しかし何年か東京に住んでいると、東京のおでんが当たり前になってくる。その上で大阪に行ったら、大阪のおでんが全く違う味なので衝撃を受けた。串に刺して煮込んである牛すじを見た衝撃を私は忘れられない。というか、大阪のおでんと東京のおでんは全く違う存在である。同じジャンルとはとても思えない。そうそう、静岡おでんにも触れておかなければいけない。あれも全く違うジャンルである。 三つとも同じおでんと言うカテゴリーに入れていいか迷うところだ。
ところで、昔、根岸の公園の辺りに、とても美味しいおでんの屋台があった。ものすごく味が染み込んでいるのである。あまりに美味しいので、親父さんにどうやって作るのか聞いてみた。当時二十歳ぐらいの若造だった私に、親父さんは、親切に教えてくれた。どうせ田舎者に真似ができるとは思っていなかったようだ。実際、羽根のできるレシピではなかった。なにしろ二十四時間近くかけて煮込むのであるから真似のしようがない。しかも沸騰させてはいけないというのだからなおさらである。
まあそんな事はどうでもいいとして、その屋台にはちくわぶがなかった。東京のおでん屋のくせに、ちくわぶがなかったのだ。不思議に思って聞いてみると、その屋台のおやじさんは北関東の人だった。北関東ではちくわぶを食べないらしい。今日嫁さんにそれを確認してみたら、やはり群馬県ではちくわぶは食べなかったらしい。どうやらあれは、関東でも食べる地域は限定されているようだ。
そういえば、東京に上京してもう一つ驚いたことがある。カツ丼である。東京のカツ丼は、カツ丼のくせに卵でとじてあるのだ。新潟ではそうでは無い。いや、厳密に言うと最近も新潟では、とんかつを卵でとじてあるのが増えてきているが、昔はそうではなかった。ご飯にとんかつが残っていたのである。といっても、ソースカツ丼では無い。キャベツの千切りも乗ってない。とんかつには、天つゆが染み込んでいる。
あと椎名誠が、佐渡島にやってきたとき、カツ丼を注文すると、卵でとじてなかったのに怒り狂ったのは有名である。だから私は、椎名誠をあまり尊敬する気にはなれないのだが、実はうちの嫁さんは椎名誠のファンである。いつだったか椎名誠の講演会が近所で会った時、そそくさと出かけていって、ファンレターか何かを渡したらしい。椎名誠のほうも、大したもので、嫁さんのほうにお返事が返ってきた。もちろん印刷されたものであるが、はがきの隅っこに、椎名誠のサインらしきものが肉質で書いてあったらしい。さすがは、大ベストセラー作家だけの事はある。女性ファンが多いだけのことはある。
そんな事はどうでもいいのだが、要するに、その昔は、カツ丼といえば必ずとんかつを卵でとじると言うものしか認められなかったのだ。このカツ丼は卵でとじてないと椎名誠が怒り狂うと、全国の女性ファンたちが一斉にそうだそうだとうなずいた時代があったのだ。全国の女性ファンが椎名誠に右へならえをした時代があったのだ。その都度佐渡島のカツ丼は肩身の狭い思いをしたものだ。しかしそんなことはお構いなく、私は佐渡汽船に乗るたびに船の中の食堂で、卵でとじてない、あのカツ丼を注文した。そして椎名誠のファンの視線から隠れるようにカツ丼をかっ食らったものだ。
ところが、最近はちょっと様子が違ってきている。秘密のケンミンshowというテレビ番組が視聴率をとっていることからわかるように、卵でとじてないカツ丼といった、非常にローカルな食事がテレビで紹介されて、視聴者に大うけされる時代になってしまった。椎名誠とその親衛隊軍団が、一斉に佐渡島の活動を攻撃していた時代とはえらい違いである。今は文明よりも文化の時代なのだ。グローバルよりもローカルを楽しむ時代なのだ。
昔は、たった一人のアイドルに何百万というファンが集中したものだが、今はそうでは無い。グローバルなアイドルの時代では無い。地方のローカルのアイドルに人々の目線は移り変わっている。ありきたりのカツ丼よりも、ちょっと変わったカツ丼の方が人々の注目になる時代になってきている。やっと多様性を認め合う時代になってきているのかもしれない。
つづく。
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でも、この違いに驚くのが面白い!日本は長くて旅をして面白い。この発見!
日本は柔軟で何でも取り入れている。おでんにトマトなんてイタリアンか、なんでもマヨネーズも、ぶれなければいい。美味い物は美味いが齢とともに保守的になるね。今の自分の味覚をはっきり自己主張できるのも今の自分か?