なぜか急にタラコが食べたくなった。タラコといっても、よくスーパーなどで売られている辛子明太子の類では無い。小さな煉瓦ぐらいの大きさがある本物のタラコである。店先でよく売られているのは、スケトウダラの卵である。鱈の卵では無い。辛子明太子も、いわゆるタラコも、スケトウダラの卵なのだ。
鱈の卵は、あんなに小さくはない。あの10倍ぐらい大きいのである。子供の頃は、その巨大なタラコを、箸やスプーンでゴリゴリと削りながら、ご飯にかけて食べた。色は黄色である。スケトウダラの卵のように、赤くは無い。黄色というか黄土色の色をしていて、巨大で大きく固いのだ。子供の頃はそれをおかずにご飯を食べていた。スケトウダラのタラコよりも、安く量もたくさん買えたので、昔はどの家庭にもおかずの一品として、あったと思う。
それを嫁さんにいってみたのだが、嫁さんは鱈の卵を知らないという。辛子明太子のようなタラコしか知らないらしい。レンガのように巨大な黄土色のタラコをご存じないようだ。なので、あちこちのスーパーや魚屋に顔を出して、本物の鱈の卵を買いに出かけた。しかし、群馬や長野では、まったくもって見つからない。なので、ペンション仲間にも聞いてみたが、やはり知らない人が多くて驚いた。ひょっとしたら、あの巨大な鱈の卵を食べた人は、ほぼ絶滅しかかっているのではないだろうか? あの巨大な鱈の卵は、クジラ肉を家庭で食べたことのある世代しか知らないのかもしれない。まだ日本が貧乏だった頃は、あの独特な臭いを発するクジラ肉料理や、巨大なタラの卵が、食卓によく出ていた。それがいつの間にか消えていったのだが、いつから聞いていたのだろうか?
もう食べられないと思うと、無性に食べたくなってくるから不思議である。しかしないものはない。仕方がないので、スケトウダラの卵である辛子明太子を買って帰った。それをお客さんの夕食にも出したしまかなえでも食べた。やはり辛子明太子は美味しい。しかしこれは辛子明太子であって、鱈の卵では無い。味が全然違う。
鱈の卵は巨大であるために、なかなか焼けない。だから長い時間をかけて焼き上げる。そうしないと、中まで火が通らないのである。当然のことながら、卵は硬めに焼き上がり、ブロックか煉瓦のようになる。固いのでナイフでもない限りなかなか切れない。切っても、堅いブロック状になるので、スプーンかなんかでボロボロ崩す。それをご飯の上にふりかけのようにまぶして胃袋の中に食うのである。値段ももちろん安い。安いけれど、とても美味しい。辛子明太子のように上品なおいしさではないが、チープなおいしさである。このチープさ加減が良いのだ。 B級グルメにはB級グルメの良さがあるように、鱈の卵にも鱈の卵をなりの良さがあるのである。
つづく。
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2014年12月14日
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煮付けに…と書いてあり、お店の人に聞いて醤油で甘辛く煮て食べました。
子どもの頃には見たことがなかったので、むしろ新鮮な気持ちでしたね。