子供は、育てたようにしか育たない。
これが、歩けるようになって、ますますハッキリしてきた。
客室を掃除しつつ、館内をウロウロしていると
息子も一緒にウロウロし出す。
私がバタバタしているものだから
息子もバタバタしている。
そして親の後を追いかけている。
で、座ってタオルをたたんでいると、
息子も床に座って大人しくなる。
私が静かだと息子も静かである。
クイックルワイパーで床を拭いていると、
息子もリネン室から、クイックルワイパーをとりだして
一緒に掃除をはじめる。
もちろんワイパーに紙が付いてないので掃除なんかになってない。
はっきり言って邪魔なだけであるが、
癒やされるので、放置しつつみている。
そんな毎日が続いていると、嫁さんが不思議そうに言ってきた。
「ベビーサークルの外に、オモチャがたくさん捨ててあるのは何故だろう?」
「ああ、なるほどな」
これも親の真似であることが、すぐに分かった。息子が何か危険なもの(鉛筆や口に入れそうなゴミ)をもっていると、私がすぐに取り上げて、ベビーサークルの外に放り投げているからである。それを真似して、自分もオモチャをベビーサークルの外に放り投げているのだ。
『息子の行為の全ては、親に原因がある』
と考えて息子の行動パターンを観察していくと、息子の行動の原因の9割以上は、解明可能である。解明できない1割は、テレビなどの影響であろう。
ある日、息子が変な動きをしていたのだが、しばらく原因がわからなかった。スクワットを繰り返したり、倒れたりである。なんだろう?と不思議に思っていたら、NHK教育テレビの体操の真似であった。まだろくに歩けない1歳5ヶ月の子供がスクワットをするわけだから、テレビの影響も捨てた物では無い。なので、我が家では、はやくからNHK教育テレビの番組をかたっぱしから録画して、息子に見せている。
子供が産まれるまでは、NHKには言いたいことがいっぱいあった。受信料は高すぎると思った。しかし、子供が産まれるとNHK教育テレビの素晴らしさがわかった。NHK総合テレビは、今でもいらないと思っているけれど、NHK教育テレビは、幼児番組に限って言えば、すばらしいの一言につきる。最強のベビーシッターである。
まあ、そんなことは、どうでもいい。
NHK教育テレビで、フラダンスの番組があった。見た目と違ってフラダンスというのは、すごいハードな踊りであり、プロレスラー顔負けの肉体改造が必要な、過激な踊りである。飛んだり跳ねたり動いたりで激しく肉体を酷使する。奇声もあげる。その番組をみた息子は、同じように奇声をあげつつ飛んだり跳ねたり動いたりする。
『テレビの影響も、そうとうなものだな』
と呆れてしまった。
長い前置きになってしまったが、本題にはいる。
夏休み中、いろんなお母さんたちから、
「どうして子供を放置して、宿業が出来るのか?」
「親が離れて子供は泣かないのか?」
「おんぶしながら、仕事しなくてよいのか?」
という疑問をいただいた。正直いって、最初は、この質問の意味をよくわかってなかった。うちの息子は放置したら一人遊びをするからだ。私は、発達心理学の研究者の書いた本を何冊か読んでいたので、生後6ヶ月あたりから、オモチャをガンガンあたえていた。
といっても、市販のオモチャでは無い。オタマとかシャモジとか、味噌汁茶碗とか、フライかえしとか、口に入れても問題なさそうな厨房用品はらはじまって、いろんなものを与えまくった。赤ちゃんは好奇心のかたまりで、脳が科学者のように反応するようにできているので、新奇な物をみたら、ひたすら観察する傾向がある。そして観察が終了したら見向きもしないのだ。その性質を利用して、次から次へとオモチャを与えて一人遊びするようにしつけた。そして、ベビーサークルの中で放置した。
といっても9ヶ月くらいになると、放置を嫌がるようになる。しかし、あえて放置して、オモチャを与えつづけると泣かなくなって一人遊びをするようになる。これは、宿仲間から聞いた話しを自分なりに応用した方法である。親しくしてもらっているレストランのオーナーも、他のペンション仲間も同じようなことをしたらしい。だから、いろんなお母さんたちから、
「どうして子供を放置して、宿業が出来るのか?」
と聞かれても、イマイチ、ピンとこなかった。
逆にどうして子供を放置できないのか?
