私は、毎年、10月連休後に、北アルプスに登って北アルプスの現状を調査し、最近の山情報を仕入れています。なぜ10月連休後かと言いますと、一年で最も晴天率の高い日だからです。10月10日の体育の日は、一年を通して晴れの多い時期とされ、10月10日にオリンピックの開会式が行われたのも、この時期の気候が考慮されてのことです。
それから、なぜ定期的に北アルプスの調査を行うようになったかと言いますと、私が持っている山の情報が古くなりすぎているからです。だから北アルプスにいってきてヒアリングしてこないといけない。
10月8日の連休最終日。御客様を全員送り出して、大急ぎで部屋掃除をし、荷造りをし、準備完了したのが昼の11時。水をとめ、火の元をとめ、出発したのが13時頃です。ここから上高地の入口である沢渡まで、車で3時間のコースです。もう何度も行っているので、道は全て記憶している。16時頃には沢渡に到着。ここからシャトルバス(1200円)に乗るのが一般的なのですが、私たちは、登山情報のヒアリングが目的なので、タクシーに乗ります。タクシーは、4000円もしますから交通費はかかりますが、それにみあう情報が得られるので、私たちは必ずタクシーを使います。今回も、貴重な情報が得られました。
「今年は、混んでますか?」
「紅葉が良いですからねえ」
「困ったなあ、宿はとれないかなあ」
「御客さん、予約してないんですか?」
「山小屋なら、なんとかなると思って」
「最近は、高いホテルを避けて山小屋に泊まる一般客の人が増えましたから、明神・徳沢あたりの小屋でも油断ならないですよ」
「ここなら泊まれるという宿はありますか?」
「アルプス山荘かなあ」
「アルプス山荘? 聞いたことが無いなあ」
「旅館山小屋組合に入ってない宿なので、どこにも広告が載ってないんです。値段も上高地のホテルの中で一番安いです。しかも必ず開いている。誰も知らないから」
「場所はどこ?」
「バスターミナルの目の前です。ちょっとよってみましょうか」
てな具合で、タクシーには貴重な情報が転がっています。結局、希望の宿に泊まれましたからアルプス山荘には泊まりませんでしたが、こういう情報はありがたい。タクシーを下車した私たちは、真っ先に観光案内所に直行。宿を確保するためです。しかし、気むずかしそうな外国人相手に、てんやわんやしている。案内所で宿を手配してもらうと、案内所が手配料をもらうことになっているのだが、外人には、それが納得できないらしい。
「だったら自分で探せよ!」
と言いたくなる。後ろに、私などの人間がつかえているのだから。日没まで、あと1時間しかない。宿(山小屋)の確保は緊急なのだ。しかし、融通のきかない外国人はねばる。
「しかたない、直接、俺たちが宿に電話しよう」
今回、私たちが泊まりたい宿は、明神池の嘉門次小屋である。でなければ、明神池の「ひだのや」「明神館」のどれかである。まず、嘉門次小屋に電話したら、男一人しか泊まれないという。仕方が無いので、明神館に電話して、やっと部屋を確保した。相部屋一泊二食で8400円だった。
で、外人さんの方は、どうなったかというと、案内所が折れて手配料はとってなかった。そのかわり電話で
「外人さんは、手配料ということを理解しないので、そちらの方で、手配料と宿代の両方を請求してください」
と、ちゃっかり宿側に手配料込みの価格をとるように指導していた。
まあ、当然と言えば当然のことだと思う。
逆に、私たちは、このトラブルのおかげで、
直接、宿に電話することになり、手配料を支払わなくてすんだ。
で、案内所の人は、不機嫌になったかな?と思いきや、ニコニコしている。
変だな?と思ったら山屋さんだった。
私の姿をみて同類がやってきたと思ったらしく、世間話がはずんだ。
こうなってくると、こっちのものである。
さっそくヒヤリングを開始した。
「今年の涸沢は、どんなかんじですか?」
「人だらけだよ」
「へえ」
「ひところ登山人口が減ったと言われていたけれど、戻ってきたね」
「山ガールですか?」
「それもあるけれど、写真だね」
「写真?」
「中高年の写真マニアが紅葉をねらってきている」
「テント場は混んでますか?」
「もう、ぎっしり」
「えええええええええええええええええええええええええええええええええ?」
「昔なら、1テントに5人くらいで寝たものだけれど、今は、一人一テント!」
「一人一テント? テントも個室時代なんですか?」
「そう、テントも個室時代。10人のパーティーがやってきて、10テントを張る。昔なら2テントだったのに」
「アハハハハ、漫画みたいですね」
観光案内所のヒアリングは大成功であった。
有意義な情報を大量に仕入れて明神池の明神館に向かいました。
17時30分。明神館に到着。
まずマネージャーに挨拶して部屋に案内してもらった。
ここは、従業員よりも、マネージャーの方が愛想が良い。
部屋は、ユースホステルを思わせる二段ベットであったが、マネージャーの心遣いで個室で使わせてくれた。とても気の良いマネージャーであった。
山ガールコンテストもやっていた。
食事もなかなかである。
食事の時は、ユースホステルのようにミーティングも行っていた。
歴史について、山について、宗教について、たっぷり1時間は解説してくれたとおもう。
で、私の席の隣に、例の外人さん夫婦がいた。
まさか、この外人さんたちと、次の日も一緒の山小屋に泊まるとは、この時は想像もしてなかった。
しかし、事実は小説より奇なりである。
つづく。
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