そういう業者を使っているし、プチホテルクラス以上の規模の宿屋の大半が、それを使っています。わざわざ自分で買い出しにはいかない。人件費とガソリン代がかかって、かえって高くなるからです。
大手の業務用専門店だと高瀬物産なんかが有名です。
http://www.takasebussan.co.jp/products/index.html
高瀬物産の配送車は、嬬恋村でも軽井沢の道路でも富良野の道路でもジャンジャン走っています。皆さんの町にもジャンジャン走っているはずです。仲間のペンションなんかは、この高瀬物産から買っています、圧倒的に安い上に、夏の忙しいときに助かるからです。
そこまで大手でなくても各県に中小の業務用専門店がわんさかあります。社長が議員だったりするので、いろんな意味で便利なこともあって利用するケースもあります。一般的には、こういう業者を通して買っているケースが多いのです。
次に多いのが、スーパーに似た業務用専門店です。
と言ってもスーパーと違うところは、一般客が入れないんです。
飲食の営業許可証がないと入れない店がある。
顔写真付きの入店許可証(カード)がないと買えないんです。
そういう店は、安いだけでなく、オリジナルブランドの商品を多く出している。どういう事かと言いますと、一般のスーパーで買えない商品であるために、御客さんが、
「あ、あの食材を使ってる!」
と、特定できないようになっているんです。つまり、その店で仕入れれば、御客さんは食材を特定できない。独占契約を結んだワインや日本酒や珈琲豆なんかが置いてあって、他では買えない。そのために、御客さんに原価を知られずに売ることもできるし、一般では買えない味のソースなんかも仕入れることもできる。
肉も世界各国のものがある。
例えば、豚だとベルギーが一番安い。アメリカは高い。カナダは中間。味も様々といったように使い分けができる。米もブランド別に買えたりする。味見の炊飯ジャーが置いてあって、味比べができる。で、値段と相談しながら仕入れていく。
こういう店は、非常に便利で、1ヶ所で全ての商品が仕入れられる。無いものはないし、一般客がいないので、混雑することもない。時間と人件費を節約できるし、便利なことこのうえないんです。
「ブログなどを読むと、スーパーで仕入れをしているみたいですが、業務用専門店で仕入れはしないんですか?」
と聞いてきた御客さんは、それを知っている人で、自らも飲食店を経営している人でした。
「正直言いまして、昔は利用していたこともあったんです。ペンションとユースホステルの2軒を営業していたときに。でも今はやめました」
「どうしてですか?」
「地場産にこだわりたくなったんです」
「なるほどね」
オリジナルブランドの商品は、便利と言えば便利でした。御客さんが知らない味を手軽に提供できるからです。しかし、途中で疑問に思うこともでてきた。配達商品も、便利派便利なんですが、素材を選ぶ努力を放棄すると、腕がだんだん鈍ってくるんですね。比較する目が鈍ってくるし、良いものと出会えなくなってくる。それに気がついたときに、ペンションを閉鎖する決意がついたんです。3年前のことです。
しかし、ペンションをやめて、ユースホステル一本にしてよかった。ユースホステル一本にしてから、クリエイテブな仕事ができるようになった。嫁さんが誕生ケーキを焼くことができるようになったのも、ペンションをやめてからです。北軽井沢ブルーベリーYGHの庭が立派になったのも、ペンションをやめたおかげです。量の拡大をやめたおかげで、質の向上に力をそそぐことができるようになった。
で、業務用専門店で仕入れを止めて、農家から野菜を仕入れたり、いろんな店をまわって一番よいものを選ぶ楽しみも味わえるようになりました。コストはかかりますが、これがけっこう楽しいのですね。
あと、御客さんが、よく使っている見慣れた食材で、美味しい料理を提供することが、料理の王道ではないかと思えてきたんです。御客さんが手に入れることのできないオリジナルブランドの商品を使って料理するのは簡単だし、御客さんにレシピを聞かれても、御客さんは絶対に真似ができないんです。それで勝負するのは、非常に簡単。でも、それでいいのかな?と思えてきた。御客さんが手に入れられる食材で美味しく造ることの方が意味があるのではないかと思えてきたんですよ。それも普通の家庭料理で・・・・。
つづく。
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