と不思議に思ったくらいである。
しかし、今なら分かる。なぜ、お母さんたちが、放置できなかったのかがわかる。住んでいる家という環境の違いであることがよくわかる。マンションやアパートなら赤ちゃんが泣いたら、隣家の迷惑を考えて泣き止ませようとするに違いない。とすれば、赤ちゃんにしてみたら、泣けばかまってくれるという事を学習してしまうわけで、一人遊びする機会を失ってしまうかもしれない。そう考えると、ますます赤ちゃんの生育が環境に影響されると思ってしまった。
環境と言えば、宿屋という環境は、1歳5ヶ月の息子にとって、かなり広い空間である。しかも、赤ちゃんが触ってはいけないものがたくさんある。ガラスのコップ・湯飲み・急須・魔法瓶・ビデオソフト・リモコン・パソコン・ゴミ箱・トイレ・スリッパなどである。これらを触らせないようにするには、一々見ているか、駄目なものは駄目と教え込むしかないが、当然のことながら私は、『駄目なものは駄目』と教え込むことにした。宿屋やレストランの諸先輩方が、みんなそうしていたからである。
もちろん発達心理学者の書いた本にもかいてある。1歳から2歳児の赤ちゃんは、何が駄目で、何が駄目で無いかを学習するために、ありとあらゆるものに触りたがると書いてある。多くの生物学者も同じようなこと書いてある。誰でも知っている有名な人で言ったらムツゴロウさんも、犬が子犬を教育するときに、何が駄目で何が良いかを教えると言っている。その一番最初が断乳である。2ヶ月を過ぎたら母犬は断乳する。しかし、子犬は飲みたがる。そこで母犬は『ウウーッ』と吠えて駄目だと教える。子犬は、そこで母犬の『駄目』という指示を覚える。まず、断乳で『駄目』のサインを教えて、それからあらゆる『駄目』を教えるのだ。
私は、これを知っていたので愛犬の子犬選びに成功した。ペットショップで子犬をだかせてもらう。すると、どんな子犬も甘噛みするのだが、その時に耳元で『ウウウーッ』と唸ってみると、母犬によく躾けられた子犬は、一発で甘噛みをやめる。それを知っていたから、子犬選びの時に、とても躾けやすい子犬を選ぶことが出来たのだ。北軽井沢ブルーベリーYGHの愛犬コロは、とても大人しくて従順なのだが、それは、母犬の躾が良かった子犬を選べたからである。これは、人間の赤ちゃんにも言えることであることは、私も体験的に確信していたから、わが息子にも『ウウウーッ』にあたる『駄目』を連発してみた。
で、これは駄目。あれは駄目と教え込む内に非常に興味深いことがおきた。息子がゲームをするようになったのだ。こちらの様子をうかがいながら、いろんなものに触るようになる。駄目と言われれば、すぐに手をひっこめるけれど、他に触れるものは山ほどあるので、なんでもかんでも触りだす。そして、駄目を言われないものをみつけだして、それで遊びだすのだ。
と言っても息子の興味は長く続かない。あれほど触りたがったテレビのリモコンも、1時間もさわると、あとは見向きもしない。しかし、別のビデオのリモコンや、エアコンのリモコンは触りだす。そのうち駄目と言われるリモコンと、そうでないリモコンに気づきだして、親の顔色をうかがうのであるが、それは息子にとってゲームとなっている。『駄目』を発見するゲームである。
私が、リネン室を大掃除していると、息子はドタバタと走ってきて、どこから持ってきたのか殺虫剤のスプレーを持っている。私が駄目と叫ぶと、キャッキャッと笑いながら逃げる。それを私が追いかけて殺虫剤をとりあげる。すると息子は、反抗することも無く、どこかに消えてしまい、今度は、チラシかなんかもってくる。チラシだから危険は無いので放置していると、それが息子にとっては面白くないらしく、今度は、私の前にきて
『ハイ!』
とチラシを手渡す。仕方が無いので、チラシをもらう。こんなことを繰り返す毎日なので、リネン室の掃除をしたくても、なかなかすすまない。しかし、ついつい息子のゲームにつきあってしまうのである。
つづく。
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