業者さんといっても工事関係者は少ない。
カメラマン・営業マン・ライター・人形劇団・仕入れ業者といった人たちである。
もちろん、全員がユースホステルの会員である。
で、非常に腰が低い。
最初は、どうして腰が低いのか?と不思議だったが、今の私には分かる。
商売をやっていたら腰が低くなるのが癖になるのだ。
中にはフーテンの寅さんみたいな人もいる。
もちろん腰が低い。
で、気がついてしまった。
自分が古い友人を整理してしまっている事実に。
宿屋をはじめる前に、クレーマーみたいな真似をして商品をせしめる友人がいたが、いつのまにか年賀状のやりとりをやめていた。いろんな店で傲岸不遜で俺は客だと踏ん反り返る友人とも気がついたら縁が切れていた。
いざ自分が客商売をやってみると、以前は気にならなかった友人の欠点が、気になってきたのだと思う。一緒にいるとストレスを感じるようになったのかもしれない。この歳になると、いつも心静かに生きていきたいと思うようになってきた。
そういう意味で北軽井沢という土地は最高である。
誰とも、適度な距離をたもちつつ、自然の中で延び延びと生きていける。
新聞も来ないし、テレビの映りも悪い。
変な人間関係にも関わらなくて良い。
浮き世の義理も最小限で生きていけるし、やろうと思えば仙人のように暮らすのも夢では無い。
先日、近所のペンションオーナーと、スーパーで立ち話した。
そのオーナーは、こういった。
「あと4年で借金が終わるんだよね。終わったら食事提供をやめて楽に暮らそうと思っている」
この人は、癌で半年入院したことのある人だった。
言葉に人生の重みがのしかかっていた。
今はペンションをやりながら農家で働いている。
時々、野菜なんかをうちに分けてくれる。
その野菜を切っているときに、
「この野菜は、胃を半分切った人だ汗水垂らしてて働いて作った野菜なのだ」
と思いつつ、鍋に入れ
「おいしくなれ! もっと美味しくなれ!」
と念をいれて作っている。
そして鍋が、御客さんの胃の中に入り、からっぽになった時、
御客さんが全て平らげたとき、
つくづく、ああ良かったと思ってしまう。
「美味しかったですよ」
と御世辞をいってくれる御客さんは、たいていは業者さんである。
たとえ御世辞でも嬉しい。
野菜たちも、喜んでいるだろう。
つづく。
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