2012年06月19日

流星

吉田拓郎の「流星」について

私の大好きな曲に吉田拓郎の「流星」という曲があります。
この曲を好きな人は、多いのでは無いでしょうか?
あの武田鉄矢も、この曲が大好きだと聞いています。
理由は、歌詞が良いからだそうです。
特に、感動する歌詞は、この部分です。


「幸福だとは言わないが
 不幸ぶるのはがらじゃない」



 いいですよね。
 すごく良い。
 男の哀愁が、
 男の強がりが、この一言ににじみ出ている。


 さて、本題です。
 この曲が大好きという、若い人がいた。
 で、歌詞の話で盛り上がったのですが、
 会話の途中で「変だな?」と思ったので聞いてみたら
 歌詞の意味が、よく分かっていなかった。
 特に

「星を数える男になったよ」

 の意味が分からなかったらしい。
 で、YouTubeの動画のコメントをみたら
 こんな書き込みもあった。


「星を数える男になったよ…
 意味はよくわからんがなんかいい
 zyukou1 3 日前」


 そうなのか?
 意味が分からなくても、歌詞の良さは分かるのか?
 そのへんが疑問だったので聞いてみました。


「そもそもこの歌は、何の歌だと思う?」
「うーん」
「イメージしてごらん」
「・・・」
「なんとなくイメージがわいてこない?」
「うーん」
「シンプルに考えれば分かるよ。絶対に分かるはずだから」
「ヒントをください」
「ヒント? 題名でわからない?」
「流星?」
「そう、流星だよ」
「わからない」


 この曲は、全編が間接的な表現で満ちているが、決して難しい曲ではありません。歌詞を素直にストレートにイメージすれば、意味はおのずと分かってくる。出だしの歌詞の一部を紹介して解説してみましょう。


 たとえば僕がまちがっていても
 正直だった悲しさがあるから
 ...流れて行く

 静けさにまさる強さは無くて
 心の中では何を待てばいい
 ...流れて行く



 これだけ聞くと、意味が分からないかもしれない。しかし、一つだけ確かなことがあります。星が流れていくのを眺めている自分自身の姿です。つまり、ここで大切な部分は「...流れて行く」のところなのです。星が流れているのを、浅間牧場の草原で寝そべって星をみている自分の姿を想像すればいい。そして、何か考え事をしている。そのつど、星が流れていくのをみかけてしまう。そういう歌詞なのです。で、歌の中盤で、何があったかがわかってきます。


 たしかなことなど何も無く
 ただひたすらに君が好き
 夢はまぶしく木もれ陽透かす
 少女の黒髪もどかしく

 君の欲しいものは何ですか
 君の欲しいものは何ですか



 ここで、はじめて歌詞の中の主人公は、好きな人がいることを独白します。何があったのかわかりませんが、少女のことを考えている主人公の深層の中には、まぶしい木漏れ日に前が見えないでいる。もどかしい。で、好きになった女の子に何かしてあげたい気持ちでいるが、ここから急展開します。


 さりげない日々につまずいた僕は
 星を数える男になったよ
 ...流れて行く



 何かへこんだことがあったのでしょう。何かにつまずいた。で、何も出来なくて、浅間牧場の草原で寝そべって星をみている自分がいる。で、

「...流れて行く」

 となる。なにかボーッと考えているが、答えが出ない。
 時間はすぎていき、流れ星を何個もみてしまう自分がいる。
 そんな自分に対して
「星を数える男になったよ」
 と自嘲している。
 しかし、この男は、決して後ろ向きではない。

「幸福だとは言わないが
 不幸ぶるのはがらじゃない


 と突っ張ってみせる。
 けれど、流れる星がきれいすぎる。
 ただそれだけに悲しくなってしまうのです。
 突っ張ってはみたけれど、流れる星がきれいすぎるために悲しくなってしまう。

 そういう歌詞なのですが、決して悲しい曲では無く、自分に何かを問いかけている曲なのですね。




つづく
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posted by マネージャー at 00:47| Comment(9) | TrackBack(0) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
美しい感情ですね。
若い時はもう二度とこない。
こんな気持ちになって星空の下にいることはもう私にはないのです。
人を苦しいほど思う気持ち、きれいです。
星空も綺麗です。
ああ・・いいなあ。
私にもこんなシーンあったかも・・と錯覚してしまう情景。
罪な歌詞です。
Posted by うさぎ at 2012年06月19日 10:42
いいね。
あらためて、いいねって思う。・
Posted by エバ at 2012年06月19日 15:47
うさぎさん
エバさん

>人を苦しいほど思う気持ち、きれいです

たったままで流星は、そんなに何回もみられません。
きっと寝そべっていたんだと思います。

私も高校時代に、草原で寝ながら星をみたことがあるのですが、何時間も見続けると厭きてしまう。30分が限度でした。ところが、何か考え事をしていると、何か悩みがあると、何時間もみていられる。厳密に言うと、星をみているわけではないけれど、星をみながら時間がたつのを忘れてしまうのです。何時間も何時間も星空をながめながら、悶々としてしまう。

星というものは動きません。だから考え事をしていると、星を見ていても、星が目に入ってない。そのために時間が止まってしまうんです。けれど流星はちがう。流れる毎に「ハッ」と我に返ってしまう。流星に目が気がついてしまうんですよ。そして、ああ綺麗だなと、妙に感動してしまうものなのですね。このへんは、心当たりのある人なら分かってくれると思います。

Posted by マネージャー at 2012年06月19日 22:49
いつも考えさせられる投稿ありがとうございます。今米国シアトルで日本からの漂着物に対応しております。8月一時帰国しますが、故郷の高
知に加え、東京で人間ドックに入った週末に少なくとも長野県栄村に入る予定ですので、もし時間がありましたら立ち寄らせてください。
Posted by けんご@異骨相 at 2012年06月21日 07:44
漂流物対応ですか!
そういえば、あのハーレーには感動しましたね。
もしまたお会いする機会がありましたら、いろいろ聞かせてください。
Posted by マネージャー at 2012年06月21日 21:21
家政婦ではありませんが、承知しました。
Posted by けんご@異骨相 at 2012年06月22日 07:15
この"流星"は、彼のただ一人の娘さんに歌った曲みたいですよ
Posted by さい at 2012年11月07日 20:54
この歌は、ドラマの主題歌です。ドラマをみると、どうして、こんな歌詞なのか、もっとよく分かると思います。
Posted by マネージャー at 2012年11月08日 00:28
特に拓郎ファンではありませんが、歌詞の中の「君」は昔の奥さんとの間に生まれた娘のことを唄っていると聞きました。作られる段階ではドラマの内容とは直接関係なかったかと思われますが記憶違いでしたか…
Posted by k34bntak at 2014年01月27日 12:17
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